小さな聖女
おまたせしました!
すぅ…すぅ…
「…寝てる。」
俺たちは、今朝、噂の街へ出発した。
馬を1頭つれてきて、ミオを乗せて、俺は、走った方が身軽で良いと思っていたのだが…、
「馬?!
乗ったことないです!!
ちょっと近付いてみる…「ブルルル…」
!!!
え…むっ無理ですっっ」
「…見っ見た目は、とってもカッコいいのですが…すぐには…ちょっと…」
…と、言うことで、ミオを前に乗せて、俺が後ろで支える…二人乗り状態だ。
抱き締めているような状態に、脈が少し早くなる。だが、しばらく走っていたところで、この有り様だ。
警戒心がないのか、男として意識されていないのか…両方か?…ふん。
思えば最初に出会った時から妙だった。
慌てて、ジロウを探して、かなり荒くドアを開けたと思う。だが、コイツは、びっくりは、したものの、優しく微笑んでいた。
普通は、獣人が、…しかも、強面の男の獣人が、荒く訪ねてきたら、うろたえ、怯え、こわがり、悲鳴をあげるだろう。斬りかかってきたり、物をなげたり、魔法が飛んできたり、怒るものもいるだろう。
獣人臭さを謝ると、風呂を用意され、調理済の食事まで用意され、いたれりつくせりという感じだった。…。
これまでは、生肉だったり、残飯だったり。人間からの扱いは、それは、ひどいものだった。獣人を奴隷とでも思っているのか。人として扱われることなどなかった。正直嬉しかったが、アイツの考えがわからず、警戒していた。
いつものように、うなされているジロウを見て、胸が苦しくなった。
もっと早く助けられたなら…
俺が側を離れなければ…
ジロウでなく、俺が拐われていれば…
…そう、後悔…していたら、体に、心に。澄みわたるような、歌声で、優しさが届く…心が震え…
胸が…苦しくなった。
このとき、きっと、落ちたんだろう。
ミオに。優しさに。
それからは、ミオに会うことが嬉しかった。
獣を多く捕ってきては、持っていった。喜ぶミオを見ると心が温かくなった。
ひとりで、森で暮らすミオが心配だった。
なにかと理由をつけ、様子を見ていた。
世間知らずで、優しすぎる聖女に、この世界の悪を合わせたくなかった。
時折、赤くなり照れている仕草が、
自分にも希望は、あるのかと、勘違いしそうになる。獣人のくせに、人を、聖女を想っている。
…
…今この瞬間は、俺の胸に体を預ける小さな存在を。…抱き締めることを…許してくれるだろうか。
…温かい。
途中、魔物が出ては、荷物を馬とミオの間で固定し、瞬殺して戻る…を繰り返し、
辺りが暗くなってきた頃、街が見えてきた。
…役得