【番外編4】遠回しの告白(1)
【設定】
条件を満たして覚醒したエリカはシュノーブに戻り、サラとリラに宿っていた世界のチカラを断つことに成功するも、願いを叶えたクリストュルは契約に従って姿を消した。
エリカは彼を救出すべく、再び旅に出る。
【仲間は三人】
シュノーブの俺様王子サラ。絶賛、片想い中。
東国から逃げてきたもう一人の世界の片割れ、青少年のユンリ。戦闘以外では淡白な調子だが……?
妹の仇を討つためユンリに挑んだ、東国出身の武闘家(※家出王女)のソフィリア。強気な姉タイプ。
---
・内容は恋バナです。会話メイン。
・話の途中で、閑話として登場させる予定だった話です。
四人はいま、某国の街中を歩いて移動している。準備が整うまで此処に滞在する予定だが、旅に必要な物を調達したり武器の綻びを直すなど、すべきことは山積みだ。
ソフィリアは左側に居るエリカの顔を見て、前々から気になっていたことを訊ねる。
「エリカちゃんて、どんな男が好み?」
後ろを歩いてるサラは聞いてない振りをしながら、黙って耳を傾ける。
エリカは口元に笑みを浮かべ、あっけらかんとした表情で答えた。
「考えたことありません。反対に、苦手な人物像なら言えますよ?」
「消去法ってやつね。
それで?
どんな男は遠慮したいの?」
エリカは一拍置いてから答えた。
「強引な人」
ソフィリアの後ろを歩いてるユンリは隣りに居るサラの顔を見て、(ストライク一発目)と思った。
エリカは眉尻を下げ、困った風に笑いながら言う。
「相手の気持ちを考えずに自分の要求をぐいぐい押し付ける人は、もっと苦手かも」
(オレ、当て嵌まるじゃねぇか)。サラは眉間に皺を寄せて口端を下げた。
ソフィリアは、にやにや笑う。
「ふうん。頬赤いのは気のせいかしら?」
「そうかな」
エリカは前を向いて照れ笑いを浮かべる。手を前で組み、もじもじと指を動かして誤魔化そうとした。
「ねえ、サラは好み?」
「オレを混ぜんな」
「やだ、盗み聞きしてたの?」
と、ソフィリアは知ってて煽る。
サラは茶化すなよと、ギロリと睨み付けた。
「否応がなしに聞こえるっつーの」
頬の熱を引っ込めたエリカは後ろを振り返り、口元に笑みを浮かべたまま言う。
「私にサラは勿体ないよ」
「あ〜〜あ。振られたわね」
「振るも振られても無いだろ」
賑やかな仲間たちとは対照的に淡白なユンリは恋心を弄ばれてるサラを憐れみの目で見て、(ストライク二発目)と思った。
宿屋に到着後、四人は三階にある部屋へ入った。寝室は二部屋、台所は一室。風呂は個室で、洗面所は別に付いている。大きめの街とあって設備は良い。
ソフィリアとユンリが周囲の下見と買い出しに行ってるあいだ、サラはエリカと待機することになった。
(ったく。ソフィアの奴、変な気を回しやがって)
恋愛対象外にされたわけでは無いが、こうなったら更地になる覚悟で押してみるかーー。サラは半眼になって口端を下げると台所へ行き、備え付けの調理器具は何があるのか確認してる背中に向かって心情を吐露する。
「地味に凹んだ」
「サラと私じゃ相性良くないよ。喧嘩多いもん」
「好きになってくれたら優しくするぜ?」
「!」
エリカは目を丸くして、くるっと振り向いた。そのまま微動だにしない。
「…………」
「んだよ」
サラの口調は相変わらずぶっきらぼうで、表情や声に照れは無い。
彼が揶揄ったり嘘を吐くのは必要なときだけだと知ってるエリカは、敢えてむすっと捻くれた顔をする。
「好きじゃなくても、優しくしなきゃ駄目だよ」
「強欲な奴」
「だってサラ、時々酷いから」
「時々優しいってことだな?」
「どうしてそうなるの」
ツッコミを入れたあとにエリカは妙な可笑しさを感じ、ふっと吹き出して、ふふ、と笑いを零した。
サラは(可愛い顔しやがって)と思った。
「甘くしてやろうか?」
「……」
彼の言葉は、あまりにも真っ直ぐすぎる。エリカは笑いを引っ込めて真顔になった。
「……」
「……」
「要らない」
(ちっ)。言葉の選択を誤ったサラは、頭のなかで舌打ちした。
「優しいと甘いは別なの」
「おまえ辛口だよな。惚れる男の気がしれねぇよ」
「む」
「んべ」