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2016/05/03 第三十四回 名曲と殺し屋と暗闇の中

  こんな夢をみた。


 どこからかゆったりとしたメロディーが流れてきている。


 耳をすませて聴いてみると、それは英語の曲らしい。


 どこかで聴いた事があるような気がするのだけれど、タイトルが思い出せない。


 日本人歌手もも歌っていたような気がする。


 懐かしく感じるのは、どうしてだろう?


 いつか見た映画の中で誰かが歌っている気がする。


 そうだ。


 あれはたしか「鉄道員」の中で高倉健が歌っていたはずの曲だ。


 やっと曲名を思い出した。


 「テネシーワルツ」という曲だった。


 私はそれを夜の繁華街を歩きながら、どこかの店から漏れてくるのを聴いているのである。




 こんな夢をみた。


 どこかの店から漏れてくる「テネシーワルツ」という往年の名曲を聴きながら、私は夜の繁華街を歩いている。


 ただ歩いているわけではない。


 私は殺し屋に狙われていて、だから逃げているのである。


 正確には私の友人である鈴木と、その恋人である陽子が狙われているのだけれど、彼らの逃亡を手伝っている私も同じように狙われていると言っていい。


 「よう、捜したよう」


 肩を掴まえられて振り返ると、それは殺し屋を雇って鈴木と陽子を捜しているヤクザの田丸だった。


 「何か用か?」


 私は表情も変えずに言う。


 「とぼけるなよう。おまえさんが、鈴木達を匿っているんだろう?悪い事は言わないから、早く引き渡しなよう」


 「こっちも奴に金を貸しているのに逃げられて、捜している途中なんだ。何か解ったらアンタにも連絡する」


 「ふんっ、まぁいいや。じゃぁ、見つかったら教えてくれよ。だけど、言っておくぜ。馬鹿な真似をしたら、おまえさんもただじゃスマねぇからな。おまえさんも知っているだろうけれど、俺等は腕の良い殺し屋を抱えているから、楽に死ねないぜ?」


 田丸はそう言って夜の街に消えていく。


 その背中に付き従うのは、この界隈では有名な殺し屋の北上兄妹である。


 その頃仕方は残酷無惨なものであり、相手が女子供であろうとも、挽肉になるまで拷問する事で有名な異常者だった。


 俺は冷や汗を掻きながら反対方向に向かって歩くのである。


 辿り着いた先は公的なシェルターだった。


 本来は亭主や親の暴力から逃げてきた女性や子供を匿う場所であるのだけれど、私はツテを使って鈴木と陽子をこの施設に入れて匿っていたのである。


 「おかえり」


 二人に与えられた部屋にはいると、そう声が帰ってきた。


 二人は横になってテレビを見ている。


 見ているのはDVDらしく、タイトルは「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない 2」となている。


 「2なんて出てるんだ」


 そう私が聴くと、鈴木が言う。


 「前作から5年後の話しだよ。メンマが再び現れるんだ」


 「木更津キャッアイのぶっさんみたいだな。めんまって。まだまだ死んじゃいられないとか言うの?」


 「いや、まだ始まったばかりだし」


 私も視聴に参加する。


 前作は大好きで、ラストでは号泣したものである。


 「そう言えば、アパートの部屋はどうだった?」


 陽子が私に聞いてきた。


 私は二人に頼まれて、アパートに残されている貴重品を回収に行ったのである。


 「無理無理。ヤクザが出入りして漁っていて、とてもじゃないけど近づけなかったよ。部屋の物は諦めるしかないな」


 私がそう言うと、二人は以外とあっさりに納得したようだった。


 それもそうかも知れない。


 二人には鈴木がヤクザの事務所からパクッた一億円という現金があるからだ。


 だから追われているのである。


 ラストはじんたんが交通事故に会い、ズタズタになって死亡するという「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない 2」のラストを見終えると私は部屋の外に出た。


 二人が国外逃亡をする為の準備をしないといけないからだ。


 施設の外に出ようとした時、ヤクザの田丸が殺し屋の北上兄妹を引き連れてロビーに立っていたのである。


 「ショータイムだ」


 田丸がそう言うと、北上兄妹の兄が拳銃二丁を構え、妹は日本刀を抜刀すると襲いかかってきた。


 私は銃撃を受けながら鈴木と陽子のいる部屋に戻ると、二人に襲撃を伝える。


 陽子はすぐさま部屋を出て、通路にあった火災報知器のボタンを押した。


 非常ベルが鳴り響き、騒然となる。


 「とりあえず、二人は裏口から逃げるんだ」


 私は二人が逃げていくのを確認すると、ジャケット中に仕込んでいた手榴弾を取り出す。


 姿の見えた北上・妹に手榴弾を投げつけると、北上・妹が爆炎と共に吹き飛んだ。


 私は爆炎が収まる前に逃げ出す。


 施設の外に出ると、すでに消防車やらパトカーがやってきていて、夜の繁華街はさらに喧噪をましていく。


 私はその中を、暗い方へと向かって走り始めたのである。



こんな夢をみた



暗い夜の街中を、私はより暗い方を捜して走っていた。


細い路地は入り組んでいて、置かれているダンボールやらビールケースが邪魔で走りづらいのだけれど、文句は言っていられない。


私が走りづらいと言う事は、追ってもまた走りづらいのである。


暗い方へと、右左、私は走り続ける。


逃亡者である。


鈴木と陽子は気になるが、それも自分の命があっての事であり、今は彼らの命の心配より、自分の命の心配である。


廻りは本当に暗くなり、もはや足元もおぼつかないのだけれども、私は両手を前方に付きだし、手探りで走り続ける。


もはや止まる事は赦されない。


私は走り続けるしかないのだ。



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