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2016/05/18 第四十九回 薄れゆく記憶の中で転校生は時をかけるさびしんぼう

■ 薄れゆく記憶の中で



 「薄れゆく記憶の中で」と言う日本の映画を見たのはもうずいぶん前の事なのだけれども、映画のタイトルとは裏腹に随分と記憶に残っている映画だったりする。


 細かいストーリーは書くだけ野暮という奴で、興味を持った人は観てもらうしかないのだけれど、早い話が思い出というのはほろ苦くて、甘酸っぱい。


 そして以外と美化されてしまうモノであるという話。


 青春の残酷さとか、失ったものは取り戻す事は出来ないとか、割と哀しい話だったりする。


 そう言う事は大なり小なり誰でも盛っていると思うのだけれど、記憶の不確実さが、思った以上に自分の知らないところで美化されていて、現実を見てしまった時には以外とショックであるかも知れないなどと思う。


 真実など知らない方が良かったと思うかも知れない。


 だけども、そこからまた遥かに時が流れた時に、ふと振り返ってみれば、その時点では大事な思い出に変わっているかも知れない。


 本当に不確実である。


 

■ 転校生


 大林宣彦監督の映画「転校生」を見たのはずいぶん前の事で、おそらく小学生くらいの時に、テレビの映画番組で見たのが最初であったと思う。


 転校生が実は幼なじみで、神社の石階段から二人で転げ落ちた時に、心と体が入れ替わってしまうと言う「性転換」ものである。


 今はきっと放送できないと思うので(未成年だった小林聡美の裸が映るので)DVDで見るしかないのだろうけれども、同じ悩みを抱えた思春期の少年少女の姿が瑞々しく描かれる名作である。


 中学二年に進級した時、私の通っていた中学はブレザーが制服であったのに、一人だけ学ランを着ている男子生徒とクラス替えで同じクラスになった。


 なんでも中学に入学する前には、一年後に父親の仕事の都合で転校する事が決まっており、学校に許可を取って転校先の制服である学ランを着ているのだと言っていた。

 

 入学して一年後であるから、二年への進級と同時に転校すると本人も思っていたのだけれども、なかなか父親の転勤が確定する日が来なくて、結局彼は夏休みも終わった八月に転校する事が報告された。


 最期の挨拶を担任に促されたが、馴染んでしまったクラスに別れを告げるのが哀しくて、彼は泣き出した。


 「なんだ。転校するのが嫌なのか?」


 すっと前から決まっていた事で、彼も納得済みだと担任も思っていたのだろうが、担任がそう言うと彼は頷きながら泣いていた。



■「もう何度目だ、時をかける少女」


 「時をかける少女」がまた映像化されるらしい。


 今回は連続テレビドラマらしいので、割と時間に余裕があるのか、原作のヒロイン中心の展開だけではなく、未来から来た少年からも物語が語られるらしい。


 さすがに一番最初のNHKで制作された「タイムトラベラー」は見た事がないが、原田知世版の劇場映画、南野陽子版の月曜ドラマランドで放送された二時間ドラマ版、内田有紀版のテレビドラマシリーズ、劇場アニメ映画版オリジナルストーリーは見た事あるのだけど、劇場アニメ映画版オリジナルストーリーの実写映画(アニメでヒロインの声優だった子が主演)と、元モーニング娘。の安倍なつみ版のテレビ単発ドラマは見た事がない。


 モノクロで撮られた角川春樹監督版の映画もあるのだけれど、それも見た事はない。


 「時をかける少女」と「セーラー服と機関銃」はリメイクされすぎ何じゃないだろうか。


 それだったら「ビアンカ・オーバースタディ」を映像化して欲しい。

 ちなみに派生で「お湯をかける少女」というのもある。



■なんだかへんてこ

 

 「さびしんぼう」と言う映画が好きである。


 富田靖子主演の映画なのだけど、これも「転校生」、原田知世版「時をかける少女」と同じ、大林宣彦監督作品。


 物語のテーマは「初恋」である。


 原作のタイトルがたしか「なんだかへんてこ」だったと思うのだけど、なんだかへんてこな子が登場する作品である。


 「初恋」のイメージと言えば、淡い夢のような儚い春に降る雪のイメージであって、地面に届く前に消えて無くなってしまいそうなものである。


 でも、確かに存在はした。


 永遠なんてものは存在しないという事は、誰でも解っているのであるけれど、変わっていかない、いけないモノもあると言う事も知っていると思う。


 それは人の思いであったりするのだけれど、それは受け継がれていくものでもなくて、全ては思った人の思いと共に消えていくのではないだろうか。

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