表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/102

八話 つ、ついに。

 あれからさらに二週間がたち、卵は大きくなり続けた。

 現在スーパーの買い物カゴぐらいのサイズだ。

 もう俺では持ち運ぶなんて無理。重さは魔法による身体強化でなんとかなるけど、体格が足らない。

 仕方ないからあんまり離れないようにして自室に置いている。

 はぁ〜もう、卵の状態で大きくなりすぎでしょ。


 通常の卵は孵るまでおよそ一ヶ月ほどかかる。

 その間、常に近くに置いてずっと見守るのだ。まぁ卵だからって温めたりするわけではないんだけど。授かった人間がずっと離れていると孵らなくなってしまうそうだ。


 でだ。

 一ヶ月半たった俺の卵はというと。


 デカくなっただけでこれといった変化はない。

 ただただ、ぷるぷるに磨きがかかって、今日も元気に妹にツンツンされている。

 一体いつ孵るんだろうか。というかまだデカくなる気なのか? 卵なのに。


 そんなこんなで、家に引きこもらざるを得なくなり内職時間が増えた。

 実験中だった龍玉作成もなんとなく形になってきた。

 ロンの龍玉は直径十五cmほどのサイズだが、俺が作ったのはまだ五mmほど。このサイズでも魔力を抽出すれば自分の魔力くらいの量にはなる。ここからさらに倍ほどの大きさになったら装身具に加工したいと思っている。


 そして魔力が尽きたら皮の加工をしてみたり、金属の加工をして見たり。

 なんだか色々作っているうちに、だんだん手先が器用になっていく感じがしたから、なにかスキルを習得できているのかもしれない。


 といってもこの村にはステータスやスキルを鑑定するような道具はないので調べられないんだけど。

 王都や大きな都市だとギルドに置かれているらしい。登録したギルドで調べてもらうことができるんだそうだ。早く調べてみたいなぁ。



◆-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇



 卵を授かって二ヶ月ほどが立ち、最近では虹色が濃くなって、ぷるぷるとしていた外側が少し硬くなってきている。中もなんだか動いているようだし、そろそろ孵るんじゃないだろうか。


 それから二日、よくよく観察していたら、周りのぷるぷるが薄いが硬い殻のようになった。中から音も聞こえている。

 様子をずっと見守っていると、殻に小さなヒビ割れが入った。


「おおぉぉおお! やっと! やっと孵るんだね! ねぇみんな! 孵りそうだよ!」

 俺は大きな声で家にいる人たちを呼び寄せた。


 その間にもヒビは少しずつ大きくなっている。

 みんなが集まって、頑張れ頑張れと見守っていると、ついにその瞬間が訪れた。

 卵に一際大きなヒビが入った瞬間、まばゆい閃光が辺りをてらした。


「目っ、目があぁぁ、目がぁぁぁあ」

「まぶしいっ」

「きゃーっ」

「うわぁ!?」


 定番をやって見たけど誰にも突っ込まれない悲しみ……。まぁこれで反応されても困るんだけど。


 まばゆい光が治ったそこには



「…………黒い、鹿?」



 そう俺が言った瞬間、いきなりその黒い鹿は噛み付いてきた。

「痛い!? え、何この子凶暴!」

 草食動物特有の平たい歯でガジガジされている。痛い。黒い体の背に淡く光る青の斑点、美しく波打つ尾。そしてつぶらな瞳。めっちゃ可愛いのに、いきなり噛み付くとか! なんて凶暴!


「まぁ、なんて可愛らしいのかしら! ただなんの魔物かはわからないわね。」

「かわいぃのー、わたしフィリーネよ。よろしくね!」

「へぇ草食系かぁ。かわいぃなぁ」

 俺がめっちゃガジガジされてるのなんて、みんな気にしないのね! せめて母はもうちょっと気にしてくれても良くないかな!?


 三人の言葉に反応したのか、噛んでいたのは離してくれてた。そして


『おなかすいた。ごはん、ごはん、ごはん、ごはん、ごはん、ごはん。まだなの?』


 頭の中に直接飯の催促が響いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ