【終幕】
大学を卒業したら、雅は演劇は趣味にすると決めた。
演じることは好きだから芝居そのものは細く長く続けたいと考えてはいるが、『仕事』にする気はもうない。
逆に、それまでは一筋の希望は持っていたのだ。心の奥底の、どこかでは。
改めて決意したら、なんだかとても晴れやかな気分になった。
雅は長い時間を無駄にしてしまったのかもしれない。
叶わないと自分でも理解していた、見果てぬ夢を追いかけて。
それでも、悩んだことにもきっと意味があった。いや、意味を持たせるようにすればいい。
そう思えること自体が、きっと費やした時間から得たものだ。
郁海のことを、普段から演技していると感じていた。今もそれは変わらない。
けれど。
友人として、先輩として、サークルの公演で担当する役者なり裏方なりとして。
立場や場合によって、雅は自分を使い分けている。卒業して就職したら『仕事用の自分』も確実に増える。
──なんだよ、あたしも演じてるじゃん。
一生涯、人生という舞台で演技を続ける。
様々な役柄の「見城 雅」を、これからも演じ分けて行く。
女優ではなくても、板の上でさえなくても。
太陽、シャンデリア、蛍光灯にLED。
スポットライトはどこにでもある。
~END~