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生贄少女と彼女の転生騎士  作者: 遠出八千代
最終章 精霊島編
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第十八話

 

王城へと続く階段の手前、そこにクラウが立っていた。


 彼女は剣を地面に刺し、誰かを待っている様子だった。

 それは自分だろうかと、スノードは急に思えた。目の前の少女は以前どこかであったような気がしてならない。この島に来てから、そんなことばかりだった。デジャブのようなものを何度も感じてきた。

 彼女はやがて目線を上げるとスノードと目が合う。

 クラウは一瞬戸惑った様な顔をしたかと思うと、再び、無表情に戻る。

ただじっと自分を見るばかりで、何も言わない彼女にたまらずスノードは語りかけた。

 スノードは手に持っていた手斧を下げる。

 自分でもわからなかったが、彼女は敵でない様な気がしてきた。

「…君は?」

「……私は、……私は貴方と同じ…そう…生贄にされそうになったの。けどここまで逃げてきた」

 スノードにはそれが、彼女の嘘に思える。彼女はこの状況で敵対してくるわけでもない、何かこの島の事情や500年前の事情を知っている第三者なのかもしれない。その時ふと、彼女は味方なのかもしれないと考えがよぎった。海岸で起きた爆発と先程教会で見た立ち昇る爆炎を思い出す。あれのおかげで自分たちはここまで来れたのだ。


「もしかして君がさっきの爆発を?」

「…ええ」

 彼女はすこし、戸惑ってそう答えた。

 だが、スノードの話を肯定したっきりまた黙り込んでしまった。それから二人の間に沈黙が流れる。だが、スノードにも時間はない、後ろには亡霊たちが迫っている。ベルのこともある、ここで立ち止まっているわけにはいかない。彼は歩き出そうとする。しかし、その時、彼女が口を開いた。


「…ねぇ」

「なんだ?」

「…聖剣を破壊しに来たんでしょう。もうすぐよ。この階段を越えた先に聖剣はあるから。私はここで亡霊たちを食い止めなくちゃいけない」

「ありがとう…君は何者なんだ」

「そんなことどうでも良いでしょ。お願い、もう行って…」


「…そうか、すまない……さよなら、クラウ。あれ、俺…今」

 何故、その名前が出たのか。スノード自身分からなかった。

 これが前世の記憶なのか、もしかして彼女は自分の――

「早く行って!!!」

「わ、わかった」

 スノードが自分の考えに思いを廻らせていると、クラウは大きな声をあげた。スノードは慌てて階段を駆け上がりはじめる。

 その様子をクラウはただじっと見ていた。


 とうとうスノードは王城にたどり着いた。

 彼はよく手入れをされた中庭を抜け、城の扉を開く。

 辺りを見渡せどガランと人の気配もせず、薄暗い室内のみだった。城内は静寂とともに不気味な雰囲気を醸し出している。だだっ広いホールであったこともその不気味さに拍車をかけた。

 スノードが床に敷かれている絨毯の上を歩いていると、目当ての聖剣はすぐに見つかった。


 おあつらえ向きに大理石の床に一本の聖剣が刺さっている。その剣は聖剣と言うには、恐ろしく相応しくないオーラを発していた。あたりは淀んだ空気が流れ、濁色の気味の悪い色をしていた。

 そして、その聖剣の隣には、センペルビウムが立っている。

「お前は!」

「やぁ、スノード。遅かったね」

 彼は揚々と答え、ニカッと微笑みだした。

「センペルビウム!どうしてここに!」

「先回りしてたんだ。私は人の裏をかくのが得意だし、君達ならここまでたどり着くと思っていたから」

「ああ、そうかよ。だが、そこを通してもらう」

スノードは警戒して、手元の斧を構える。

「おっと待ってくれ。私は戦いが得意じゃないんだ」

 そういって彼は何のつもりか、両手を前に出し、手のひらを差し出した。


「なんのつもりだ」

「降参って意味だよ」

「意味が分からない。お前は何がしたいんだ!」

「…そういえば、城門でクラウに会わなかったかい?君のために頑張って戦ってるみたいだね。泣かせるよね、500年前の懺悔のつもりかな?彼女は彼女なりにこの事態を起こしたことに後悔していたしね」

「全部お前が黒幕じゃないか!!聞いたぞお前がこの島を支配する精霊王だってな」

「精霊王って…そんな大層なものじゃないんだけどな。私はただの使いっぱしりだよ。皆を生かすためのね。でも残念だよ。もう少しで、ベル様をこの聖剣に閉じ込めて。永遠に、一緒に暮らせたというのに」

 彼は邪悪な笑みを浮かべて、仰々しく言って見せた。

「お、おまえは!!」

「そうだ。ついでに500年前の話をしてやろう。君も知りたくないかい?あの時何が起きたのか…」

「何故、今それを俺に言う!!」


「え、何でかって?ただの時間稼ぎだよ。もう遅いけどね」

 するとスノードの背筋にはひんやりとしたものを感じる。自分は何をしているのか、本当にバカだ。

 スノードの後ろから亡霊の声がこだまする。それは声というよりも、鳴き声のような、風のビュービュー吹く音にも聞こえた。気付けば、辺りを青白い亡霊たちが取り囲んでいる。何百もの数の亡霊がその場を埋め尽くす。一人ひとりが違う人間だとわかった今だと、恐ろしく不気味なものに見えた。


「…な、なんだと」

「君が500年前と同様に馬鹿で助かったよ。それにしても結構かかったな…さすが元勇者様だ。最後に君に選ばせてあげるよ。…ベル様を助けたくはないかい?君がうんとうなづき体を差し出せば、彼女だけでもこの島から逃がしてあげるよ」


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