歌う聖女
「さぁさぁ、どうぞ、
聖女さま、ようこそ、ウィンドウの街へいらっしゃいました。
部屋だけは、ありますから、お連れの方は、お隣をお使い下さいませ。」
「ありがとうございます。とても助かります。」
「…」イチロウは、軽く頭を下げ、部屋へと入っていく。
「町長さん、娘さんのお話、聞かせていただけますか??」
「…(にこりと微笑む)
荷物を置きましたら、風車横の階段を登って
きていただけますか??
上で待っております。」
「わかりました!すぐに行きます!」
トントントン…
「はぁ…はぁ…
イチロウさんも、来てくれるの??」
トントントン…
「…上までは行くが、近くで待ってる。
何かあれば、呼んでくれ。」
「ふぅ~…体力ないなぁ…
いちばん上~到着!!
では、行ってきます!!」
コンコン、木の扉を叩く。
「どうぞ、聖女さま、…お入りください。」
小さな部屋には、真っ白なベッドに横になる、真っ白な女の子…
そっと、手をとると、脈は、ある。
体温は、冷たく、呼吸もしているが、息が荒く…
「娘は、2年ほど、寝たまま起きないのです。
この部屋は、風車の中央にあります。
風を呼び込むと同時に毒素を呼び込んでしまったようで、神官さまの浄化の儀式や、万能薬を試したものの、効果はなく、
しかし、ここ最近、少しずつ改善の兆しがみられるのです。
聖女さまが、この地に降り立ったからだと、思っておりました。」
「…わたしで浄化出来るなら…」
手をぎゅっと握り、おでこに当て、祈る。
…
…
きゅ。
…
一瞬だけ、手を握り返してくれたような…
「…娘さん、大きな変化は、なかった…
わたし…
…イチロウさん、お願いがあるの…」
次の日の朝、わたしは、風車の一番上、
娘さんの寝ている部屋の上、屋根の上。
街が、見渡せるばしょにいた。
「ん~いい気持ち!!
届いて…わたしの願い。」
わたしは、歌った。
風車が毒素を集めるなら、
わたしは、歌で浄化する力を集めよう。
みんなの心配を安心に変えよう。
さぁ、目を覚まして、
あなたの帰りを待っている人がいる…