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Aldebaran・Daughter  作者: 上の森シハ
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【番外編10】リュイの場合

【設定】

オリキスとエリカが結婚。その翌年、砂漠の国チャイソンでは……。

後半、まったり。




 リュイが王政を廃止にし、民主主義にすると宣告したことで、砂漠の国チャイソンは完全に崩壊。反乱軍が勝利を収めたが、率いていた者は指導者が務まっても国力を回復させる力や頭脳は無く、政治が得意なリーダー格の者があまりに不足していたのが原因でまともに統治できずという流れから、民とのあいだで小競り合いが勃発。(つい)には反乱軍のなかで意見が分かれ内部崩壊。仲間同士で衝突するようになった。

 そのほか、国内に盗賊が蔓延り、強奪が起こるなど、情勢は悪化を辿っている。



 北に位置するシュノーブは難民受け入れを最低限に留めて橋を封鎖すると、少人数で編成した調査隊をチャイソンに派遣後、調査結果を纏めて他国に報告。当事者を除いた各国の代表者らは事態の深刻さを受け止め、会議を開くことに。


 クリストュルが姿を消し、サラが次期国王の冠を他者へ譲ったのを機に異動希望を出したアッパッティオ()使()が、前に出て説明する。



『チャイソンから他国へ移住したい者が居れば支援すると伝えたところ、残るのを選んだ民は八割九分も居ました。えぇ、ぶっちゃけ九割と考えてくださって構いません。

 ほかに我々にできること、して貰いたいことは無いか訊ねたら殆どが物資の支援でしたが、悪さを働いてる盗賊の排除と、民を苦しめる反乱軍の制圧もしてほしいとのことでした。

 反乱軍のなかには自分たちではどうにもならないのを認めて頼ってきた者も居ますので、味方と敵を区別できる人を派遣したほうが良さそうです』



 ならばと、会議に参加してる各国の代表者らは、傭兵団と援助隊を結成しようと決めた。

 しかし、イ国の代表者であるスフ王から「人員はそれぞれの国から適任者を選び……」と発せられたとき、アルバネヒトはこの要請を拒否。自国の再建を優先した。派遣できる兵士が居ない(居るには居るが他国のために犠牲者を出すのを渋っている)のも理由に挙げた。


 アイネスは、他国を植民地化したことへの、過去の罪の意識から拒否。

 ロアナは名乗りを挙げたが、チャイソン側の代理人が支配を逃れたいがために拒否。

 クダラは自国で内乱が起きそうな兆候があるため拒否。


 ……そんなこんなで、拒否されたロアナと拒否した国々は、物資の提供を担うことが決定。貸付は無しである。

 イ国、ダーバ共和国、シュノーブ、群島ヤマタヒロ、学問栄冠都市ウォンゴットは希望者を募り、条件に合致した者のみ派遣することにした。



 °



 各国の代表者らが会議を終えて一週間も経たないうちに、偶然イ国を訪れていたサマラフとゼアは、スフ王から「チャイソンの民を助ける手伝いをしてほしい」と依頼され、海を渡った。


 自分の庭みたいに土地を知り尽くしているゼアは、同族のエルフに協力を求めに行ってくると言って一時離脱。

 一方、サマラフは。


(場所や着衣が変わっても見つけやすい方だ)


 援助隊の世話として働いてる、元婚約者の所へ挨拶に行った。



「リュイ様、ご無沙汰してます。まさか、このような形で再会するとは思いもしませんでした」


 汚れたエプロン、町娘のような服装。背負っているのは、姿勢を傾けたら落ちてしまいそうな、大量の洗濯物が入った籠。

 王女だったときの雰囲気や持って生まれた可愛いらしい顔は変わらずだが、艶やかだった髪は傷み、肌も十分な手入れが行き届いていない。

 そんな姿をサマラフに見られてもリュイは恥を感じず、にっこり笑う。


「わたくしにも、思うことがありすぎましたの。

 ところでサマラフ様。エリカさんは、いらっしゃらないの?」


 再会できるのを楽しみにしていたリュイは辺りを見渡して姿を捜したが、笑みを浮かべたままピキッと固まっている彼の顔を見て、悲しげな表情をする。


「もしや……、助からなかったという悪いお話ですか?」


「いいえ。仲間から教わった話によれば、地元へ帰り、元気に過ごしてるようです。その、俺は諦めたので」


「エリカさんもサマラフ様をお好きだったのでしょう?」


「彼女の幸せが一番ですから」


「そう……。そういえば、シュノーブの国王様はクリストュル様から大臣のラドリック様にお代わりになったと、風の噂で聴きましたわ。ヴレイブリオン様を彷彿とさせる方だと言われ……。?」


「……」


「……」


 察したリュイは手を組み、花のような笑みを咲かせた。


「サマラフ様では、敵いませんわね」


「はは……」


 リュイの口からダメ出しされると思わなかったサマラフは、乾き笑いを零した。



「ーーーー リュイ」


 羊を思わす黒い角。濃い灰色の短毛。狼の顔に、相手を射殺す気でいるような鋭い目付き。蟹の鋏にそっくりな形をした耳の内側には、綿球のようにふわふわした大きな耳毛の塊が一つ生えている。


 獣人モリカラ族。

 背丈はサマラフより頭が四つ分高い。


 リュイは明るい声で、


「シバ」と、名を口にした。


「彼は?」

 と、サマラフが訊ねる。


「アイネスからお越しになられた、モリカラ族のシバですわ。チャイソンへは自発的に志願なさったそうです。わたくしの守護騎士様でいらっしゃるの」


「リュイに変な虫が付かないよう守ってる」


「俺はサマラフ。よろしく」


「サマラフ卿?ロアナの」


「元だな」


 シバは握手を交わす。


「リュイは俺の(つがい)になる雌だ。たらし込むなよ?」


「ははは……」



 リュイはシバの腕に抱き付く。


「心配なさらないで。わたくしはシバの物ですわ」


 サマラフは、仲の良さを見せびらかすように甘々な態度をとるリュイを見て、


(そんなつもりで来たわけじゃないが)


 笑顔で何よりだと安心した。



end

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