鍬と魔法のスペースオペラ 閑話その2
閑話・魂管理の間にて
[くくく、所詮、キミは、四天王でも最弱、だった、ねぇ]
死んだ時点で予想できた事だが、俺は今ユースに弄られている。
ふん。好きに嘲るがよいさ。負け犬にはそれが相応しい。
そうだ。俺はまたアルスに負けた。どうやって殺られたのかは未だに分からないが。
だが、はっきりしている事はある。
俺は何もできないままアルスに敗死したので、転生ポイントは大したことがないだろう。
それは部下達も同様の筈。
勝手に俺に召喚された挙げ句、犬死にになってしまった。
で、次は何だ?虫か?草木か?
ああ、そういえば、あの人生ではそのどちらも一度も見なかったな。
ま、終わった事だ。どうでもいいか。
[キミの、転生ポイントは、3200、だね]
3200、だと?
[残念、でした。プークスクス。前世の、記憶保持も、転生先、指定も、できませーん。記憶量を、調整して、必要ポイントを、低くする技は、もう、キミには、適用、できない、から、もう、二度と、彼には、挑戦、できないよ?]
いや、そうじゃない。そんな事は最早どうでもいい。
[どうでも、いい?あれだけ、復讐、したかった、のに?]
いいんだ。また負けてはっきり分かった。
俺はヤツには勝てない。所詮四天王でも最弱だった俺だ。その3200ポイントは、部下達に分けてやってくれないか?この大馬鹿者に付き合った挙げ句、犬死にでは惨すぎる。
[へぇ。そういうの、嫌いじゃ、ないよ?でも、意外、だな。キミは、そんな、殊勝な、性格じゃ、なかった、だろ?]
ふん。言ってろ。どうせヤツへの復讐は終わっちまったんだろ?だったらちっとは有効な使い道ってヤツで納得してぇだけだ。ま、人数が人数だから、一人頭ではゴミみてぇなもんだろうけどな。
[その、心配は、無用、だよ?キミの、部下達も、1000ポイント、以上は、稼いだ、から、群魂落ちは、免れて、いるよ?だから、無理に、分け、与える、必要は、ないね。
だから、最低でも、人間。
転生先、によっては、魔族や、妖精族にも、なれる、だろうね]
何故だ。
[何故って?決まってる、じゃないか。それだけの、偉業を、為したから、だよ]
偉業?馬鹿の集団が、勇者サマに挑んで、無様に負けた。ただそれだけだろう。どこの世界でもありがちな、実にありふれた話じゃないか。
[ありふれて、ないよ?キミ達は、命を、捨てて、忠義を、示し、多くの、人々を、感動、させた。キミ達の、行動は、戯曲化、されて、銀河中に、広まるのさ]
ほう!それはそれは。
俺達の魔王様への忠義が物語になるというのか。
[それは、ないよ]
へ?
[キミ達の、忠義は、あくまで、王家に、向けられた、ものとして、伝わって、いくからね。王女の、奇行を、命を、捨てて、諫めた、忠義の士、として、戯曲化、されるのさ。
題して、『忠賊物語』、だってさ。これから、ちょっと、未来の、話だけどね]
な、何だ……と?
[良かった、じゃないか。キミは、主役、だよ?
アルス君、改め、ウィリアム君は、敵役、だ。
もっとも、ウィリアム君が、キミ達の、行動の、真意、ってヤツを、語る、シーンが、一番の、見せ場、だから、彼も、主役、って事に、なるの、かな?]
ちょっと、待て。
[ん?どうした、の?]
アルスの野郎!散々馬鹿にした挙げ句、俺達の忠義の志までねじ曲げるとは、絶対に、絶対に許さん!何が王家への忠義だ!俺は二君には仕えぬ!
[そんな事、言っても、そう、解釈、されちゃった、んだから、仕方ない、よね]
仕方なくない!
[じゃあ、そろそろ、次の、世界に、送る、からね]
頼む!もう一度、もう一度だけチャンスをくれ!アルスの野郎に一矢報いないと、死んでも死に切れん!
[大丈夫。もう、死んでる、から。
じゃあ、適当に、送る、からね。それでは、良き、人生を]
待て!待ってく――
[あー、ちょっと、だけ、面白かった、かな?
あ。3200ポイント、程度じゃ、チート選択、できないって、伝え、損ねちゃった、な。ま、いっか。えっと、彼の、次の世界、は……]