12:和解?(1)
※今回も全体ざっくりしてて、後半は台詞が多めです(陳謝)
サマラフは行き交う観光客たちの邪魔にならないよう、エリカを道端へ招き、装備している武器を見せて貰った。これから戦うことになるであろう爻族や、イ国に出没する魔物に対抗できるか、触って強度を調べる。
「店に寄って、買い替えたほうがいいな」
防具と衣服は装備したままの状態で居て貰い、前身のみに絞って、目視で確認。サマラフはある点に気付き、怪訝な表情をする。
「妖精語?」
文字の特徴を見て、何語かわかったが、解読はできない。
「あなたも縫えるの?」
サマラフは、首を左右に振って否定する。
「こんな高度な技術、俺には無理だ。剣を振って魔法を使うのが関の山さ」
「……。これ、オリキスさんが縫ってくれたの。呪文なんとかと、魔術なんとかを併せてって言ってた。合わせ技?だったかな」
自分が何を言ってるのかまったくわかっていない彼女の顔を、サマラフは、半ば呆れた目で見つめる。
(オリキス。味方であれば心強いが、現時点では最悪の敵だ)
防具は様子を見ることにして、バーカーウェンから持参した回復薬の種類も確認させて貰う。二人は足りない分を補充すべく、噴水広場の近くに建っている道具屋を訪ね、ついでに保存食も購入。次は武器屋へ向かう。
「ほお?此奴は珍しい素材だ」
キララのおかげで店側の買取価格は良く、体に負担をかけにくい重量で一式揃えることができた。
二人は戦いに差し支えない量の食事を摂り、ヒュースニアの西の門から街道へ出る。
「エリカ。非常事態を除き、アルデバランのチカラを使うのは禁止だ。消耗が激しすぎる。魔法は使えるのか?」
「弱いのと、中級を少し使える。属性付与も」
エリカは、ふと疑問が浮かぶ。
「アルデバランのチカラと魔法って、使う源は、同じ魔力じゃないの?」
「講釈が嫌なら端折るぞ?」
「サマラフは、勉強するの嫌い?」
彼は苦笑いを浮かべる。
「一日中ずっと椅子に座って、書物と睨めっこするのは苦手だ。体を動かすほうが好きだよ。君は?」
「興味あることは好き」
「同感だ」
否応がなしに、ともに旅をする相手の内面を知りたくて、彼女なりに関心を持つ努力をしようとしている。
「アルデバランの娘にも同じ原理が働いているのか、俺にはわからない。
十二糸は特殊で、世界のチカラ……、糸力を使うとき、魔力は異物に変換されて増幅する。魔力を溜める器も一時的に大きくなるが、強くなったと思い込んで無鉄砲な使い方をすると、消耗が激しくて疲れやすい。
人間が使っている魔法はただの真似事だから、体への負担が少ないそうだ」
「偽物ってこと?」
「純度が低いって話だろうな。
『世界の法は、土は土から、水は水から。
人間が使う魔法は、土に砂鉄、水に釘。合成』……」
「ふーん……」
「これは例え話だが、緑色に青色を混ぜたら、別の色に変わるだろ?」
「うん」
「糸力は、青色に書き換える。
切り替えれば元の緑色に変わるが、糸力を使うと魔力の量は減るから注意だ」
「別々に使えなくて、同じ物になったあと、また分かれるって感じ?」
「そうだ」
「魔力を増幅させる魔法や道具を使えば、糸力に頼らなくても良さそう」
「糸力を使った魔法や技には利点がある。使える能力が増えて、畳みかけたいときに便利なんだ。魔法剣のように詠唱が短く済むのもある」
「それ、いいね」
「……」
サマラフは顔を前に向けて、冷静な気持ちで望みを話す。
「戦いに慣れるのはいいが、君には人間の女の子として助かってほしいと、俺は思うよ」
「……」