2016/04/01 第十三回 嘘に春
「桜の開花宣言が出されました」
朝の情報番組で、容姿は綺麗に整っているけれども、それほど大して意味があったり、深みのあるコメントをしなくて、世間一般にはもう若いとは言えない女性アナウンサーが桜並木の映像を背景に、笑顔で話していた。
季節は廻るというのに何がそんなに楽しいのか解らないのだけれども、ついさっきまで女子中学生誘拐事件のニュースを深刻な顔をしながら下世話なレベルで、憶測と可能性と推理と言う、何の確定要素もない話題で盛り上がっていたテンションと同じレベルで桜の開花宣言の情報を伝えられる神経が解らない。
もちろんそれが彼女らの仕事であるのだろうから、そこまで全否定するわけじゃないのだけれども、藤原紀香の結婚会見を見て、いったいどれくらいの人が嬉しく思うのかと思う事よりは重要なのかも知れない。
個人的には藤原紀香って、ああいう顔が好きなんだろうな、と思ったくらいだ。
そう言えば、今日はエイプリルフールである。
すでにツイッターなどでは、エイプリルフールにちなんで、ネタが大量に投稿されているみたいなのだけれども、正直言えば、嘘かほんとか解らないくらい、呟いている人が知らない人だったり、どうでもいい嘘だったりする。
もちろん、嘘は嘘として許容されるべきレベルでなければならないのであろうから、どうでも良いことであることには越した事が無いというのが実情だろう。
嘘がネタで済まなくなるレベルになると、社会に影響が出てしまうからだ。
テレビでいきなり臨時ニュースに切り替わり、某国との戦争が始まったとか放送したりしたら、もはやネタで済まされる事はないだろう。
そう言えば、むかしどこかのテレビ版組で、テレビ局のロビーらしき場所に設置されているモニターにドッキリ映像として臨時ニュースに切り替わり、非常事態を伝えるという番組があったのだけれども、それを見ていた人たちは、現実感がないのかなんの反応も見せないと言うことがあったのだけれども、非常事態を前にした場合、それが一般的な反応なのかもしれないと思ったりした。
いまならそんな事は限られた場所であったとしても、きっと不可能だと思う。
スマホなどで情報の拡散が早く進み、テレビ局のスタッフが予想した状況にはならない気がするのである。
「気温は二十度を越え、まるで初夏の陽射しですね。ですが週末から天気は下り坂に向かいます」
それをまるで当たり前の当然のように女性アナウンサーは言う。
いやいや、俺の住む街はやっと雪が溶けたばかりで、気温は十度以下だし、桜が咲くのなんて、ゴールデンウィークに入ってからなんだけど、東京中心に話を進められてもこまるべさ。
嘘ではないと思うけど、それが全てというわけでもないだろうに。




