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印刷工25年目の四十三歳だけど、手取21万円で残業代もボーナスもありませんけど、33歳で手取18万円のデザイナーの後輩が、昇給もしないしやってられないからと退職届けを出しました

保育士の給料を2%引き揚げるというニュースを元にミクシィの日記に書いたものです


 前に昇給したのはいつのことであったか、今となっては思い出せないくらい前の事で、その時に額面を見たら500円ほど上がっていたので、これが現実というものかと、酷く落ち込んだのだけど、冷静に考えてみれば、その時の昇給でさえ随分と久しぶりであったので、今さら500円くらいならそもそも昇給する方が経理的に面倒な作業なのではと思い、上司に相談してみたところ、500円しか上がらないという事はありえないから、ちょっと社長に相談してこいと言われたので、相談してみると当時はグループ会社の本社の方で経理をしていたので手続きが間違いであったと発覚し5000円ほど昇給したのである。


 それでさえ、もう少なくとも7年以上前の話である。


 もともと私の勤める会社は残業代も、休日出勤代も出ないブラックである。


 そもそもが、潰れた会社の元従業員達の集まりで始まり、そこに私と数名が第二世代として勤めていた会社が倒産した時に拾ってもらい、非常によく取引のあった会社が潰れた時に第三世代としてそこの会社から路頭に迷った人材を第三世代として吸収し、今の母胎となっているので、そもそも従業員のほとんどが、倒産経験者と言う事もあり、最初の面接で、


 「この業界、残業が当たり前なので、残業代を払う会社は倒産するので、我が社は残業代が無いですから」


 と言われるのである。


 勤め先が無くなり、路頭に迷っている状態なので、選択の余地はないのである。


 ちょうど時代も悪く、バブルが崩壊し、失われた10年とか呼ばれた最初の3年目くらいの時代であるから、働けるだけマシだったという状況であり、実際に私が前の会社で一緒に働いていた当時40歳以上の人は、再就職に苦労し、数年後にあった時にまだ働いていないと言う人も居るくらい仕事がなかった時代であった。

 

 まだ二十代後半だった私は恵まれた方である。


 残業代は出さないが、利益が出れば年三回のボーナスがあると言われ、最初の数年は実際に年三回のボーナスが出ていたのではあるが、それが二回になり、二回だけど金額が減り、一回になり、一回の金額が大幅に減少になった。


 正直、残業代をもらった方がボーナスよりも多いのだけど。


 そんな状態が続き、とうとう辞める人がではじめた。

 二人ほど最初に止めるのが決定し、その居なくなる人員の補充を会社がいつまでもしないことや、異動を含めたいざこざでさらに二人止める事になった。


 その時点で、我が社の一つの部署から人員が居なくなって休業状態になる事となった。


 さすがにこれはまずいと思ったのか、会社側も引き止め工作にではじめた。


 これまでは去る者は追わず、むしろ塩を撒いて追い払うと言った方が多かったのだけれども、現実的に作業が出来なくなると言うのは、会社にとってかなりの痛手となる。


 後発二名の後輩とは、買って私がその部署にいて一緒に作業をした中であるから、とても気持ちが理解できるのだけれども、彼らが居なくなると、大変な事になるというのは私でも理解できるのである。


 「言ってやりましたよ。この先に希望がもてないって。一人いなくなるのに、退職願を受け取ってから一月も経ってるのに、まだ求人も出してないんですよ。いなくなった分は全部俺がやればいいと思ってるんですかって。人がいたの時点で残業時間が100時間とか越えるのに、会社に住んだって仕事が終わらなくなるって」


 後輩1君はそう言った。

 ちなみに主任・33歳で手取18万。


 「僕は元営業で、営業の仕事が終わったあとにパソコン仕事をこなして、忙しい時期は2ヶ月くらい休みが無くて、毎日午前二時とか三時まで仕事して、朝八時に出社する日々が続いていましたからねぇ。また営業に戻れと言われたら辞めようと思っていたんですよ。ちなみに手取15.9万です」


 後輩2君はそう言った。

 ちなみに35歳で手取15.9万。

 彼の手取を初めて聴いた時、私は思わず飲んでいたコーヒーを吹き出した。


 「後輩2君、君は残業代が出てたら40万くらい貰えるんじゃないの?まぁ、そんなに残業代がかかるようなら、課長とかに昇進させられて課長手当だけになるだろうけど。ちなみに課員は自分一人だけど」


 「それでも、これまでは文句を言わずにやって来ましたが、もう無理です。求人票に出てるのは35歳までと言うところが多いですから、いま人生をやり直さないと鰤鰤さんみたくなってしまいます」


 後輩1君(主任・33歳で手取18万)はそう言う。

 ちなみに私は43歳・手取21.6万である。

 すでに退路は断たれていると言って良い。


 「船乗りは、船と共に沈むのさ」


 私はそう言って、二人の門出を祝福するしかないのである。


 「まぁ、現実的に考えたらさ、このままここで働き続けていて、二人に恋人が出来てさ、歳も歳だし結婚しようという話になって、彼女の親に挨拶に行ったとするじゃない? それで相手の親に娘さんを下さいとか言ったら、彼女さんの親父に怒鳴られるよな。三十過ぎて手取が18万とか、15万とかでウチの娘と結婚させてくれとかふざけるなっ!!娘を貧乏人のところに嫁にやって苦労させる為にこれまで育ててきた訳じゃねぇ!!って、ねぇ」


 私がそう言うと二人頷いている。


 「それがまともな親ですよね」

 「ぐうの音も出ないです」


 「そもそもさ、普通に生きるだけでお金ってかかかるじゃない?だから人は労働する訳なんだけど、朝から晩まで怠けずに働いても普通に暮らせない世の中って何なんだろうね。むしろ賃金以上に働いている訳なんだけど」


 「親って凄いですよね。鰤鰤さんは姉弟三人で両親の五人家族。俺は両親、兄貴の四人家族。後輩2君は両親、妹の四人家族。家族を養って、子供を育て、教育を受けさせているんですからね。俺の親父は俺が高校一年生の時に癌でなくなったんですけど、兄貴を大学に行かせて、俺は専門学校を死んでからも出させてもらっていますからね。俺らなんて、自分の生活だけで精一杯で、人の親になんてなるのなんて無理ですもの」


「だよね〜」

「だよね〜」



 そんな話をした今日この頃。

 保育士は社会的に必要とされているから話題になるけど、業界的には衰退して行くだけの印刷工は話題にもならないと言う話。



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