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十四人目 参列者と3

 ……マジかぁ。


 小春が呼んでくれた結婚式場に来た俺は、どんどん集まる参列者に、改めて小春の影響力の強さを知った。

 あっちは竜族、こっちはアイドル、そこに居るのはフェンリル族のプリンセス。向こうには、人工的に塩湖と湖を作って、それぞれの種族に合うようにもして、ケルピー族やセイレーン族も呼んでいるらしい。妖精族の女王に、天使族の女王が空を飛び、ノーム族が酒をしこたま飲んでいる。って、ノーム族まで知り合ったのかよ。いつの間に。……これ、そういう伝手が欲しい人にはよだれもののパーティーだな。


 ちなみに人間側は、俺と、夏鈴と蒼汰。それに鷹藤東だけのようだ。鷹藤家は伝手は欲しがりそうだけど、あの甥はそういう頭が全くないから鷹藤家としては残念な事だろう。いや、じりじりと知り合いになれないか考えてるな。……ぶっ。アレ、本当に成人男子かよ。脳の中、魔法の事しか考えてないぞ。

「結良先輩、こんにちは」

「夏鈴ちゃんもこんにちは。大分と元気になったみたいだね。今日は彼氏君と出席?」

「はい。おかげさまで。紹介しますね。私の夫のラピスです」

「こんにちは」

 夏鈴の隣に立っていた紺色の髪のエルフ族の青年が挨拶をしてきた。それにしても、こっちもエルフ族と結婚かぁ。

「こんにちは。そっか。彼氏じゃなくて、もう結婚していたんだね」

「そうなんです。私の体調がアレだから、もう少し落ち着くまでは結婚式は止めておいて、とりあえず籍だけいれたんですよ。優良物件を二度と逃がしたくなかったもので」

 優良物件その一が小春だった子だけれど、ちゃんと次の相手と心を通わせられたようだ。夏鈴は小春とは違って人間の時間を生きて死んでいくだろう。だとすればエルフ族に任せずに、ぐいぐいいかなければ結婚できずに生を終えてしまうに違いない。

「そういえば、結良先輩、撮影しているんですか?」

「そうだよ。可愛い小春を映像として残しておきたいし、それに出席者から小春へのメッセージも残しておいてあげようかなって思ってね」

 夏鈴は俺の隣を飛んでいる、撮影機に気が付いたようだ。これだけ知り合いがいると小春も全員とゆっくり挨拶するのは大変だろう。だから代わりに、メッセージを貰う事にしたのだ。


「結良先輩の可愛いかぁ。あまり小春を泣かせないで下さいよ。折角今日は、ガッツリメイクしたんですから」

「もしかして夏鈴ちゃんがしてあげたのかい?」

「そうですよ。元々メイドをやっていたから、奥様の化粧とか手伝っていましたし。私自身も化粧するのは好きですしね。小春の素朴なすっぴん姿も悪くはないけれど、折角の晴れ姿だし、今日はあのお色気たっぷりのエルフの横で主役はらないといけないんですから、きっちりめかし込まないと」

 そうなんだよなぁ。あのエルフの横で主役をはるなら、女性はメイクという武器を持たないとやってられないだろう。俺らは小春が可愛くて仕方がないけれど、世間一般の美の軍配はエルフ君の方に上がる。

「なるほどね。じゃあ、夏鈴ちゃんとラピス君だっけ? 小春にメッセージお願いできるかな?」

「分かりました。小春、結婚おめでとう。夫婦喧嘩した時は、とにかく逃げてね。私もかくまってあげるから」

「カリン?!」

「だって、あの最恐のエルフ族よ? まともにやり合うべきではないし、温厚な小春が怒るぐらいだもの。さっさと逃げた方が、絶対相手にダメージを負わせられるわ」

 確かにそうだろう。

 小春が手元からいなくなることが、彼にとっての一番のお灸になりそうだ。

「それならいっそ、この出席者の家を転々としてもいいかもね」

「ええ?! コハル、アクアを捨てないであげてっ!!」

 ぶぶっ。

 マジか。ラピス君、そこでそれ言っちゃうか。

 実際、捨てるとしたら、そっちになるんだろうなと思う。しかも質が悪いのは、小春は捨てるとなれば怒りからではなく、エルフ君の事を想って捨てることを選択するところだ。うん、想像したら何だか不憫になってきたぞ。

 世界をまたにかけた追いかけっこという名の夫婦喧嘩まではアリだけど、捨てる捨てないの話になったら、ちょっと笑い話で済まなくなるかもしれない。


「まあ喧嘩の気が済んだら、俺が双方の言い分を聞くから、ちゃんと訪ねてくるようにね」

 俺としては小春贔屓にはなってしまうけど、それでも一応は双方の言い分を聞いてあげよう。小春のみょうちくりんな思考回路が引き起こした喧嘩なら正すべきだろうしね。

「さてと。今度は蒼汰君の所にてもいこうかな? どこにいるか知ってる?」

「ああ。たぶん、叔母さんと会っていると思うから、塩湖の方へ行けば会えると思います」

「叔母さん、セイレーン族なんだっけ?」

「はい。小春とお見合いをした事もあるので、正確には叔母というわけではないんですけど」

 そういえば、セイレーン族は結婚前は無性だったなと思い出す。

 とりあえず、その叔母さんからもコメントをもらえたら丁度いいので、俺は塩湖の方へ向かった。


◇◆◇◆◇◆


「あっ、先輩。こんにちは」

「こんにちは。あれ? 少し日に焼けた?」

 先ほど夏鈴に会った為、同じ顔をしている蒼汰の肌がいっそう黒く感じた。

「最近外回りの仕事を任される事が増えたんですよ。セイレーン族との貿易交渉とかは必ずついていっているので。日差しが強い場所に行くから焼けるんです」

 元々執事の仕事がメインだったが、セイレーン族との太い人脈がある事と、他種族の言葉を覚えるのが早いために、蒼汰は商業の勉強をさせられているようだ。

「蒼汰、私に紹介してくれない? 先輩と呼んでいるという事は、色々お世話になっている方なんでしょう?」

 塩湖の中から顔を出していたセイレーン族の方が蒼汰に声をかけた。喋り方の所為で一見女性のようだが、鱗に覆われた胸は平だ。

「あっ。この人は俺が前に身を寄せていた孤児院の先輩で、今は宝石商をやってるんだ。ほら、小春の時にお世話になった人だよ」

「ああ。あの時の。こんにちは。初めまして。私は蒼汰と夏鈴の親戚にあたる、ガラノーというの。よろしくね。そして以前ご迷惑をかけてごめんなさいね」

「いえいえ、俺は何もしてませんよ。あの時頑張ったのは、小春ですから」

 次点でエルフ君だとは思うけど、やっぱり連れ去られた本人が、一番頑張っただろう。自分が売られない為に誘拐犯と交渉するとか、中々できることじゃない。小春の事だから、泣いてばかりという事はないとは思ったけれど。でも誘拐犯を誑かしたと聞いた時はさすがに驚いた。


「でも貴方がいなかったら、あんなスピード解決はできなかったと思うわ。宝石商の伝手を使って、スックラー様の方に怪しい人の情報を事前に流しておいたんでしょう?」

「さて。どうでしょう」

 少々懇意にしている人外の宝石商に、スックラー様が魔石化した宝石に興味を持っていると情報を流したのは事実だけれど、結局そこから先に動いて下さったのはスックラー様で、小春を実際に助け出したのはエルフ君だ。

 つまりは俺を含めた、この縁を握っていた小春が凄いという事だろう。

「今度そちらで宝石を見繕ってもらっていいかしら? 人魚族の子でネックレスを贈りたい子がいるの」

 どうやら、ガラノーはいい人魚を見つけたようだ。幸せいっぱいのオーラが漂ってくる。

「ありがとうございます。そうだ。今日は小春に一言ずつメッセージを集めているんです。二人共、一言ずつもらえますか?」

「いいわよ。小春ちゃん、上手くいくと思っていたけど、実際結婚できて良かったわね。お幸せに」

「小春、よかったな。幸せになれよ」

「以上、巨乳大好き蒼汰君とその叔母さんからでしたー」

「って、先輩。何で、そのネタ知っているんですか?!」

「えっ。蒼汰、胸の脂肪なんかが好きだったの?」

 俺が話を纏めると、蒼汰が真っ赤な顔をして怒鳴ってきた。この顔でまだ童貞とは……。いやでも、あそこに三百年ものが居るからなぁ。

「違うよ。俺は尾フェチで――って、何叔母さんに言わせるんですか?!」

 知ってる。セイレーン族の中で育ったせいで、尾フェチになっちゃって、だからこその童貞なんだよな。人間には尾がないし。小春にどんな人が好きって聞かれて、セイレーン族である事を誤魔化す為に、巨乳好きって言って白い目でみられたって心の中で落ち込んでる声、すっごい聞こえてきてたし。

「じゃあ、そういう事で。これを見れば、小春に長年の勘違いも分かってもらえるよ」

「うわ。嘘。今のも録画してるんですか?!」


 相変わらず、蒼汰は面白いなと思いつつ、俺はフェンリル族を見つけて声をかけに行く。

「こんにちは、ヴィオレッティ様にスックラー様」

「あら。コハルちゃんの先輩じゃない。お久しぶり」

「あれから首輪の具合はどうですか?」

「問題ないわよ? ちょっと最近太って心配だったけれど」

 そういうスックラー様は、元々毛がもこもこしているので分かりにくいが、若干ふっくらされた感じもする。特にお腹辺りが。

「今、妻は身重なのだ」

「そうだったんですね。おめでとうございます」

「ありがとう。今年の夏には生まれる予定だ」

 どうやら小春が最後の一押しをして結び付けたカップルは、幸せいっぱいのようだ。


「また子犬たちの赤ちゃん首輪をお願いするわね」

「はい。お待ちしております」

 フェンリル族は赤子の時に一度記念の首輪を作る習慣がある。これは小春も混ぜて作った方が喜ばれるだろう。

「今日は小春への皆様のメッセージを集めているのですが、一言お願いできますか?」

「いいわよ。任せて。んんっ。コハル、先にママになるから、今度は貴方の番よ。いいママ友になりましょう?」

「あー、おめでとう。君のおかげで俺らも幸せになれた。何かあったら力を貸す。いつでも言ってくれ」

「ありがとうございました」

 あまり子を急かす言い方は人間は好まないけれど、フェンリル族ならではのお祝いの言葉だから、小春も分かるだろう。何より二人の雰囲気はとても優しいものだ。


 さて、次は何処に行こうかと思った瞬間、会場内で大きな音楽が鳴った。

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