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Aldebaran・Daughter  作者: 上の森シハ
Chapter.04 イ国【北部】
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内情(2)

※台詞、多めです。




「ケルディン様の弟さんは、妾の女性を側室にしなかったんですね」


「彼女の出身が、些かまずかったのさ。

 弟ラーサンハリネ、略してラーサンの妾の名前はロニィ。本人曰く、イ国の祭り『フラワー•ステイ』の日に花を売っていたら、幸運にもラーサンのお目にかなったんだとさ。運命的な出会いに聴こえるが、さぁて、本心は何処だか。

 母上が男を使って調べさせたら、彼女は町娘ではなく、アイネスの魔術師だと言ったらしい。怪しいだろ?」


 エリカは目をぱちくりと瞬きさせた。


「男を使う?」


「……」これには、サマラフは何と言っていいか閉口。カニヴもカニヴで、王族の手前、教えていいかわからない。



 ケルディンは空気を読んで訊ねた。


「エリカちゃん。君の嘘の恋人さんとは、男女の進展はあったのかい?」


「あ。そういう意味」


 恥じらいなく返した彼女にサマラフは半眼になり、呆れ混じりの苦い表情をする。


「エリカ」


「ごっこだよ」


 彼女は唇を尖らせ、気まずそうに反論。ケルディンは、「ははは」と明るく笑った。


「オリキスくんが現れるまでのエリカちゃん、びっくりするくらい、防御力が高かったよね」


「わっ、私のことは横に置いといてくださいっ」


 サマラフは話の流れに便乗し、真面目に訊ねた。


「ケルディン様から見て、オリキスという魔法騎士はどのような男でしたか?」


「優秀、狡猾、警戒心が強い男、欲望に従順。針の穴ほどの小さな疑いにも敏感な怖い男さ」


「オリキスさんは優しい人です」


「島民のあいだでは、比較的、評判は良かったよね。

 でも、彼は区別はしてた。わかってる癖にぃ〜〜」


 揶揄われたエリカは深くツッコまれるのを回避すべく、サマラフの顔を見て、


「アイネスは、イ国と仲が悪いの?」


 と、強制的に話を戻した。


「悪くも無ければ良くも無い。だが、アスミ殿が生まれた当時は、表面上で手を組んでる素振りを見せようものなら、イの北にある軍事国家のアルバネヒトは警戒しただろう。挟み撃ちにされたくないからな」


 ケルディンは一つ頷き、物語調にして話す。



「ロニィはアスミを出産後、イの国王スフの正妻である我が母上から嫌疑をかけられ、最愛のラーサンには見捨てられて国外へ追放されました。

 国王はロニィからアスミを取り上げ、城暮らしをさせることにしたのですが、

 此処で大誤算!

 ラーサンの息子がアスミを見染めたせいで、母上の怒りは絶頂!アスミが二度と城へ戻って来れないよう、忍ノノビ族へ渡しましたとさ」



 馬車のなかが、しーーん……と静まる。

 カニヴは訊ねた。


「スフ様は、反対しなかったのですか?」


「母上の怒りを鎮めさせる必要があったから、まぁ仕方なく?」


 エリカはアスミのことを思うと、胸が痛くなった。


「死んだとわかったら、王妃様が喜びますね……」



「生きてたらね」


 ケルディンの言葉に、彼女は目を丸くして驚いた。

 サマラフは一拍置いて補足する。


「エリカ。スフ様の奥方様はお亡くなりになってる」



「母上の死因は絞殺らしい。ハンスによれば、お亡くなりになったのは一年ほど前。葬儀は大々的におこなわず、公には病死となっている。犯人は不明で、未だに捕まっていない」


「……ロニィとやらと無関係かどうかでござるな」


 ケルディンと目が合ったサマラフは、少し困ったような笑みを浮かべた。


「それも調査か、片付けてほしいと仰るのですか?」


「はははっ、やだなぁ。これ以上頼ったら、爪研ぎまでお願いしなくてはいけなくなる」


 ケルディンは笑って冗談を言ったあと、両腕を組んで彼らの顔を順に見ていく。



「……ま。わたくしも君たちも、夜道は気をつけたほうがいいだろうね」

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