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Aldebaran・Daughter  作者: 上の森シハ
Chapter.03 イ国【南部】
57/143

04:曇る虹彩、滲む日溜まり(4)

※文章、ややざっくりしてます(陳謝)




 エリカは助走をつけれる位置まで、歩いて移動した。振り向くと、直線上に居るゼアは槍を体の横に立たせ、構えず、防御する気配を見せない。鉄製の肩当てに胸当てプレート、厳つい脛当てに靴。頑丈な防具で覆われた部分なら肌を傷付ける心配はないが、隙だらけの相手を一方的に攻撃していいのかエリカは少々気が引けてしまう。


(弓矢のほうが狙いを外しやすい?でも、うっかり当てちゃうと怪我を負わせる。短剣にしたほうが、私が何処を狙ってるか予測しやすそう)


 最悪の事態を想定してから最良の方法を考える。


「……行きます!」


「おう!」


 エリカは鞘から短剣を抜いて走り、真正面から攻撃に出た。刃が体を掠めないよう距離に注意。此処と決めて立ち止まり、腕を振り上げる。

 移動速度と踏み込みの浅さから戦意の無さを見抜いたゼアは避けず、目の前で宙を斜め切りされても、眉一つ動かさなかった。


「お嬢ちゃん、わかってて加減してやがるな?」


「だって、もし怪我をさせたら、血が出ちゃうでしょう?」


(人間相手の実践経験が無いのか)


 その上、攻撃対象外の相手に本気を出すのが難しい性分。

 ゼアは超がっかりしたぜと言いたさげな落胆した表情でエリカを見る。


「ふうぅ〜〜ん?オレ様、見くびられてるわけか」


「!そんなつもりじゃ、」


「可哀想だが、真面目に相手をしない失礼なお嬢ちゃんは、森に放置して帰るしかねぇなぁー」


「!?」


 煽られてるとも知らず、エリカは真に受けて焦る。


「待ってください!言う通りにしますから!」


「んじゃ、気合いを入れ直して、次は連続攻撃で頼むぞ。早いとこ終わらせようぜ」


 でなければ、厄介な男に追い付かれてしまう。ゼアはいつまでも此処で足止めする気はない。


 エリカは不納得だが、また助走をつけれる所まで戻った。槍で上手く防御してくれることを祈って集中力を高め、構えてから足裏に力を込めて疾走。槍に狙いを定めて中攻撃を仕掛けに行く。

 次はまともに喰らわせに来たことを体感で察したゼアはにやりと笑みを浮かべ、槍で防御。彼女は言われた通り、物理攻撃を繰り出す。


(腕力、弱々。片手で全部対処できちまう。もうちっと本気を出して貰うか)


 ゼアはわざとゆっくり後退し、押されてる振りをしながら愉しげに話しかける。


「しっかし、お嬢ちゃん大変だな。親が死んだって?」


「死んだなんて、確認するまで信じません!」


 エリカの眉間に皺が寄り、攻撃が一度だけ強に変わったが、ゼアの防御力の前では地面をノックするようなもの。


(ッつうかよ、本気で否定されて困るのはオレ()()も同じだっつーの。亡霊であっても翼竜に現れてほしくねぇんだよな)


 生存を最も許すことができない人物の後ろ姿が、ゼアの脳裏を過った。


(事実確認を進めるとして。先に此奴の本性をちっとばかし覗き見させて貰おうか)


 ゼアはエリカの攻撃を初めて弾き返した。



「話は変わるが、お嬢ちゃん間抜けだな」


「?」


「世界って名前のクソ女も間抜けな奴だった。復活しても、どうせまたオレたち十二糸に敗れるだろうよ」



「ーー」


「……」


 エリカの瞳孔は縦細に変わり、自我は薄れて無表情になった。顔を前に向けたまま短剣を鞘に収めると四歩後退し、弓を寝かせて構え、魔力を使って光属性の矢を三本形成。

 森に居た小鳥たちが、ばさばさばさっ!と、逃げるように上空へ飛んでいく。

 ゼアは辺りの空気が変わったのを察して後ろへ大きく宙返りし、すたっと着地。両手で槍を構え、臨戦態勢に入る。

 エリカの心身を一時的に乗っ取ったアルデバランの娘は白光りする細い弦をぎりぎりまで引き、憎しみを込めた目をしてゼアを睨むと、禍々しい不気味な笑みを浮かべた。


「今日は、味見程度で許してあげる」


「そいつは光栄なこった」


 挑発に対し、挑発で返す。

 エリカの手から弦が離れ、矢が一斉に放たれた。一点を目指して、高速で襲いかかる。

 ゼアは魔力の封を解き、槍に糸力(しりょく)を流し込んで素早く回転させて防御し、矢をすべて弾いた。


「へへっ。舌でぺろんと舐める程度か?ご苦労さん」


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