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The Sealed Swordman "K"  作者: ザマコスキー(仮)◆c5Fznoa1wE
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Stage2 -凍結-

―「それで封印される前はどうしてたンマ?」「…確か"A.C."と名乗る奴を追っていた。ただ知らぬ間に封印されていたらしく、アンタがオレを開放するまで封印されていたのは分からなかった。」

「"A.C."…」"A.C."という名前にどこか引っかかるけんま。

「ハイ、健康診断は終わりンマ。50年も封印されてたのに問題一つ無いというのも凄いンマ。」先程していた話から、カナチが封印されたのは今から50年くらい前との事だ。

あそこは見た感じコールドスリープ施設ではなさそうだがどうやって封印したのかという事をけんまが考えていた時の事だった。

突如パソコンに大量の警告と共に通信が入る。


「どうやらウチの"お宝"をアンタらが盗んだらしいな。」通信が入ると共に部屋に緊張が走る。

「…その声は"A.C."か。」「ご名答。ウチが"A.C."や。何や、覚えとるんか。」「お前らの言う"お宝"はオレの事か。」「せや。だから"返して"ほしいんや。」

「!! カナチをお前には渡さないンマ!!」「なんや、"リス"から報告のあった"ちっこいの"もソコに居るんか。」「けんまはちっちゃくないンマ~!!」

「またえらい可愛らしい反応やな。まあ、今日中に"返さない"となればこちらも行動に出るとするわ。今日"返す"気は無くても流石に明日になればその気になるやろ。

じゃあな、"お宝"と"ちっこい女子さん"。」「けんまは雄ンマー!!」切れた通信に向かってけんまが叫ぶ。


―「とりあえずカナチ的にはどう思ってるンマ?」「オレは奴の下に戻る気は無い。例え明日から不幸が訪れようとも―」カナチがセイバーを握る。「この剣で叩き斬るまでだ。」

「分かった。それならボクも全力で応援するンマ!」「さっきの話だと今日は向こうが攻めてこないだろう。オレが明日に備えて今日は休ませてもらう。」

「分かったンマ。戦士にも休息は必要ンマね。」


その夜

(感覚は今日の鍛錬の感じだと鈍ってはなさそうだ。明日からはしばらく休めそうにないし今日は早めに寝ておくか…)風呂上がりにカナチはこんな事を考えていた。

「けんま、風呂から出たぞ。」「50年ぶりの湯船はどうだったンマ?」「何か不思議な感じだったな。冷めないうちに次入りなよ。」「今やってるのが終わったら入るンマ。もう寝るンマ?」

「ああ。どこで寝ればいい?」「2階の一番奥の部屋に布団を準備しといたンマ。」それを聞いてカナチは床に入った。

「さーて、大急ぎで仕上げるンマね…」けんまは再び目の前の仕事に向かい合った。部屋の明かりは深夜になっても付いていた。


翌朝

「ふぁー…」カナチが欠伸をしながら2階から降りてくる。「おはようンマ。今朝ご飯を用意するから待っていてほしいンマ。」けんまが急いで台所に向かう。

「けんま、その目…」「カナチのためにそこのアーマーを大急ぎで完成させたンマ!」「オレのためにそこまで…」けんまが座っていた椅子の前にはアーマーが一式置かれていた。

「カナチ、コーヒー飲むンマ?」「…じゃあカフェオレでお願いしたい。」大急ぎでけんまがコーヒーを入れる。

「これ食べて今日も頑張ってほしいンマ!」時間の割に豪華な朝食をけんまが持ってきた。食卓に付いてテレビを付けると衝撃の光景映されていた。

なんと街一帯から人影が消えており、それどころか要塞まで築かれている。それも1箇所だけでなく、全国に4箇所も。

「"A.C."が言っていた事はコレの事か…」「そうみたいンマね。」「奴の事だ、まずはオレら以外を潰すとこを見せしめにして牽制してくるのだろう。」「ンマッ!?直接ボクらを叩くんじゃないンマか!?」

「奴の性格から考えると恐らく最初からこっちを攻めてこないだろう。」「てっきり最初からこっちを攻めてくるものって思って迎撃装置のメンテナンスまでしたのに無駄になったンマ…」

「一晩のうちに無茶し過ぎだぞ、体壊すぞ?」「でもカナチの事を想ったら居ても立っても居られなかったンマ…」「もういい、一旦休め。俺はまず札幌にある要塞から叩きに行く。」

「分かったンマ。ご飯を食べたら転送装置を準備するからそれを使うンマ!」心配そうに見るカナチとそれを気にせず張り切るけんま。けんまは食事中も常に何かを調べているらしく、パソコンの画面から目を離さなかった。


「よし、まずは札幌の要塞から叩くか…」カナチがアーマーを着込みながら呟く。「カナチ、これも持っていったほうがいいンマ!」「何だソレは?」カナチに小さな物を手渡す。

「小型の酸素ボンベンマ。調べたらどうも要塞内で水没してるところがあるらしいンマ。」「そうか、それなら遠慮なく使わせてもらう。」カナチが転送装置の上に乗る。

「座標入力完了ンマ!いつでも準備出来てるンマよ!」「了解、こちらもいつでも出れる。」「カナチは強いから絶対負けないンマ!」「そう言われると何か照れるな…」

「それじゃ行くンマよ!転送!」けんまが勢いよく転送装置のスイッチを押す。「…I'll be back.」転送される瞬間にけんまに一言かける。

カナチが転送されるのを見届けて倒れ込むけんま。「昨日は十分頑張ったから少し休むンマか…」けんまは側にあったクッションを枕にして眠りだした。


(ここがその要塞か。けんまはあの様子だし多分もう寝てるだろうな。一人でも頑張らないといけないぞ…)現場に到着し意気込むカナチ。

さっそく屋上から中に入る。場所は札幌市にあるショピングモールだ。多くの人が集うこの場所を要塞化したのには"A.C."の思惑が垣間見える。

中に入ってみると、いたる所に巨大な氷が生えていた。行く手を阻むように床から、天井から、壁から。

エアコンが止められているのか、外よりも気温が低い。早いとこ主を倒して帰りたいところだ。

しかしカナチが歩みを進めると、思わぬ敵と遭遇した。

(あのアーマーの下に見えるのは生身の人間… という事は一般人か!?)カナチは驚愕した。"A.C."は現地で捉えた市民を手駒にしているのだ。

「一般人相手にセイバーでぶった斬る訳にはいかないな…」カナチは通信機でけんまに相談しようとした。しかし幾ら待てども出ない。

(やはり寝てしまったか… 少々かわいそうだが起こすしかないな…)カナチは通信機に叫ぶ。「おい、けんま!起きろ!!」

管制室では、けんまがカナチの呼びかけに驚いて起き上がる。「ンマッ!? カ、カナチ、どうしたンマ!?」急いでモニターに向かう。

「寝ていたところ悪いな。ちょっとアレを見てくれ。」モニターに敵兵の姿が映る。「あのアーマーの下は生身の人間のようなんだ、こっちはどうすればいい?」

「えーっと確かあれは…」急いでまとめた資料を読み漁る。「あれは一種の洗脳装置ンマね。」「洗脳装置… また物騒な物だな。」

「胸部にコアがあるンマよね。」「ああ。」「あの装置はコアを破壊すれば機能停止するンマ。そして左太腿のホルスターの中に入ってるマーカーを付けてほしいンマ。」

「コアを破壊してマーカーを付ければいいんだな。」「そうしたら後はこっちが全部回収するンマ。」「分かった。なるべく多くの人を助けるように心がける。寝てるとこ起こして悪かったな。」

「大丈夫ンマ。こっちも受け入れ体制を準備しておくからよろしくンマ。」

洗脳兵は無力化すれば救出出来る事は分かった。後はただひたすら突き進むのみだ。

道中は吐く息が白くなるほど寒い。だがカナチはそんな事も気にせず来る敵のコアを破壊する。中には武器を持った洗脳兵も居た。

しかしカナチはここである事に気づく。(妙だな… 敵に男性が混じってる気配がしないぞ…) "男性型"のロボットは混じっていても、"男性"が居なかった。

氷だらけの売り場を命ある者は救い、命なきロボットは斬り払いながら進む。ロボを斬った際に飛散るオイルが余りの寒さに凍りつく。


1階まで降りると一際大きな敵が待ち構えていた。「さしずめルームガーターと言ったところか…」敵が湯気を上げて動き出す。

「フロストアーマー キドウ… テキ サッチ ハイジョスル…」フロストアーマーの持っていた物が凍りついて剣と化した。

カナチがセイバーを構える。相手も剣を構える。その場に緊張が走ったが、破られるのも早かった。

次の瞬間、フロストアーマーが一気に距離を詰める。(あの巨体であの速度だと!?)とっさにカナチは後ろに飛び退く。

(クソッ!こんな程度で撤退する訳には…)双方の距離は徐々に縮まっていく。気づけばカナチは壁際にまで追いやられている。

(流石にコイツを飛び越せそうにないな… せめてあのヒーローのような力があれば壁キックで飛び越えられるのだが…)だがカナチはまだ気づいていなかった。既にアーマーの力を使っている事に。

「無駄だと思うが、やってみる価値はあるか…」カナチは後ろに飛び退き、壁を蹴った。その時だった。

脚部のアーマーがカナチを上跳ばせた。「!!」アーマーの力をカナチは理解した。これはただのアーマーでなく、強化装置でもある事を。

カナチはフロストアーマーの頭上を飛び越え、後ろに着地した。(そうか!オレは"上"も使えるのか!なら!)

フロストアーマーとの距離を一気に詰める。氷の鎧を斬り裂く。フロストアーマーがよろける。だが負けじと剣を振り下ろしてくる。

カナチは再び壁に向かって跳んだ。壁を使い、相手の裏を取る。鎧の一番弱そうな所を斬る。切っ先が吹いた湯気ごと斬り裂く。

フロストアーマーは最後の抵抗と言わんばかりに大きく剣を振り回した。が、余りにも振りが大きく、下をくぐられてしまう。カナチは股下から脚部関節を斬り裂いた。

敵はその場に倒れ込み、ついには動かなくなった。「このアーマーを一晩で作り出すとは… けんまも只者ではないな。」そう言ってカナチはまた進みだした。


地下に降りるとフロアが丸ごと水没していた。電気配線なんかお構いなしの状態だったので所々で漏電している。カナチはけんまから貰った酸素ボンベを装着して水の中に潜った。

この凍えるような寒さで水中はさぞかし寒いかと思いきや、水中はかなり温かかった。水中にはかつて売り物だった物が散乱しており、混沌としていた。

服屋のテナントからはジーンズが漂っていたり、車屋のテナントからはオプションで売られていたハンドルが漂っていたりした。

一刻も早く主を倒さねば、と決心したカナチは暗い水中を進んでいく。しかし道中も敵は居ない訳ではなく、魚型のロボットや酸素ボンベを背負った洗脳兵が居た。

敵を倒せば倒す程水中は混沌としていった。飛び散るコアの欠片、ロボットのオイルや部品、更に敵が動かした売り物までが散乱していた。


カナチは奥へ奥へと進んでいき、ついに最深部に辿り着いた。そこには一人の少女が待っていた。

「ようこそ、私の要塞へ。あの守りを破るとは相当ですね。」「アンタの兵士、片っ端から無力化したぞ。」「それはまた気性が荒い事。そんな人は私の力で押し流してあげましょう。」

少女がどこからともなく一本の槍を取り出した。「"L"の加護を得し私の力、お見せしましょう。」「…戦う前に1つ聞いておきたい。アンタの名は何だ?」

「あら、失礼な事を聞きますのね?こういう事は自分から先に名乗るのは礼儀では?」「そうか… オレはカナチだ。で、アンタの名前は?」「私は座間子。"L"の加護を得し水の遣い。」

(どうやら中身は生身の人間のようだな… コイツもコアを潰せば!)カナチが泳いで距離を詰める。しかし相手は優雅に離れる。

「あら、喧嘩っ早いこと。残念だけど水中は私のもの。あなたには追いつけないわ。ここで散りなさい。」座間子が槍を構える。同時に槍の周りに巨大な氷が生成される。

「スピリット・オブ・ジ・オーシャン!」先程までただの氷塊と思っていた物が意思を持ったかのように動き出す。

カナチは避けようとする。しかし氷塊はなんと軌道を曲げてカナチを追ってくる。「ふふっ、この氷の竜から逃げれるかしら?」「クソっ!」カナチは必死に逃げ回る。座間子はそれを優雅に見つめる。

「砕けろッ!」カナチがバスターを氷竜に撃ち込む。氷竜は砕けた。「お上手なこと。でもこれで終わりじゃないわよ?」座間子が上に泳ぎだす。

「次、行くわよ!マリンスノー!」座間子が通った跡に鋭い氷が次々と生成される。それらは全てカナチ目掛けて降ってくる。「喰らうかッ!」カナチが落ちてくる氷を次々と斬り裂く。

「これでどうだッ!」カナチが氷をかいくぐり、セイバーのリーチまで近づいた。コアに向かってセイバーを振り抜いたその時、「やるじゃない。でもこれで終わらないわよ?」

なんと手元に氷でできた盾を作り、斬撃を防いだ。「動けるからって無茶してるのは分かってるのよ?この水中でいつまでそんな強気で居られるかは見ものね。」

座間子が素早くカナチの裏に回る。「でも貴方、少しは私を楽しませてくれそうね。」座間子が槍を大きく構える。「水月斬!」

持ち前の反射神経で間一髪直撃を避けるもアーマーを斬られてしまった。「凄い反応ね。流石あの守りを破っただけあるわ。でも今度こそ終わりよ。」

座間子が一旦距離を取る。「アイスジャベリン!」槍によって作られた氷が巨大な氷槍となって飛んでくる。しかしカナチも一筋縄ではいかない。

相手もある程度高さを取って撃ってるので下を潜ろうと思えば通れるほどの隙間はある。カナチはその隙間に向かって一気に動き出す。

「やるじゃない。でもこれは―」座間子が構えた瞬間、カナチのセイバーが唸る。


「水月斬!!」


切っ先がコアを斬り裂く。コアが砕けた衝撃で座間子は気絶した。

「大体の要領は掴めた。これだけ出来れば問題無いだろう。」カナチは戦闘中に敵の技を学習(ラーニング)していた。

「こちらカナチ、城主を無力化した。これより帰還する。」通信機でけんまにミッションの終了を伝えた。

カナチは座間子を抱えて転送された。


拠点では洗脳を解かれた一般市民で溢れていた。しかし洗脳の後遺症は多少なりとはあるらしく、座り込んでる人も居れば、立ち上がれないほど重症な人も居た。

後遺症のほとんど無い人には誘導と搬送を分担していたが、それでも常に誰か走り回ってる状況だった。

聞けば重症な人は脳に問題があるかもしれないらしく救急車の手配が必要で、軽症な人は帰宅支援をしないといけないと大忙しの現場だった。

カナチも手伝おうとしたが、けんまはそれを引き止める。「カナチには休んでほしいンマ!!」「…そうか。ならシャワーだけ浴びて今日はもう寝させてもらうか。」

「カナチは十分頑張ったからもうこれ以上今日は手伝う必要は無いンマ!疲れを取るためにも今日はもう寝てもいいンマ!」「…2徹だけはするなよ。」

そう言ってカナチはシャワーを浴びに行った。その日は日付が変わるまで明かりがずっと付いていた。


Stage3へ続く

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