三話 第一の試練? 二
夕方近くなり、祠の近くへ戻って野営の準備を始める。
そう、野営! ちょっとわくわくする。魔法の練習がてら土魔法で釜戸を作る。
「うーん。ちょっと歪だけど、こんなもんでいっか」
そこへ 採取していたときについでに拾った木の枝を組んで、着火魔法で火を点け……消えたな。もう一回。……むむぅ、またか。生木だからかな? 点きにくい。
いいや、着火じゃなく火炎魔法で行こう。面倒になった俺は【ファイヤーボール】の威力を絞って薪にぶち込んだ。
ちょっと火力がおかしいけど、取り敢えず今度は付いた。いいんだ目的は達した。
ごうごうと燃えている火が少し落ち着いたら、鍋ごと持ってきた夕飯を温めよう。
ちなみに、この世界には魔力、そして魔法がある。殆どの人間が魔力を持っているが使えるかどうかはまた別らしい。俺は父母に教わって練習している。ハーフエルフってスペックもあって結構魔法は得意だ。生活魔法はもちろん、他にも色々と使えるようになった。
ここでは十二歳で仮成人となり、十五歳で成人となる。自立できるように早くから準備しておかないといけない。路頭に迷うとか嫌だからね。安定。これ大事。そういう事もあってかなり貪欲に色々教わってるわけだ。
それにせっかく転生したのだし、あちこち行ってみたいからね。寿命も長いはずだし。
あとは剣と弓も教わっている。剣はいまいち才能無いけど、弓はかなり使える。メインウェポンは弓だね。狩りなんかもする。最初はビビってたし、ウサギとか可哀相だしで吐いたりしてたけど今は慣れた。後は生きるのに必要ってちゃんと分かってる。現代日本でもそういう仕事してくれてる人が居たんだよね。畜産農家さんありがとう。
他に教わっているといえば調合とか植物についてとかだ。うちの両親は元々それぞれがソロで活動していたAランクの冒険者だった。だからこういう知識がかなり豊富。俺としても将来冒険者ギルドに所属するなりして各地を廻ってみたいから色々教えて貰ってる。
父は魔法剣士、母は魔法弓術士 兼 調合師で薬なんかも作れる。調合師っていうか錬金術師っぽいけど。魔法的力を付与した魔道具なんかも作っちゃう。アイテムポーチとかね!
おかげで冒険者をするのに知識に事欠かない。安全じゃ無いけど進路としては一番なりやすいかもしれない。準備も着々と進んでるし。
今はアイテムポーチの作り方と龍玉の作り方を教わってるところ。
龍玉は父の随獣である鋼龍のロンに教えて貰ってる。龍、ここでは東洋風の細長い体のドラゴンだけど(ロンはかなり小さくて六十cmくらいしか無い)、彼らは自らの魔力を玉に変えて貯めている。ほら中国の龍の絵で持ってるやつ。所持魔力が枯渇するとそこから使うこともできるって聞いて、人間でもできるか試し中。
余談だけど西洋風の竜も存在してるよ。
夕飯が温まり暖ををとりつつ食事をする。あー、一人キャンプ楽しい。
この辺は定期的に討伐隊が組まれて、危ない魔獣とかは駆除されてる。そもそも祠の近くにはあまり魔獣は来ないから安全だ。あの鱗からなんか出てるのかな?
そんなことを考えながら薪をぼ~っと眺めて、眠くなってきたところで火に土をかけて祠の中で毛布にくるまって眠った。