鍬と魔法のスペースオペラ 第一章 旅立ち その3 出航
3・出航
父様達のフライングプラットホームがドックを出るのをパーソナルモニター(乗員の動きに同期する、非実体型モニター)で確認しつつ、ブリッジに向かう。
艦内は広大なため、移動には徒歩の他に、[繭玉]と呼ばれる高速カプセルや、リフトの他、カートなども使われる。
まぁ、普通の廊下も走るカートはとてもゆっくりで、歩いた方が早い代物だけどね。
僕?普通に歩いて行きますが、何か?
既に発進準備はほぼ終わっているので、廊下を歩く乗員はまばらだけど、僕に気付くと手を振ったり会釈したりして挨拶してくるので、僕も応える。挨拶は大事。
僕は領軍の軍人ではないけれど、艦長より偉いこの艦のオーナーで、領主の息子であり、乗員の大半は領軍だから、彼らからすれば僕は雲の上の存在だ。
けれど改装作業や新装備の実装や稼働実験、加えて各種訓練で、HDを入れれば、既に500時間を越える期間をこの艦と共に過ごしている。乗員と馴染むのも当然だろう。
「ウィル、やっほう」
もっとも、ここまでフランクに挨拶してくる乗員は珍しい。というか、この艦には一人しかいない。
「おはようリルルカ先生」
リルルカ先生は僕の家庭教師で、今はこの艦の科学主任を兼任している。
外見年齢は10代半ばだけど、長命種であるイルヴ人だから実年齢は謎だ。黒髪のおかっぱ頭で、スレンダーな体型の美人だが、表情に乏しい。
そのくせ、実は気さくで、ちょっとお茶目な性格なのが面白い。
少し尖った耳がチャームポイントだそうだ。
もっとも、それはイルヴ人の一般的な特徴の一つだし、耳が尖った異星人など、別に珍しくもないんだけどね。だからそれは先生の冗談だと思っている。
専門は総合自由科学だそうで、かなりマイナーな学問だけど、リルルカ先生自身はその第一人者と呼ばれるほど、王都星では高名な学者様だった。
それが何を思ったのか、5年前、僕の家庭教師として自身を売り込んできたんだ。
先生の授業は独特だけど、僕には合っていたようで、僕が10歳で宇大を受験できるようになったのも先生のお陰だね。うん、地獄のような特訓を受ければ、不可能は可能になるんだ、きっと。
ともあれ、5歳からの付き合いで、HDを入れれば6年を越えるので、この艦では僕との付き合いが一番長い人の一人でもある(他に近い長さの人が二人もいるけど)。
「いよいよ宇大のワームホールを通る旅。実に楽しみ」
先生の表情は変わらない。というか、無表情だ。でも長い付き合いの僕には、彼女がワクワクしているのが分かる。
宇大のある恒星系には、通常のHDでも数ヶ月はかかる。
丁度フェアリーゼ星間王国とガイスト帝国のほぼ中間地点にあるが、間に星間物質が極端に少ないエリアがかなりあるため、それを動力源にする船だと、普通に辿り着けないくらいだ。
そこで宇大は、人工的にワームホールを作り、学生や受験生、大学関係者の利用を認めている。
普通、人工ワームホールは、ゲートと呼ばれる出入り口を出発地点と到着地点の双方に建造する。とても大規模な施設であり、当然のこと最重要戦略拠点となる。
もしこれが敵国に掌握されたら、防衛側が圧倒的に有利という、星系間戦争の前提条件が崩れてしまうからね。
ところが宇大の人工ワームホールは、宇大サイドには類似した施設があるものの、反対側の施設はなく、何もない空間に、ワームホールの出入り口を作る事ができる。
しかもその位置も比較的自由に変更できるそうだ。
比較的、というのは、恒星や惑星の重力の影響が大きすぎると駄目らしい。もっともそれは弱点というより、安全管理上ありがたい不自由と言えるだろうね。
ワームホールから出たら、そこは恒星の中でした、じゃ洒落にならない。
ともあれ、そのような特徴から、ワームホールの出入り口は、恒星系外に設定され、利用者にはその座標が通達される仕組みだ。
この技術は宇大最大の機密の一つであり、他星間国家に対し、圧倒的なアドバンテージを持つ由縁でもある。
何しろ、知られている限り、宇宙で唯一、一方的に攻撃可能になる国なのだから。
もちろん各国共に、宇大の人工ワームホールの秘密を探ろうと、様々な方面からスキャニングが試みられたが、未だに成功した国はないらしい。
科学で作られたものは、科学で再現可能な筈だけど、宇大のはそう簡単な話ではなく、科学以外の要素があるのではないか、というのが先生の仮説だ。
「でも各種スキャンは役に立たないんだよね。その程度は余所の国がとっくにやっているだろうし」
「大丈夫。私達には例のシステムもある」
先生は自信があるようだけど、どうだろうね。
まぁ、宇大は自分のワームホールを分析する事は特に禁じていない。いや、むしろ推奨すらしている。
最高学府たる宇大としては、学生が知りたがる事は当然想定内で、下手に禁じて危険な探査をされるよりマシだといったところか。
いや、『探れるものなら探ってみろ』という自信の表れというヤツかもね。
学者って、結構子供っぽいところがあるから。
「ウィル。何か言いたい事でもある?」
「……いや、別に」
「……とにかくチャンスは一度。ワームホールを通過するのは文字通り一瞬だから、絶対逃したくない。HD空間に入ったら、[ミカン]を稼働する許可が欲しい」
先生は両手を握りしめ、フンスと鼻息荒く迫ってきた。僕と正対しているから、後ろ向きに歩きながらだ。相変わらず器用だな。
「[ミカン]か……艦長には言ったの?」
「言ったら、あっさり断られた。ウィルの許可があれば、アイツは逆らえない」
「まぁ、そうだろうね」
歩きながら考える。
HD航法は、高速亜空間の一種であるHD空間を使う事で、擬似的に光速を越える宇宙航行の事だ。
HDジェネレーター一基で、数百光年を、数分から数時間で突破するんだけど、HD空間内では時間の流れが変わるので、HD航法ばかりやると、早く老けるという欠点がある。
まぁ、今時のアンチエイジングの技術を考えれば、誤差の範囲内なんだけどね。
ともあれ、それだけ通常空間と環境が異なるので、一般のセンサーの類はほぼ役に立たず、航法計算は予めしておき、自動航行に任せるのが通例となる。
だから例の過積載問題のようなトラブルは、可能な限り避ける必要がある。
艦隊の場合は、旗艦に全所属艦艇が航法システムをリンクさせて、全部旗艦任せ。文字通りの一蓮托生ってわけだ。
今のところ、HD空間内で、他所属船とニアミス、ないし衝突といった事故は起きた事がない。
高速亜空間、と一言で言っても、それは無数の位相に存在し、他所属船が同じ空間に侵入するのは事実上不可能だからね。
でも、今までそうだったからといって、これからもそうだとは限らないのが科学だ。
もしHD航法中の艦船に、通常空間から干渉する方法が発明されたら?
またはHD空間から、別のHD空間への攻撃手段が開発されたら?
安全だと思って無防備だった艦船は、ひとたまりもないだろうね。
では逆に、HD空間内から通常空間や、他のHD空間の様子を探る事ができたら、ある程度の自衛ができるのではなかろうか?
そのコンセプトで[ミカン]を開発したわけだ。
コイツは僕と先生が共同発案し、領地の最高学府タルシュカット領立大学や、領軍まで巻き込んで、超強引に開発した曰く付きの代物で、[ミルちゃんキクちゃんナンダロウ君システム]という、超絶ダサい命名がされた(命名者は先生)、総合センサーだ。
開発当初は略して[MKNセンサー]と呼ばれる事が多かったけど、僕が勝手に[ミカン]と更に略していたら、みんなそう呼ぶようになっちゃった。
[ミカン]は確かに優秀だ。まだ短時間しか試した事はないけれど、他のHD空間にいる艦船の存在を探知したり、超空間通信(超空間は高速亜空間の一種だが、HD空間より更に高速かつ過酷なため、通信に適した、というか通信くらいしか使えない。ちなみに、僕が1次試験に利用したのも超空間通信上)の断片的傍受に成功したりした。
これらの成果は、まさに前代未聞なんだけど、必ずしも良い事ばかりじゃない。
まず、探知はできるけど確実じゃないし、通信もあくまで傍受であって、一方通行だ。
また、開発動機だった、通常空間または他のHD空間からの干渉(攻撃含む)は、現時点では技術的に不可能だという事も分かった。
何しろ探知に成功したところで、相手は次の瞬間には遙か彼方だからね。
実はそれでも結構凄い事なんだけど、領軍の協力者達は相当がっかりしていたね。
それに、もっと大きな問題を抱えている。
膨大な情報を処理するコンピューターへの負担が半端ないんだ。
ミカン搭載艦には、王国宇宙軍での大規模艦隊の旗艦クラスが装備するレベルの量子コンピューターを、3基も搭載する必要ができちゃった。
これだけで王国宇宙軍の主力たる二等戦艦が買えるだろうし、いくら父様が伯爵でも、そう簡単に売ってくれるレベルの装備じゃない。
というわけで、自作しちゃいました。
旗艦用量子コンピューターを。
通常空間時間では2ヶ月で。
いやぁ、いくらHD空間内と通常空間とでは時間の進み方が違うとはいえ、これは酷い使い方だと、僕も思う。
領軍所有の科学実験船[ホーキング]に無理矢理工作艦[ホダカ]を文字通り接続し、双方のHDジェネレーターを同期させて運用した。
結果、3基の量子コンピューターの開発、製造に成功したけれど、[ホーキング]と[ホダカ]は長期ドック入りを余儀なくされ、今も入院中だったりする。てへっ。
そういう経緯もあってか、[ミカン]の評判は結局好転しなかった。
「壮大なロマン装備(要は無駄遣い)」
「史上最強のピーピングトム(覗き魔)」
「で、結局のところ、何ができるの?え?それしかできないの?馬鹿なの?」
とまぁ、こんな感じだ。
もちろん、[ミカン]自体も、三基の量子コンピューターも、フルに運用するには膨大な電力が必要であり、艦の安全運行を任務としている艦長が良い顔をしないのも当然といえば当然だ。
それどころか、全システムを[レパルス]に移植する事自体、思いっきり、露骨なほど、難色を示されたね。
さすがの僕もちょっとヘコんだけど、それを見た艦長が、急にやけに協力的になったのが印象的だった。やはり、領主の息子だからかな?
それはそうと、HD中の作動実験結果を、今回のワームホール調査に活かせるかどうかは、まったく未知数、というか、多分無理。
何しろ、HDとワームホールは、似て異なるというか、全然違うからね。
HD航法は、前述したように、亜空間を利用するのに対し、ワームホールは、空間を歪めて出発地点と到着地点の座標を重ねることで、長距離間の移動(跳躍)を可能にする。
つまり、ワームホールの利用に関しては、船はHDジェネレーターのような特別な装置を必要としない。あくまでゲートを通過するだけだ。
だから[ミカン]を使っても、空間の歪みを計測する事が仮にできても、何故歪んだのかを探る事はできないだろう。そしてみんなが知りたいのは、まさにそこなんだけれど。
もっとも、それを知らない先生じゃない。
なにしろ[ミカン]の実質生みの親なんだから。できる事とできない事の把握くらいはしているだろう。
僕は声を潜めた。
「……HDで、何かあるの?」
「……嫌な予感がする。私の勘が、そう告げている」
勘、ね。
まったくもって非科学的だけど、天才って、往々にして論理構築の途中経過を全部すっ飛ばして、『勘』の一言で終わらせるものだからねぇ。
「分かった。オーナー権限で許可するよ」
パーソナルモニターを操作して、艦長にも伝えておく。
艦長の頭痛の原因が増えるな。
ごめんなさい。
「さすがはウィル。話が分かる。じゃ、また」
用が済んだので、先生はさっさと艦中央の専用ラボ、通称『魔女の引きこもり部屋』に行ってしまう。
それはいつもの事なので、僕もさっさとブリッジに行こう。
艦長に直接謝らなきゃ。
まぁ、消費電力が少々増えたところで、別にどうって事はないし、それで不安要素が潰せるなら安いものだと思う。
「イェッ・サー。問題ありませんよ。この艦は、乗員を含めて、全てサーのモノですから、全てはサーの思うままに為されば宜しいかと。それにあの糞生意気な魔女がしつこく要請してくるのに比べれば、ずっとマシとも言えますからね」
エリザベート・L・ホープ艦長が、にっこり笑う。うん、目が全然笑ってないね。
「だからゴメンって。それに実は[ミカン]をHD航行中に、ずっと使う事に関しては、僕も良い案だと思っているから」
艦長が形の良い眉を片方上げた。興味が湧いたらしい。
「だって、先生がずっと[ミカン]に張り付きっぱなしになるんだよ?
興味の赴くまま好き勝手に動かれるより、ずっとイイじゃないか」
ブリッジの士官達が爆笑した。もちろん艦長も含めて。
まぁ、無茶をやるのは僕も同様だけど、僕は少なくとも事前に了承を取る。不意打ちでとんでもな実験をやる先生よりマシだと思いたい。
「システムオールグリーン。いつでも発進できます」
「管制室より通信。ボンボヤージュ、だそうです」
「管制室に返信。感謝すると伝えろ」
「補助スラスター起動。離陸する。重力アンカー解除」
「補助スラスター起動。離陸します。重力アンカー、接続解除」
立て続けに指示が飛ぶが、僕は艦長席の後ろにあるオーナー席に座ったまま、何もしていないし、するべき仕事もない。
ただ見ているだけだ。
ブリッジ正面の大型モニターの画像が、徐々に高度を上げている様子を映し出している。
だが、Gはまったく感じない。
まぁ、重力子の制御と慣性誘導が完璧な証拠だね。
今時の軍艦では、大気圏離脱程度では、ティーカップから紅茶が零れる事もない。
そのくせ全員が着席し、ハーネスまで装着しているのは、多分様式美というヤツだろう。
やがて青空が黒くなっていき、タルシュカット3の丸い地平が見えてきた。
宇宙だ。
何度体験しても、この瞬間はとてもワクワクする。
「ノーマルドライブ始動。ディフレクター・シールド生成確認。前進第一巡速」
「ぜんしん、だいいちじゅんそーく」
余所の艦だと、ここで艦尾のメインスラスターを噴射するところだろうけれど、幸いにして、[レパルス]にはそんなものはない。
重力子を用いたディフレクター・シールドを展開すれば、艦の質量が擬似的に減少し、反動推進でも効率が上がるといっても、そもそも反動推進そのものが無駄が多すぎる。
しかも後方にディフレクター・シールドを展開すると、輻射熱を受け止めてしまい、シールド内の温度が危険なほど上昇してしまうため、メインスラスターを噴射する時にはシールドを完全展開できないときた。
これでは質量を減少させるためだけに、余計にディフレクター・シールドを張らなくちゃいけなくなるから本末転倒というか、エネルギーの無駄遣いというか。
また、噴射する時に膨大な熱が発生しているわけだけど、その大半を宇宙にただ捨てているわけで、これまた勿体ない話だ。
いくら航海の大半をHDで済ませるとはいえ、時間的には通常空間にいる方がはるかに長いし、戦闘を旨とした艦艇なのだから、やはり通常空間における推進方法を練り直す必要があったわけさ。
そこで僕が目をつけたのが、本来急加速時に乗員を守るために開発されたという、慣性誘導システム。
これもまた重力子研究の過程で発明されたものだけど、それを安全装置としてしか使わないのは勿体ない話で、むしろ主推進方式として使えると思ったのが5年前。
当時5歳児の、ちょっとした思いつきではあったけれど、父様を含めた周囲の人達を巻き込んで実験してみたら、これが上手くいっちゃったんだ。
領軍内では革命的とまで持ち上げられて、ちょっと、いや、大いに恥ずかしかったけれど、この発明、というか改良をどこで嗅ぎつけたのか、リルルカ先生が突然押しかけてきたのには驚いたな。一応発表した論文に反応したそうだけど、学会からは完全に無視されたのに。
まぁ、天才のやる事はよく分からない。
それはともかく、慣性誘導式推進はディフレクター・シールドとの相性も良く、というか、ディフレクター・シールドそのものに慣性誘導の機能を持たせて、相乗効果を生み出したし、メインスラスター関係や、過剰な廃熱装備を省く事によって、兵装や防御シールド系、探査システムなどに多くのエネルギーやスペースを割く事ができるようになった。
そんなこんなで、色々弄っているうちに、いつのまにかうちの領軍の艦艇のほぼ全てが、慣性誘導方式に変更していた。[ウィル式推進]なる、恥ずかしい名称が付けられたけれど、それは父様達のジョークだ。
僕を弄るのを生きがいにしているような人達だから。
僕は単に思いついて、好き勝手に弄っただけだ。
実用化に必要な技術蓄積は、領軍技術陣の血と汗と涙で出来ている。だから本当は[タルシュカット式推進]が正しい名称だと思う。
「レーダーに反応。僚艦が接近中」
「艦名確認。[アクロポリス][アガメムノン][アイム]。予定された随伴艦です。リンクを求めています」
3隻とも領軍のアレキサンダー級駆逐艦だ。ニューヴィッカース製で、全長400メートル。エンジンの容量の関係で、最大戦速では[レパルス]の方がずっと速いのは仕方ないが、領軍オリジナルの魔改装のおかげで、ワンランク上の性能になっている。
「リンクを許可する。陣形はライトフォーフィンガー」
いわゆる『右手四本の指先』の位置に付ける陣形で、安全かつ実戦的でありながら、古典的とも言える。
何しろ考案されたのが、まだプロペラを回して飛行機を飛ばしていた時代だというのだから。
当時と違い、全方向に移動または攻撃可能な宇宙船で、そのような陣形を作る事にどれだけ意味があるのだろう?
ま、貴族に様式美は付き物だから、あまり気にしないようにしよう。
それより重要なのは、リンクしたという事は、駆逐艦3隻が[レパルス]の指揮下に入ったという事。つまり一時的に彼女らも僕の船になった訳だ。
ちなみに、我がタルシュカット領軍戦闘艦の構成は、2000メートルのロイヤルサブリン級一等戦艦1、1200メートルのブレイブ級二等戦艦5、800メートルのプリンス級重巡航艦15、アレキサンダー級を始めとした、各種駆逐艦300、その他フリゲートや哨戒艇多数といったところだね。
その中から、駆逐艦を3隻も護衛に付けてくれたのも、やはり貴族の見栄だろう。
今回の旅のように、その行程の殆どをHDで済ませる場合、護衛の意味なんてほとんどないだろうから。
それでも僕に恥をかかせまいと配慮してくれる家族には、感謝しかない。
「航路設定完了。各艦リンクに異常なし」
ブリッジの全員の視線が僕に集まる。
僕は軽く頷いてみせる。簡単なお仕事です。
「HDジェネレーター起動。HD開始」
「HD開始します」
艦長の命令にチーフパイロットが復唱し、僕の小さな艦隊は高速亜空間に入った。