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Aldebaran・Daughter  作者: 上の森シハ
Chapter.01 嚆矢<こうし>篇
9/130

08:寄り道

 二人は島の南西にある、カコドリ遺跡を目指すことにした。

 地図を広げると現在地からそれなりの距離を歩くように見えるが、島の面積は小さい。夕方に着くことはないのだと、バルーガは説明した。






(ふむ……)


 島民だったバルーガに道案内を任せ、二歩分離れて後ろを歩くオリキス。会話に付き合いながら、借家の近辺には何があるのか知っておきたくて視線を配る。


 魚が元気に泳ぐ池。

 大木の根本に生えた茸。

 実が()っている草。

 蜜を採取できる花。


(池以外は、人の手で用意されたものだろう。でなければ、都合良く揃いすぎている)


 食糧の調達がラクに行える立地条件に優れた環境は、本土から離れた孤島で暮らす心配を和らげたい、先住民たちの移住者に対するそんな手厚い配慮が伝わってきた。


「あ?」


 バルーガが何かに気付いた。

 三分の一進んだ所で、二人は足を止める。


「魔物か?」


「本土じゃあるまいし、んなわけねーだろ」


 姿は見えない。

 だが、確実に、草むらのなかに潜んでいる。

 強めにガサガサ揺れている部分を遠巻きに見て、どちらが先に進むか、二人は顔を見合わして伺う。


「ひょっとしてオリキス、怖いのか?」


 バルーガは、にやにやする。


「それは妙案だね。怖いことにしておこう。では、確認を頼むよ」


「!」


「怖いのかい?」


「ッ、覚えてろよ……!」


 逆手に取られたバルーガはオリキスを睨んでから前進し、草むらに顔を近付けてみる。


  ガサッ!!


「うぉっ!?」


 とびきり大きな音と共に、それは勢いよく顔を出した。

 バルーガは一瞬ビビったが、白と黒の体を見て安心する。


「ったく。驚かせんじゃねぇよ」


 正体は、赤い首輪を着けた一頭の仔牛。


「はぐれたのか?」


 オリキスの質問に、仔牛は「モー」と鳴いた。

 バルーガは横から覗き込むように首輪を見て、書かれた文字を読む。


「オットリー牧場」


「名前からして呑気そうだ」


「さぁ、どうだかな」


「ほお?」


 すると、後方から息を切らして走ってくる声が聞こえた。


「いたいたっ、牛さんっ」


「ちんちくりん?」


 エリカは走る速度を徐々に落として立ち止まると両膝に手を着き、肩で息をする。


「はぁ、はぁ……。オリキスさんと、バルーン?服装変わると、わからないね」


「エリカ殿、この牛に用が?」


「はい。放牧中に居なくなった仔牛を探してて。牧場へ戻すお手伝いをしているんです」


「じゃあ任せた」と、バルーガは押し付けるようにエリカへ引き渡す。


「一頭で終わりかい?」


 バルーガは(余計なことに首突っ込むんじゃねぇぞ)と、訝しげにオリキスの顔を見る。


「いいえ、残り二頭です」


「手伝おう」


「観光するんだろうがっ」


 ほら、言わんこっちゃないと、バルーガはオリキスの腕を肘で小突いた。


「彼女には昨日、世話になった。御礼だ」


「律儀な奴め」


「二人とも有難う」


 エリカは持っていた縄を仔牛の首輪に通して結ぶ。三人は別の場所へ移動し、近くを歩いてる島民に見かけなかったか話を聞いてほかの仔牛を探す。まだ暑さに慣れていないバルーガは、木陰で休憩しながら手伝う。


 オリキスは、背の高い樹の裏側も見て回るエリカの側へ行き、バルーガに聴こえない声量で話しかけた。


「アーディン殿に何か言われたかい?」


「『あの男に会うな、喋るな』と、怖い顔で注意されました」


「けれど、君はこうして僕と会話をしている」


 エリカは、にこにこ笑う。


「オリキスさんが悪い人に見えないからです。だって、私には解読不可能だった資料の謎を解こうとしてるんでしょう?何が出てくるのか知りたいです」


「協力してくれるのかい?」


「喜んで」



「おまえら、何こそこそ喋ってんだよ」


「あ!いた!」

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