第三百五十二話『あいつらにゃん』
第三百五十二話『あいつらにゃん』
《誰にゃん?》
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「さぁ。
この子を連れて、
さっさ、と行くんだ!」
「でもそんなことしたら、
あなたが」
「おれ?
おれのことなんて、
どうでもいい。
それよりも、この子だ。
なんとしても、
救ってやってくれ。
「……判りました。
あなたの覚悟、
決してムダにはしません」
「君も気をつけて」
「はい。
……ではっ」
たったったったったっ!
「やっと行ったか。
さてと。
それじゃあ、
おれも逃げるとするか。
あの配管の中を通っていけば、
無事に外へ出られるはずだ。
一緒に行くことも考えたが、
あまりにもせまいうえに、
三にんもいたんじゃな。
しかも、
ひとりは子どもだ。
脱出先としては、
あきらめざるを得なかった。
……ふふっ。
正直、今回ばかりは、
さすがにおれも困ったよ。
ふたりを見捨てて、
ひとり逃げ出すわけにも、
いかず。
かといって、
ほかに逃げ場もない」
『進退ここに極まれり』
「の悲しい状況だったからな。
しかし今や、
その不具合も解消された。
これで安心して外に出られる。
自分だけが、じゃない。
階段を昇っていった、
あのふたりだってそうだ」
『あいつら』
「のお仲間が、
なぁんの考えもなしに、
——まぁ当たり前といえば、
当たり前なんだが——
壁の一部を、
たたき壊してくれたおかげで、
新たな通路が開けた。
あそこを通って、
運良く、
屋上まであがれたのであれば、
ヘリで、
助けてもらえる可能性は、
極めて高い。
どちらも、
めでたし、めでたし、だ。
……やばっ。
つまらないひとりごとなんて、
するもんじゃないな。
いつの間にか、
『あいつら』
が姿を現わしていた。
大急ぎで退散だぁっ!」
『おぉいっ!
追いかけてきたい、
っていうのなら、
追いかけてきても、
かまわないからなぁ!』
たったったったったっ!
ぞろぞろぞろぞろぞろ。
ぞろぞろぞろぞろぞろ。
「よしよし。
うまくいった。
大勢こっちへやってくる。
……そのほうがいい。
できれば、ひとり残らず。
みんなが幸せになれる。
だってそうだろう?
あのふたりは、
追われることなく、
救い出されるし、
おれは必ず、
逃げおおしてみせる。
『あいつら』
だって、そうだ。
陽の光を浴びれば、
今度こそ、あの世行き。
死者が本来、
迎えるはずだった、
安らかな日々を、
送れるようになる。
ほら。
いいことづくめじゃないか」
《うまく逃げおおせたかどうかは……誰も知んにゃい》




