表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/62

十五人目 家族と2

「おーい。クラ。おかえりー!!」

 

 俺達家族は、光竜の山と呼ばれる山でキャンプ中だ。山の山頂で、俺の姉が手を振っていた。それに対して、俺も手を振り返す。

「ただいまっ!」

 そう言って、俺はブロンテ―の背を蹴って空を飛んだ。

 いや、俺の背中に翼はないから、これは落ちてるだな。うん。


「おいっ?! クラルス?!」

 焦った声でブロンテ―が俺の名を呼ぶが、これぐらいの高さで俺がどうにかなるわけがないだろ。魔法を使うまでもない。俺はスタンと小さな着地音で降り立った。

「姉ちゃん、今日の夕飯なに?」

「父さんがサラマンダーを狩って来たから、それをステーキにするって」

「やりぃ! 竜族の国の肉って、本当に美味しいの多いよな」

 サラマンダーは火を纏った大きなトカゲだ。外見は竜族に似ているけれど、知能は低いし空も飛べないので根本的に違う。そして人間の国には生息していない。

「クラ、帰ってくるなり夕飯の事しか頭にないのか?! というか、ブロンテ―様が地面に降り立つまで待てないの?!」

「待てない。だって、本当に腹が減って死にそうだもん。あっ。そうだ。ブロンテ―と一緒に渡り鳥も狩って来たよ。燻製にして明日たべようぜ」

「……渡り鳥って、ブロンテ―様の足に引っかかってるやつ?」

「そうそう。名前、何て言ったかなぁ。でも前にと父さんが狩ってくれた時、美味かったってのは覚えてるんだ」

 頭は鷲だけど、胴体がライオンっぽくて足も鷲っぽい鳥だ。大きさがそこそこあるから、食べる場所が多くて好きだ。でも、この鳥も人間の国にはいないんだよな。


「グリフォンだ馬鹿。鳥というより、幻獣種だろ」

「そうなの? 知らんけど、本当に旨いから、食べてみなって」

「お前の頭の中には夕飯しかないのか!!」

「まさかぁ。ちゃんと色々考えてるって」

 血抜きはしておいたけど、まだ解体して、お肉ちゃんにしないといけない。さらに燻製にするなら、時間がかかるから夕飯には間に合わないぐらい分かっている。……一部、甘辛く焼き鳥にして今日食べてもいいよな。

「そっちは何してたんだよ。父さんも一日中サラマンダーと追いかけっこしてたわけじゃないだろ?」

「あー……。向こうを見てみれば、何が起こったかはよく分かるよ」

 姉ちゃんに言われた方を見れば、何頭か竜族が倒れていた。一応生きてはいるっぽいけれど、力尽きているようだ。


「いや、全然分かんねぇ。何、あったの?」

「最強夫婦VS竜軍の模擬戦? かな?」

「ええ。母さんと父さんが戦ったの? 何それ、見たかった!」

 父さんはまだしも、母さんが戦うところはレアだ。なぜなら、大抵は父さんが全て排除してしまうからである。

 父さんがえげつなさ過ぎて、母さんが止めるというのが日常だ。

「一応私たちバカンスに来ているわけじゃない? だけど魔宝石を作れっていう話になってね」

「ふーん。母さんなら、いいよーって引き受けそうだけどな」

 よっぽど忙しくなければ、母さんにとっては手間ではないから、魔石作りを断ったりしない。イチャイチャしている所を邪魔でもされたのだろうか? いや、その場合、キレるのは父さんだけだな。

「うーん。最初はそんな雰囲気だったけど、父さんが休みの日まで仕事をするのを反対してね。そこまでは母さんもまあまあって父さんをなだめてたわけよ。だけど一頭の竜がね、母さんを独り占めする父さんが悪いと難癖付けて決闘を申し込んだんだよね。商品は勿論母さん自身」

「……それは、アウトだな」

「母さんもね、久々に商品扱いされた時は、まだ需要があったんだなんて恍けた事言っていたけど、更に他の竜が若い娘とか無属性の赤子も商品にしたらどうだなんて悪乗りした所で、母さんの方が怒っちゃって」

「いや。怒るだろ。普通」

 その場にいなかったから冗談の範囲だったのか、本気だったのかは分からないけれど、冗談にしては悪質過ぎるし、ましてや赤子に聞かせて良い話ではない。

 それにうちの末っ子はちゃんと言葉、分かってそうだしな。どう考えても情操教育に悪すぎる。


「根性叩きなおすという事で、母さんは父さんと一緒に全員を倒した後、コンコンと説教して、あの屍累々状況が出来上がったというわけ。一時間耐久説教はさすがに可哀想になってきたから、母さんの許可を貰って、一人一個参加賞として魔石をあげておいたよ」

「あー。あのお供え物みたいに置かれた石がそれね」

 姉ちゃんは甘いと言いたいところだけど、参加賞渡すより治療してやれよと思ったので、まあこれはこれでいい薬になっただろう。

 俺の家族に手を出したら、性根を叩きなおすまでコテンパンにされる。子供だろうと容赦ない。むしろ、説教時間は子供の方が容赦なく長い。……母ちゃん普段は温厚だし、早々起こらないけど、スイッチが入ると父さんですら正座させられているしな。


「ちなみに、母ちゃんの下僕になりそうなやついた?」

「……ほぼ全員、なりそうで怖い。竜王様に目を付けられなければいいけど」

「お前の家族、色々終わってるよな」

 幼馴染よ、終わってる言うな。

 でも知ってる。どんどん母さんと父さんが友人やら下僕やら協力者やら増やしていってる事を。王族でも貴族でも、芸能人でも何でもない一般人なのに。

 いまだに週刊誌も新聞も、実名報道できないけど、もう誰か一発バレだってぐらい有名になっている。どこに向かっているかなんて俺が聞きたい。

「まあ、いざとなったらブロンテ―が竜王に代替わりして何とかしてくれるって。うん。友達大事」

「お前、都合がいい時だけそういう事言うな。俺の側近やるっていう話忘れていた事を忘れたわけじゃないからな」

「あっ。そうだっけ?」

「さっき話したばかりだろ!! この馬鹿っ!!」

「仕方ないじゃん。俺、絶対側近とか向いていないし。言われなくても、自分が馬鹿だってことぐらい知ってるし」

 ちゃんと俺は俺の事が分かっているので、自分が馬鹿だという事も分かっている。

 どうしても難しい事とか、細かいこととか考えるのが苦手だし、目の前の事に夢中になりやすい。興味ある事は覚えられるんだけどなぁ。

 

「俺ができることって、せいぜい料理人ぐらいじゃね?」

 飯の事だけはちゃんと頭に入ってる。狩りも料理もお手の物だ。

「……分かってる。お前が馬鹿だという事は。十分に。だから、俺がお前の傍にいてやるんだよ。料理人は老後の楽しみにしておけ」

「何、勝手にブロンテ―様がクラの将来決めているんですか?! この馬鹿を貴方が見る必要はありません。速やかにお引き取りを。彼には荷が重すぎます」

「さりげなく酷いな、おい」

 その通りだけどさ。いや、幼馴染のお前が断る必要もなくない?

「ついでに貴殿も私に仕えないか? 離すな危険とお触れだしてやるぞ?」

「えっ」

 何で今ときめいた。

 時折幼馴染の行動が良く分からん。何だ、コイツ竜族が好きなのか? 確かにコイツが好きなセイレーン族と同じで竜族も綺麗な鱗持ってるしな。

 うーん。鱗かぁ……確かにカッコイイな。分かる気がする。うん。


「……考えておきます」

「二人がかりなら、何とか制御できると思わないか?」

「制御って、俺、そんなに危険?」

「「うん」」

 そうかなー。悪いことなんて考えるだけの頭もないし。そんな危険じゃないと思うけどなぁ。


「あれ? クラ、帰ってきてたの? あっ、ブロンテ―さんもお帰りなさい。夕飯、もうすぐできるから待っていて下さいね。今日は、お客が増えちゃったから、ちょっと準備が遅れちゃって」

「お客?」

「ほら、あそこに居る竜族の方々。流石に夕飯も出さずに返すのは可哀想な気がして。今、アクアさんが追加でサラマンダーをさばいてくれているんだけど」

 ……飯提供するんだ。

 まあ、母さんらしいか。たぶん説教したから、その前の事はサラッと水に流してしまったのだろう。それはいつもの事だから別にいいけど、俺の取り分減りそうだなぁ。仕方がない。

「母さん、渡り鳥も使っていいよ。また明日狩ってくるから、その時は燻製にして」

「ありがとう。助かる」

 もしかしたら、明日そこに転がっている竜がお返しの品として沢山狩ってきてくれるかもしれないし。


「そう言えば、アキは?」

「シルフィさんと散歩中だよ。竜達と母さんが喧嘩した辺りで、シルフィさんが子守をかって出てくれて」

 シルフィさんと一緒なら人攫いなんて絶対できないだろうし安心だ。それに竜の背中で散歩なら、今頃ぐっすり寝てるかもしれない。

 竜の背中って気持ちいんだよなぁ。箒にはない安定感というか、安心感というか。俺も小さい時は、よくグノーじいちゃんとかに遊んでもらった気がする。


「コハル、解体終わりましたよ」

「アクアさん、ありがとうございます」

 爽やかな笑顔で父さんが現れたけれど、顔に返り血が付いている。母さんも動じてない所が、凄いよなと思う。この中ではブロンテ―が一番ビビってるし。いや、お前、最強と呼ばれる種族の竜だよな? そんなんで大丈夫かよ。俺より頭いいけど、心配なんだよなぁ。

 ま、何とかなるか。

「母さん、焼くの手伝うよ」

「あ、私も手伝う」

 

 うん。今日も俺達家族はとっても平和だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ