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Aldebaran・Daughter  作者: 上の森シハ
Chapter.xx 奸計貴族の国ロアナ【前半】
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 サマラフはエリカの顔を一瞥。


「夕方までに帰る。

 三人とも、すまない。俺は仕事に行ってくる。何かあればメイベに聞いてくれ。彼はうちの執事だ」


 青年ことメイベは、エリカたちに向かって落ち着きのある一礼。主が外出して一拍置いてから質問をする。


「皆様のお名前を教えていただけますか?」


「カニヴでござる」

「セティナじゃ」

「エリカです」


 メイベは口を薄く開けた。


「先ほども気になったのですが、もしや、ご出身がバーガーウェンのエリカ様ですか?」


「サマラフと同じで、あなたも私の両親を知ってるんですね」


「ご主人様からは何と?」


「会って話したことがある。でも、もう亡くなってるって聞きました」


「私はエリカ様のご両親について、触り程度しか聞いていません。不幸でしたね」


 気遣いを受けたエリカは、眉尻を下げて苦笑いを浮かべる。


「まだ信じられません。亡くなったなんて」


 頭の片隅では、もう二度と会えないことを受け入れてる。旅をしてるあいだに段々諦めがついてきた。二人がこの世に居ない証拠が見つかったわけではなく、本能による勘だ。



「…………皆様、少しよろしいでしょうか?」



 メイベは一階の書斎に、三人を招いた。机の引き出しから封筒と便箋を取り出す。

 渡されたエリカは驚いた。



「この紙……、……」



 触れてわかる。

 思い出す。

 毎年バーカーウェンに届いていた手紙と同じ紙質。



「ご主人様はエリカ様のご両親が亡くなる前、バーカーウェンに居る娘を頼むと、遺言を承ったのです」


「!?」


「しかし、ご主人様はお立場の関係もあれば、島に張られた障壁の件もあって、エリカ様と直接会うわけにはいかず。ご両親を装って手紙を書き、イ国の枢機卿様を通してお送りしてました」


「…………じゃあ、ずっと」


 メイベが頷く。

 引き出しをさらに開けると、奥にはエリカが書いた返事が収まっていた。印鑑も入ってる。


 両親が如何に、最期まで娘を愛していたか。

 サマラフがずっと気にかけてくれていたことも併せ、嬉しさで胸がいっぱいになったエリカは目頭を熱くし、涙を流す。カニヴとセティナは、その様子に微笑みを浮かべた。


 メイベは両手を差し出し、見せた封筒と便箋をエリカから貰うと、引き出しのなかへ戻す。


「エリカ様。どうか、我がご主人様を信じてくださいませ。何卒」



 出会った日から、初対面であるサマラフがなぜそこまで心配するのか、彼女は理解できずにいた。


「……私、ロアナに来て良かったです」





 エリカが湯船に浸かっているあいだ、カニヴはこそっとメイベに尋ねた。


「触り程度だと話しておったが、嘘でござろう?」


 メイベは暗い顔をし、浅めに俯いた。


「心配です。悪いことが起きないか」


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