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5 地上1回天目で迷子

 目を覚ますと、赤茶けた地面が広がっていました。


 辺りはびっくりする程の鮮やかなオレンジ色。

 知らない場所に一人で横たわっていた様です。


 虹色じょうろを握り締めていましたが、何故これを持って来たのかとしばし悩みました。もっと他に必要な物あったでしょうに。




 そう言えば、ここはどこだろう?いえ、それよりもルキフェル様は?


 あ、心配していた後頭部ですが、痛くありません。

 多分、私が意識を飛ばした後に体勢を変えて降ろしてくれたのでしょう。

 こっそり優しいのですあの方は。


「ルキフェル様?」


 身を起こし辺りを確認します。

 赤茶けた土地の所々に低木が生え、何だか乾燥した空気と熱波。

 所々陽炎が立って揺らぐ空気の先に城郭が見えます。

 あれは都市でしょうか?


 一箇所、黒煙が昇っています。煙など初めて見ました。


 本当に下から上へ上るのですね。

 何となく、黒煙を下から上へ流れる方向へとぼんやり見上げていた時です。


「チビ」

 ぶわりと空気が動き、ルキフェル様が舞い降りました。

 見慣れない大きな袋も一緒です。お買い物にでも行ってきたのでしょうか?


 知らない場所に一人では無いと言う事がとっても心強いです。

 巻き込んでしまいましたが、ルキフェル様がいてくれて本当に良かった。






 ルキフェル様がこの様な街外れに私を降ろした理由ですが。

 人間の街に入る前に色々と打ち合わせや、説明をした方が良いと思われたからだそうです。私、地上に降りるの初めてですものね。


 私が意識を飛ばしていた間にルキフェル様は街に行ってみたそうです。

 私は大人しく、地面に座ってルキフェル様のお話を聞きました。

 硬くひんやりした地面……何だか慣れません。


「では。堕天病はルサポリサスの神殿で、ヘクサと言う薬草を煎じた薬を戴くと治るのですね」

「そのはずだ」

「あそこに見えている城郭の向こうに神殿があるのですか?」

「いや、あれはサバランと言う都市らしい」


 ここでルキフェル様は、ちろりと城郭の方向を見て眉を顰めます。

 どことなく不穏な気配がするのですが、これ何でしょう?


「元々、下見の泉から直接、神殿に向かったはずなんだが、何故かここに降りた。妙だから、俺一人であの街に入ってみたんだが、誰もルサポリサスなんて神殿は知らないと言いやがる」

「ええ?」

「おまけに変な女達に絡まれるしよ。チッ、面倒くせぇ」

「あ、あの。もしかしてあの黒い煙は」

「おう!少しばかり吹っ飛ばしてきた。てな訳で、俺の顔は隠さねーとサバランには入れねぇ」

「ええええええ!?」


 先程の不穏な空気ってこれですか。短気すぎます。ルキフェル様。

 にっこりさわやかな笑顔で宣言する事ではありません。

 ……お怪我された方とかいらっしゃいませんよね?


 いやいや、それよりも。


「神殿を知らないってどういう事でしょう?」

「あ~、多分だが」


 ガシガシと頭を掻くルキフェル様。これわりと苛々している時です。


「前回、堕落病が起きた時は常世の時代だ。

 人間どもの時間で言うと大体1千年ほど前になるな。つまり、神殿が無くなったか名前が変わったかしたんじゃね?」

「そ、そんなぁ」

「まあ、それは俺の推測であって、はっきりとした事はまだ分かんねえ。取り合えず、もう一度サバランに行って情報集めだな」


 ハア~と深い溜息をつく私をじろりと見て、ルキフェル様は右手をくるっと回します。すると、どこからとも無く枯れ木が集まり、ぽっと火が灯りました。

 あっという間に焚き火の出来上がりです。


 ちらり、ちらちらと火の精霊ちゃんでしょうか?

 可愛らしい女の子がダンスしています。


「うわあ!凄い。これが噂に聞く焚き火ですね。なにこれ暖かい。綺麗!面白~い。火の精霊ちゃん可愛いです~」

「うるせえよ」


 はしゃいでいると、ぽいっと袋のような物を投げられました。

 受け止めると、ちゃぷんって音がして。何だろう?水が入った皮袋の様です。

 木の様なもので栓がされていて、引き抜くとふんわり甘い香りがしました。


「うわ。葡萄?」

「酒だ。葡萄酒つー飲み物」

「!!っ。甘くて美味しい!」


 飲むとほんのりポカポカします。

 カッと頬の辺りが熱くなって気持ちいいです。

 そして私の様子を観察して、眉をしかめるルキフェル様。


「酒にも酔い始めたか」

「え?」

「チビ。今後の方針だが。極力、人間のふりをして力は使わない様にしろ」

「どうしてでしょうか?」

「堕落病は力の弱い者の方が早く進む。

 感染疑いの俺と違ってチビは罹患しているしな。なるべく体内に溜まったの力は使わない様にして進行を抑える」


 ルキフェル様はひょいっと葡萄酒を取り上げると、そのまま飲み干してしまいました。さっき私に飲ませたのは酔うかどうかの確認したかったみたいです。


 私の心はしゅわしゅわと元気を失います。そうでした。私は病気なのでした。

 忘れていたわけではありませんが、改めて注意されると落ち込みます。


「体内に溜め込んだ力が枯渇すると、一気に進行するらしい」

「ルシフェル様は大丈夫なんです?」


 ルキフェル様は地上でも、ずっといつも通りに力を使ってらっしゃいます。

 私と比べるまでも無く強大な力の持ち主なので、見ているだけでは良く分からないのです。


「俺はお前と違って力があるからな。発症しても数百年単位でしか進行しないんじゃねぇか?」

「どうか感染していません様に……」


 しょんぼりする私に、ルキフェル様はニヤリと笑い。

 でっかい袋を投げつけて来ました。


「ぶわっ」

「そういう訳で今夜はここで野宿。明日は人間としてサバランに入る。

 羽も消してやるからな。足手まといになるんじゃねーぞ。おら、野営の準備しやがれっ」

「はい~」


 野営の準備って何をしたらいいんでしょうね?


 袋の中には幾つもの布切れと、

 ……衣類でしょうか?男物の服と女物の様に見えますね。

 後は通貨っぽいものもあります。

 それよりも、布切れに所どころついている赤黒い染み……


「ル、ルキフェル様。これって」

「あ~。ここに帰る途中に親切な人がいらっしゃってだなぁ」

「うぇ?でも、ちちち血が」

「イヤイヤ親切な人に戴いたんだよ」


 どうしましょう?まさかルキフェル様、夜盗みたいな事してませんよね?


 にんまりニヤニヤ笑うお顔はやっぱり噂に聞く魔王の様で、

 何だか地上に連れて来てはいけない人を巻き込んじゃったのではないかと、不安になったのでした。


 ちなみに野営の準備ですが、

 布を下に引き木の棒で簡素な天幕と言う物を貼ったのですけれども。これも沢山、怒られちゃいました。


 地上に舞い降りて1回天目。早くも前途多難です。

 亀更新で申し訳ございません。

 この後の展開や設定を見直すつもりですので、

 かなりスローペースな投稿になります。


 改行を変更しました。すみません。

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