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Aldebaran・Daughter  作者: 上の森シハ
Chapter.02 執心篇
35/143

15:下る魂に救いヲ【vs無し首族】(前半①)

***




 ベロドの墓場に棲まう無し首族(ノーネック)のなかで最弱と言われてる者は、敵の存在を察知した途端、どちらかの命が(つい)えるか相手の気配が消えるまで襲いかかる習性がある。

 加減知らずで、身体能力は高め。

 此方が暗闇攻撃をおこなって視界潰しに成功すると、彼らは怒って興奮し、攻撃力を増幅させるので注意。

 倒すまでのあいだは、くれぐれも気を休めないように。

 ……これが基本情報だ。

 ベロドの墓場に近い島では「彼処に挑みたい命知らずは、下着を一枚持って行けよ」と助言される。腕にそこそこ自信のある冒険者且つ初見であるほど、無し首族(ノーネック)の獣じみた動きと醜い容姿を目の当たりにして失禁し、探索を諦める確率が高いのだ。

 故に、本土の一部では、言うことを聞かない子どもに「ベロドに置いてくわよ!」と叱りつける母親が居る。



「行ってきます」


 装備品を纏ったエリカは玄関のドアを閉じ、心を鼓舞するために、誰も居ない自宅に向かって静かにそう言った。

 彼女はノブから右手を離すと口元に笑みを浮かべ、集合場所に向かって歩き出す。


 しかし……。


「?」


 足取りは軽快だったが、七歩進んだ所で何かに見られてる気配を感じ取り、立ち止まって振り返る。視線を右から左へ、左から右へ戻してみたものの、らしき者は見当たらない。

 気のせいと思った彼女は再び歩き出した。

 闇を塗り潰した黒い瞳が二つ、キララの木の枝に留まって監視をしてるとも気付かず。



 水の蟹に勝って一週間目を迎えた今日、

 三人はいよいよ、最後の試練に挑む。





「オリキスさん、おはようございます」


 集合場所になってるカコドリ遺跡の麓にて、エリカは先に来ていた彼に明るい声で話しかける。


「おはよう、エリカ殿」


 返ってきた声音と表情は、なんとなく、初めて会った日の少し冷めた雰囲気を思い出させた。


「バルーンはまだですか?」


「あぁ。最後のようだね」


「……」


「どうかしたかい?」


無し首族(ノーネック)って、元は人間で性別があるんですよね?死んでても、急所を攻撃されたら痛いんですか?」


 エリカの真面目な疑問にオリキスは目を丸くして驚き、すぐに表情を戻すと視線を左へ外した。


「考えたことはないな」


 帽子の鍔を右手で掴んで目深に被る仕草をする。それが何を意味しているのか、質問した当人は「?」わかっていない。

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