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Aldebaran・Daughter  作者: 上の森シハ
Chapter.xx 奸計貴族の国ロアナ【前半】
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蠱毒は緩やかに



 夏季のひとえ月。ロアナはこの季節、薄手の長袖、または半袖でも十分活動しやすい気候となっている。

 黄金色の稲穂、炭酸葡萄グレープイン・サイダーの畑、農夫たちの明るい笑顔、遊び回る子どもたち……。それらを絵画にしようと絵筆を持った熱心な画家の姿も、本道を走る馬車の窓から眺めることができる。



 ソガイが用意した馬車の操縦者は、エリカたち四人がストレスを感じにくいよう、配慮した速度で首都を目指す。

 魔物が出没しない安全な道と長閑な風景がもたらす、戦いから離れた穏やかな時間。……

 にも拘らず、車内に漂うのは重苦しい雰囲気。

 エリカは向かい側の席に座ってるサマラフの、何処か物憂げな表情も気になるが、お調子者の所がある賑やか担当のカニヴが黙っているのも奇妙に感じた。セティナが世間話や他愛ないことを言わずに平然としてるのは普段通りだ。


「ねえ、サマラフ。私、まだ謝ってなかったよね?」


「?」


「ヒースの発言」


 ダーバ共和国へ寄った際、エリカはもう一人の幼馴染みヒースに再会したとき、「ロアナの貴族と関わるな!君が不幸になる!」と、怒気を含んだ強めの口調で忠告された。その一件が重い雰囲気を作ってる原因ではない確率が高い気はしていたが、山岳を越え始めてからサマラフが深刻そうな表情で沈思するのを見かけるようになると、可能性が有りそうに思えてくる。


「ごめんなさい」


「……俺にしてみれば、社交辞令の一種だ。言われ慣れてる。君は自分の心配だけを最優先してくれ」


 彼は、目の前に居る人を安心させたくて言った。

 しかし、通じていない。

 言ったあとに気付く。

 表情を曇らせたからだ。


 サマラフは訂正せず、抱えてる憂鬱を深く掘り下げられまいと自然を装い、外の景色へ目を逸らした。

 七年前、世の平和を安定させるため、十二糸の命を守るためにも翼竜を処刑し、水鳥の巫女の首を落としたことに後悔は無い。エリカへの特別な感情が形を変えてからも、別の方法があったとは思えなかった。あれが最善策だった。正しい解決策だったと信じてる。

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