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6話 テスト勉強

11月も後半、学校内全体の雰囲気がピリピリとしているのを感じる。それもそのはず、期末試験の訪れが刻一刻と迫ってきているためだ。

鬼気迫る顔でノートとにらめっこしている者、友人と問題を出し合う者、既に諦め友人とふざけあっている者、十人十色だ。


直人にとって試験というものは自分の承認欲求を満たす唯一の手段と言ってもいいだろう。よく言えばそつなくこなす、悪く言えば器用貧乏な直人だが勉学の面に関しては秀でていると言ってもいいだろう。これまで行われてきた試験では中学時代も合わせ全て10番以内に名を連ねている。


「ねー飽きたー」

「はいはい千智溶けないの」

「なあ直人この訳し方なんだけど」

「あぁ、それは───」


いつもの4人組は学校近くの図書館で勉強会をしている。直人の家で行わないのは千智だらけてゲームを始めてしまうという経験則からくるものだ。

この図書館は利用客はそこまで多くは無いため人目を気にする必要がなく勉強をする場として直人からの評価は高い。


「なんかご褒美あればやる気出るんだけどなー。なんか奢ってくれるとかさー」

「それだと一時的に頑張るだけになるだろ。あとなんで頑張るだけで奢らなきゃいけないんだよ」

「そうだよ千智。ほらペン動かして」

「けちー。そだ!点数でご褒美は?どう?ねえねえ!」


千智が風船のように膨らんだと思えば今度は餌を目の前にした犬のように元気になる。


「だからご褒美って────」

「まあ確かにありかもですよ。それなら勉強も持続するかもしれませんし」

「そうだぞ直人、目標を持つのはいいことだ。だから俺もなんかご褒美」

「まあ瀬良さんが言うなら考えてみなくもないけど·····。やるとしても今回だけだぞ」

「俺は無視?」


千智がこれ以上うるさくなってもめんどくさいだけなので直人は夏希に免じて渋々承諾する。これで目標達成の喜びを知り勉強への意欲が増せば一石二鳥だろう。


「じゃあ全教科60点以上な。」


これまでの結果を見ても全教科赤点ギリギリの千智にはちょうどいい難易度だと思ったがたった一言「無理」と不満を漏らされる。どうやら直人と千智、勉強できる人とできない人では難易度の差異があるようだ。


「じゃあ1教科だけだったらどうですか?その分その教科だけ70点以上で」

「それなら多分·····できなくもないと思う。数学ならなんとか。」

「決定ということで。いいですよね安達さん」


それなら頑張れるというので再び瀬良さんに免じて承諾した。


「じゃあご褒美担当はジャン負けな」


さっきまで無視されてしょげていた陽が間に割り込んでくる。


「3人で出し合えばいいだろうが」

「それじゃ面白くないじゃん?こっちもハラハラしたいというか」

「いいじゃないですか!」


少し声のボリュームを上げた夏希が興奮しながら言う。直人も今の今まで忘れていたが夏希はギャブル精神が強く、賭けとなるとカブトムシを見つけた少年のように目を輝かせる。外見からは想像できないほどのギャップだか、さすがにこのギャップは萌えない。

陽はおそらくこれを狙ってジャンケンを持ち出したのだろう。こうなった夏希を止められないと悟った直人は既に拳を前に突き出す2人に遅れて拳を出す。千智も自分のことのようにハラハラしながら見守る。


3人の準備が出来たことを確認した夏希が図書館に迷惑がかからない程度、だが少し大きめの声でジャンケンの開始を告げる。

結果はたった1回で着いた。2つのグーに混ざる1つのチョキ。案の定このチョキの主は直人だ。参加したことを悔やんでももう遅い。直人以外の3人は楽しそうにハイタッチをし合っている。


「お前数学以外1個でも赤点だったら無しだからな」


負け惜しみとも取れるセリフを吐いて当然の権利と条件を追加する。

陽が何度も指先で直人の肩を続いてきたが顔を見るとニヤけていたので「もう知らん」と一言残し、あとは無視して勉強に集中した。

自責の念もあるが、ただ今の瞬間だけはこの4人の中で一番目立っていたという状況に、少し主人公ぽいなという承認欲求の満たしがあった。

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