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親子迷路 (風が強い日)  作者: 山口 浄
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温度差

色々とゴタゴタのあった毎日だったのだが、なんやら勤務する和食店でも、歯に物が挟まった様な日々が訪れる。

それは料理長と私の関係。


私には、全く当たり前の事をしただけの出来事なのだが、当の料理長は違った思いを持たれた様だ。

私への料理の指導は変わらずして下さるのだが、その時にも私に対して一歩引いた様な言い方をされる感じがする。

何だかお互いに遠慮をしあい、ギクシャクした関係に。


料理長にしたら、「借り」を感じではるんやろう。と結論に達した。


私個人的には、もっと厳しく様々な仕事を与えて教えて欲しいのだが、先日の一件の流れでお互いに間を取った様な雰囲気に。


仕事ではギクシャクしないのだけれども、何か私に対して一歩引いた感じになる。


「困ったな?果たしてどんな感じで此れから仕事をすれば良いのかな?」と悩む…。


そんな時に、料理長と私の二人が父親宅に呼ばれる。

それも仕事終わりに近づいた頃に勤務先に電話が有り、「仕事が終わったら直ぐに料理長と一緒に来てくれ。」とだけ言って電話を切った父親。


「何か有ったな?」と悟った私は、彼女との約束をことわり料理長と二人で私の車で父親宅へ向かった。


到着すると「難儀な奴が、いよいよ追い込み掛けて来よったんや。兄貴の方は、ウチに居るから大丈夫やけどな。息子が世話になっている弟さんの所に行く可能性が有るんや。そやから来て貰うて話をしときたかったんや。とにかく難儀な人間が来たり電話して来たら、先ずは息子に言うて。もしもアンタの家に来てたら息子がそのままアンタの家迄走りよるわ。電話が有っても、解らん、知らん。関係無い。で通したらええ。聞けたら相手が何処の人間か聴いといて。なるべくアンタの嫁さんと子供の外出は気を付けてな。」と言う父親。


震え上がった料理長。

「一体どうしたら良いのですか?」と、おどおどしながら父親に問うと、「まぁ、アンタの家族は大丈夫やと思うけど、もし来たら直ぐに息子向かうように言うてや。息子が走って、どつかれに行くからな。」と何とも勝手にえげつない事を言いよる。


まぁ世話になる料理長の為か?と諦めて頷く私に、「電話有ったら仕事放ったらかしにしてでも直ぐに走れよ。」と、事も無げに言う父親を、「その前にどついたろか?」と考えながらも仕方無く頷く私。


不幸中の幸いで、難儀な人間は料理長宅には何も無かったのだけれど、当然ながら料理長と私の何ともギクシャクした関係には拍車が掛かる事となった。


「迷惑掛けてごめんな!ホンマにごめんな!」と言う料理長に、「大丈夫ですよ。こんなんしょっちゅうやったから、駆け引きは分かっている積りですから。」としか返事が出来ない程に憔悴しきって居る料理長。

見ていて可哀想になる。

そして料理長の兄の事件は、佳境に入る事となる。


金と欲を混ぜ合わせて、自らの本来居るべき立ち位置を間違ったら、こんな結末を迎えなければ成らないのかと冷静に考えさせられる事件でもあった。



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