ホームパーティー
「っはぁはぁ」
死ぬかと思った、よかった生きてる。俺の手は震えているがそれでも暖かい。俺は部屋の隅で息を殺してた。
周りは死体ばかりで血の臭いしかしない。横にいる男は泡を吹いて白目を向いている。電気は消え、夜景がよく見える。屋上から見るビル街は賑やかだ。
「トゥトゥルトゥっトゥー♪まだいるかなぁ?いて欲しいなー」
まだいるのか、あのイカれ女!!!!!
僅か1時間前のこと。
俺はホームパーティーに参加してた。30人はいたと思う。そこで突然銃声が響いた。電気は消え悲鳴と逃げる足音しか聞こえなかった。俺はテーブルの下に潜りそこから部屋の隅へと移動した。何が起こったかはよく見ていない。目を閉じて震えていたから。
そして、静かになったところで目を開けると動かなくなった人が大勢いた。その中で楽しそうに笑う女だけが目に焼き付いた。
思い出してまた震える。今あの女に気がつかれたら本当に――
「あ!いたいた!」
ビクリ。
女は俺の前に立つ、嬉しそうだ。あぁ俺も横の男みたいになるのか。
俺は何も言わず動かなかった。抵抗する気力すらない。
「よかった、生きてて。しかも抵抗する気もないみたいだし」
女は無邪気な子供のように笑い、しゃがむ。そして、俺の匂いを嗅ぎ始めた。俺は何もしなかった。
「いい匂い、女物の香水だね。好きだよ、そういうの」
俺はただビクビクしていた。何考えてるんだ、この女。
「震えるね、本当に」
女は俺の手をつかみ、俺を押し倒す。
「っわ!」
俺は倒れた。女はとても強い力で俺の両手を持つ。
「君のこと、気になってきたよ」
右手で俺の髪を撫でる。そして犬がじゃれるように頬を舐めた。
俺はゆっくり顔を上げた。
「殺さない……のか?」
恐る恐る尋ねる。
「むしろ……殺してなんてあげないよ?」
それだけいうと俺の体を匂い続ける。今、女にされていることよりも血の臭いや動かなかった人のほうがよほど怖かった。
俺は放心状態だった。
「私ね、最近自分の部屋にインテリアが欲しいなって思ったの――ちょうどよさそうだよね――あ!せっかくだから持って帰ろう!」
俺のことを物としか思ってないようだ。女は立ち上がり鼻歌混じりで倒れた人を踏みつける。
そして、まだ封の切られてないワイン数本持つ。
「これだと強盗になっちゃうね。ま、いいや――じゃあ行こうか」
「行くって……どこへ?」
「言ったよね、『持って帰る』って。ついておいでよ、これから私の部屋のインテリアになるんだからなるべく傷つけたくないなぁ?」
俺は泡を吹いている男を見る。コイツみたいになるのは嫌だ、しょうがないついていこう。
俺は立ち上がった。