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十四人目 参列者と1

この話は『十三人目 魔術師と』の直後の時間軸です。

リクエストの2.先輩との話、6.お見合い相手のその後(馬ファイブの人気っぷり含む)、7.女王様と魔石職人の話が含まれる内容となります。

 初めて受けた魔術師試験で、私は無事魔術師の資格を得ることができた。

 これで魔石職人K少女は、魔術師K少女と週刊誌でも書かれるようになるはずだ。大学などを卒業していないので異例は異例だけれど、私が魔術師として何かを成し遂げた時は魔術師の手柄となるはずなので、そのうちこの魔術師に毛嫌いされている状況も何とかなると思っていた……思っていたけれど。


「『最強の人間K少女、最恐のエルフの怒りを止める! 愛は世界を救う!』って、ああああ。どうしてこんな記事が新聞の一面に。人間は平和ボケしすぎている……」

 しかもアクアさんと私が抱き合っている姿の写真が大きく載っているのを見た瞬間死にたくなった。いや、キスシーンを全国どころか全世界にばら撒かれるよりはマシだけれど、それでも週刊誌ではなく新聞に載っているというのが痛い。しかも一応一般人だから目元に黒い線を入れてもらえているけれど、逆に悪いことをしているかのようで居たたまれない。もういっそ、私だけ消してくれ。私の写真なんて、だれ得だ。

 それに中途半端な写真を載せるしかない一般人だと認識してくれているのなら、そもそも記事に取り上げないで欲しかった。

 新聞記者よ。他に事件はなかったのか?!


「いいじゃないですか。これでコハルは私の妻だと、全世界が知るでしょう。それでもちょっかいを出してくる輩は、馬に蹴られればいいんです」

 確かにこの新聞には公開処刑内容が詳細に書かれている。決め手の言葉は『好きです。結婚して下さい』で、大切な事なので二回言ったと書かれているが、告白を二度も繰り返させられた者としては、色々居たたまれない。しかも文字に起こされると、色気も何もない。もう少しプロポーズの言葉を捻れば良かったかもと思うが、試合は既に終わり、私の手には脳内が花畑化しているアクアさんが残った。

 うん。ハッピーエンドな気もするけれど、何か違う気もする。というか、アクアさんの浮かれっぷりが怖い。私がアクアさんの妻だと全世界が知っても何も良い事などないと思う。しかもこの新聞、アクアさんの事を最恐とか書いて、アクアさんの規格外の美貌とか素晴らしい魔法の力とか良い部分を色々書ききれていないから、最終的に私が妻になって良かったね的なまとめになっている。いや、違うよ。アクアさんは本当なら私よりずっと素敵な奥さんを捕まえるべきエルフ族だったんだよ。

 そのうち新聞に写ったアクアさんに恋した女性が『貴方に、アクア様は似合わない!』とか言いに来たりするんじゃないだろうか。もちろん折角掴んだ妻の座を譲る気はないけれど、ですよねーと同意してしまいそうだ。


「でも最強の人間って……。確かにアクアさんの暴走を止めたけれど、話を盛りすぎだし。こんな題名付けたら、皆冗談だと思いそう」

「盛りすぎではないですよ。先輩から聞いたんですけど、カセット放送誌? という魔道具の生放送版が事前に売られていて、コハルの試験の様子をリアルタイムで見ていた方から凄い反響があったと言ってましたよ」

「は?」

「一次試験だけでも最強じゃないかって話題になっていたそうです。その上で三次試験の放送が流れた時は、全世界のお茶の間が注目してバカ売れだったとか。何度も何度もコハルが戦わされた時は腹が立ちましたけど、コハルの美しい戦いに皆が胸を熱くしたと思うと、今となってはいい思い出な気もします」

 マジで?

 えっ。確かに凄い数の撮影機が飛んでいるなと思ったけれど、生放送なんてされていたの? というか一次試験は映像として流してもいいものなの? そもそも、ただ光と闇と風の玉を一時間作っているだけだから地味すぎて、見ても何も面白くなくない? みんな暇なの?


 アクアさんからもたらされた衝撃事実に頭を抱えたくなった。

「ねえ。最初の試験官、もしかして放送の事を知っていてあんなお題だしたとか?」

「みたいですねぇ。彼は連れ去りとは大きくかかわってなくて、全国放送で恥を書かせてやれと思っただけとか。ただそれをうまく利用しようとした魔術師がいてああいう騒ぎになったようで。マフィアと繋がっていた人達はしかるべき機関に引き渡しておきましたから、もう大丈夫です」

 私に恥をかかせようとしたのに、最終的に全国のお茶の間に『殺さないでくれ』と自分が命乞いする姿が放送されるとは……魔術師ならきっとプライドも高いだろうと思うと、少し同情する。人を呪わば穴二つだ。私も気を付けよう。

「ただ全世界放送されてしまったので、またしばらく周りが五月蠅いかもしれませんね。私という婚約者がいるので、以前よりはマシだとは思いますが」

「あー……」

 新聞に『無属性の少女』と思いっきりバラされた時の世界の反応は凄すぎた。お外怖いになっていた時期もあったなぁと思い出すが、あれがもう一度となると確かに嫌だ。

「記者達との話はついているので、無理な取材をしてくる人はいないと思います。憶測だけで悪意ある記事を書くような記者も、もう二度と現れないようにはしましたし。でも油断はできませんからね」

「へ? 二度と現れない?」

「話し合ったんですよ。最終的には慰謝料を払うから許してくれと、こちらに理解を示してくれました」

 ……それは本当に話し合いだったのだろうか。

 色々嫌な憶測が頭をよぎったが、終わってしまった事だし、変な事を書かれないのはありがたいので、スルーする事にした。大丈夫。今アクアさんがここに居るという事は、殺人事件は起こってないという事だ。


「あの、ちょっと考えていたんだけど。もしアクアさんが良ければ、引っ越しとかどうかな?」

「引っ越しですか?」

「こうやって新聞や週刊誌にのるたびに凄く周りもうるさくなるし、できればこういう記事を誰も読まないような田舎に行ってもいいなと思って。魔法も上達したから、アクアさんの故郷みたいな自給自足が強い生活も可能だろうし。それに魔術師の資格があればどこでも生活できるし」

 しかも今のアクアさんの話を聞く限り、私のキスシーンも生放送されてしまった可能性が高いのだ。本気で恥ずかしすぎて、しばらくは引きこもりたいぐらいだけど、そうもいっていられない。

 魔術師になれば、魔道具を作って販売もできるし、魔石作りだってやりたい放題だ。でもまずは商売を始めないとお金は入ってこない。そしてお金がなければ、生活ができないのだ。

 だとすれば、誰も私の事を知らない新天地へ移るのもありだと思う。

「いいですね。そこに、私達の新居を建てましょう」

「わ、私達の新居……」

「はい。これからたくさんの二人の思い出を重ねていく場所です」


 私達という言葉に、私はドキリとする。

 そうだ。結婚するなら、これからは離れる心配はないのだから、共有の帰る場所を作ってもいいのだ。私だけの家族の居る家。それは生まれて初めてのもので、想像するだけでドキドキする。

「そういえば、アクアさんの仕事は護衛だよね。だとすると、家を建ててもちゃんと帰れってこれる?」

「大丈夫ですよ。基本は転移魔法を使って移動しますし、ちゃんと定時で終わる仕事を選びます。長期になりそうなら、コハルごと移動しましょう」

「は?」

「そして仕事が終わったら一緒の家に帰りましょうね」

 仕事に妻を連れて行くってどうなのだろう。

 もちろん本当にどこまでも一緒というわけではなく、どこかのホテルとかに私は泊って、そこで仕事をする事になるんだろうけど。私自身が転移する魔法はどうしてもうまく使えないけれど、道具を手元へ転移させる魔法はできるようになった。だから仕事場所は何処でだって大丈夫だ。

 だから移動自体は問題はない。ただアクアさんの過保護っぷりに苦笑いするだけだ。こんなに過保護なのは新婚の間だけだろうとは思うけれど。

 でも。

「……一緒に帰るのはいいね」


 アクアさんと一緒の生活をして、一緒に帰ってお帰りなさいと言い合う瞬間が、私は結構好きだったりする。

「田舎に家を建てるなら、結婚式をするのも丁度いいかもしれませんね。竜族が現れても騒ぎになりませんし」

「へ? 結婚式?」

「はい。エルフ族は家に人を呼び、そこで結婚の宣言をします。人間の場合はどうするのですか?」

「あー。いや。お金がある人は教会に人を呼んで、神に宣言をするけど……あまり考えていなかったと言うか。お金もかかるし、私は親もいないので、籍だけいれればいいかなと――」

「駄目です。こういうのはちゃんとやりましょう。ウエディングドレスで着飾って、コハルは私のものだと宣言しておかないと」

 結婚式なんて全く考えていなかった。私はただアクアさんと一緒にいられれば問題ないので、籍だけ変えればいいと思っていたのだ。 


「勿体なくない? アクアさんがウエディングドレスを着たら、そりゃ綺麗だろうけど」

「私がドレスを着てどうするんですか。新郎は新郎用の正装をするんですよ。着飾った可愛すぎるコハルは誰にも見せたくないですけど、でも自慢もしたいですし、ちゃんと牽制もしておきたいんです。だから結婚式はしましょう?」

「牽制って。私と結婚したいと言っている人は、私の無属性の魔力に興味があるだけだよ? 私がどんな格好しても何も変わらないというか、むしろドレスが華美過ぎると痛々しい結果になるというか……」

 少なくとも自慢にはならないだろう。

 人妻になったという事は分かりやすいだろうけど。

「そんなわけがないでしょう? こんなに可愛くて、毎日連れ去られないか心配しているのに」

 ……アクアさんは痘痕も靨になっていらっしゃるようだ。

 目が悪くなったわけではないのなら、脳内お花畑が幻の私を見せているのだろう。……日に日に残念エルフ化している気がするけれど、しばらくしたら治るだろうか?


「それに、私達がお世話になった人に挨拶もしましょう? グノーをはじめとして、皆さん、きっとコハルが幸せな姿を見たいと思いますよ」

 そう言われれば、断りにくい。

 普段から美しすぎるのに、さらに着飾ったアクアさんの隣で結婚式とか残酷過ぎる公開処刑だけれど、でも色々お世話になった人に私だって挨拶はしたいのだ。確かにこういう機会でもないと、全員に会うのも大変だし、改まってお礼とかも言いずらい。

「分かった。あまり派手なのはあれだけど、新居を作ったらエルフ式で結婚式をやろう」

 折角だから、アクアさんの正装姿も見てみたいし。

 公開処刑になると思ってもそういう欲がでるのは、きっと私も脳内がお花畑になっているのだろう。でも幸せなので、しばらくはお花畑のままで居ようと思った。


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