第十四話 プロローグ
クラウ、その手傷で良く無事だな。
このフランシア大陸まで逃げ切るとは…さすがは勇者だ。
これだけの傷を負いながらまだ生きているのだから…呆気なく死んだ我が弟子のスノードと比べ、本当に君はすごい。
とはいえ、勇者である君でもどうせ助からない。
腹に聖剣の複製品が深々と貫通しているんだ。
動けないだろう?こいつは特注品でね。
刺した者の魂をすぐに封じてしまうんだ。
今、君の魂はその剣に封印されつつある。君一人の力では外には出られない。
改造した本物は別だがね。
たとえ、この傷から生きながらえても、廃人になる。
なぜ、私を始末しないのかだと?
ああ、君は勇者として、これから広告塔になってもらうからだ。精霊王と相打ちになった勇者として、あの島にはこれから生贄が何人も送られるだろう。もしかしたら何百年もあの島は栄えるかもな。そういうわけで、殺すわけにはいかないんだ。それが彼の最後の指示だったしな。
なのに君ときたら。
私達がどれだけ計画を立てていたか、君も教えられただろう?
なのに裏切るとはな。
おっとそうにらむなよ。
君が逃げ出すのはある意味想定内だった。
結局、スノードがあんな風に死んでしまったからな。ただ、ここフランシア大陸まで逃げ切るとは思えなかったが…まぁ、丁度いいといえば、丁度いい。
じきこの領地は私のものだ、少し下見に観光でもするとしよう。
唯一の懸念だったランド家はこれで安泰だ。
例え私が死んでしまっても。
永劫に栄えるだろう。
それを自慢できる相手があの大陸にはもういなくなってしまうのが残念だが、問題ないさ。
魔王の娘も、スノードも、ロベリアも、あのセンペルビウムさえ死んだ。
何も知らないあの島の民には申し訳ないが、彼らも道ずれになってもらう。
私の一人勝ちだな。
おや?クラウ。
もう私の声が聞こえないのか…最後に言っておきたいことがあるんだ。
……クラウ、私はね、君に嫉妬していたんだ。
心底ほっとしているよ、こうなってくれてね。この剣の中で孤独に、未来永劫過ごすがいい。




