表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◆ひぐま通信◆

作者: 山田相州

沼に一匹のパンダが住んでいました。


なんで、パンダが沼に住んでいるかというと、シャケを食べるためです。


でも、沼にはシャケがいないのでしょうがなく、フナを食べています。


なんで、パンダがシャケを狙っているかというと、彼のお母さんが、ひぐま通信を読んでいたためです。


ひぐま通信というのはヒグマ向けの新聞です。


ヒグマはパンダより栄えているので、パンダのお母さんは少しでもヒグマに近づけるよう、子供の教育のために、ひぐま通信を購読していたのです。


お母さんは、あるコラムを読んで、ヒグマはシャケをたっぷり食べるから体が丈夫なんだと、考え、それ以来、子供にササではなく、シャケを食べるように指導しました。


でも、お母さんはシャケについてあまりよく知らなかったので、とりあえず息子を沼に放り込んでシャケをとるように教育しました。


息子はお母さんを喜ばせようと必死にシャケをとる練習をしました。


でも、沼にはシャケはいないので、いつまでもシャケはとれず、息子は毎日泣きながら、沼に住む、フナやザリガニを食べていました。


パンダにとってフナもザリガニもおいしくなく、息子は毎日、下痢をしていました。


お母さんは、いつまでたってもシャケを捕まえられない息子をふがいなく思い、たたいたり、けったりして教育しましたが、結局、息子は大人になってもシャケは取れませんでした。


お母さんはヒステリーを起こして、息子を見放して、行ってしまいました。


息子は一人のこされ、ササの食べ方もわからず、なきながら毎日、フナやザリガニを食べて、下痢をしていました。


ある日、一匹のやせたヒグマが、沼の水を飲んでいました。


そこで、彼は一匹のやせたパンダにあったのです。


「きみはなにをしているの?」


ヒグマは聞きました。


「シャケを取っているんだよ」


パンダは答えました。


「ここにはシャケはいないよ」


ヒグマは教えてあげました。


パンダはヒグマにシャケについて色々教えてもらいました。


シャケは海から川へさかのぼってくること、パンダは魚よりササを食べたほうがいいことなど、ヒグマ通信には載っていなかったことを色々教えてもらいました。


「きみは物知りだね」


パンダはいいました。


「僕はパンダ日報を読んでいたからね」


僕のお母さんはヒグマなのに、パンダのように健康になれるように、毎日、パンダ日報を読んで、僕にササを食べさせたんだ。僕はシャケには詳しいけど食べたことは無いんだよ。と、さびしく笑いました。


もう、僕たちは大人になったから、食べたいものを食べてもいいんじゃないかな、と、やせたヒグマは言いました。


でも、やせたパンダも、やせたヒグマもそれぞれ一回もササもシャケも食べたことがありませんでした。


そもそも、それらがどうゆうものなのかもまったく教えられていないので知らないのです。


やせたパンダは子供のとき以来、久しぶりに沼から出てきました。


やせたパンダとやせたヒグマはそれぞれが本来食べるもの、つまり、ササとシャケについて仲間のパンダやヒグマに教えてもらいました。


仲間は、やせた二人をとても馬鹿にしました。


やせたパンダとやせたヒグマは泣きながらササとシャケを探しました。


そして、やせたパンダは初めてササを、やせたヒグマは初めてシャケを食べました。


二人はあまりにおいしいので、なみだがとまりませんでした。


これからは、パンダはササを、ヒグマはシャケを食べようと二人は誓いました。


でも、二人は子供のころの楽しい思い出がなにもないのです。


それは、いくら大人になって自分の好きなものを食べても食べても二人で励ましあっても


うまらないのでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ