私情
※台詞多めで、ざっとした文章になってます(陳謝)
ヒースは行き交う人々のなかにサマラフたちが入っていくのを目視で確認してから手を離し、エリカの顔を神妙な面持ちで見る。
「何でまた、ロアナへなんか。君とパーティー、関係あるの?」
「ううん。サマラフのお仕事の関係で寄り道するの」
ヒースは眉間に皺を寄せ、怪訝とも、心配とも取れる顔をした。
「連中のこと、あんまり信用しないほうがいいよ」
「さっきも嫌ってる風な言い方してたけど、何かあったの?」
「その質問だけで、ロアナとダーバの関係を知らずに来たのを自白してるも同然だね」
エリカは右手で自分の口元を覆い、視線をぱっと左へ逸らして誤魔化すような笑みを浮かべるが、あからさまに動揺して(しまった)と思ってるのが彼にバレバレであった。
「どうせ僕がやめとけって説得しても、信じたい気持ちを捻じ曲げる性格じゃないんだろ?」
「!」彼女はヒースが理解をしてくれる?と思い、キラキラと期待に満ちた眼差しを向けた。
「生餌と親交を深めるのは反対だ」
嫌味ではなく、本当に心配している。だが、サマラフを信じ切ってるエリカは首を振って否定した。
「彼は大丈夫。何度も身を挺して私を助けてくれたの。凄く良い人だよ」
「強欲なロアナの貴族どもは、自分の利益のためなら誰でも助けるさ」
彼女は、やや不機嫌そうな表情で反論する。
「私はイ国からずっと一緒に旅をしてきた。ヒースが知るロアナの人は悪いほうに当て嵌まるのかもしれないけど、彼は違う。言い切れる。この目で、近くで見てきた」
「……」
ヒースはさらに眉間の皺を濃くし、エリカの両肩に手を置いた。
「ロアナは人間同士の問題が起きやすい国だ。事情に精通した僕の判断は正しい。何かあったらって思うと、役人としても許可を渋るのは当たり前さ」
(もう何度も危険な目に遭ってきたから、今更感ありすぎる)
「その上、十二糸の一員と豪傑のエルフが守ってくれるからって、魔物をナメすぎだよ。危険に晒されるんだぞっ?君は一般人である自覚が足りなさすぎる」
(ほんっっと。昔から心配性で、くどくど言うの変わらない)
しかも、今日は説教されてるように聴こえる。
段々煩わしさを感じてきたエリカはじとりと睨み付け、ドアを左右に開くように彼の両腕を押して、肩に置かれていた手を退けた。
「昔の私じゃないもん。戦えるんだよ?こう見えて」
「君、さっき自分で言ったね?何度も助けてくれたって」
「!……ッそ……、それは……」
ヒースは意地悪い笑みを浮かべた。
「ぷっ。わかりやすいな」
揶揄われた彼女はカチンと頭に来た。
「……。私もわかったことがある」
「何?」
「ヒースが!困ってる人たちのために働かない大人になってて、ガッカリしたってこと!」
※少しずつ、追記していきます。