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プログラ  作者: 広科雲
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1010 PRINT "HALLO!"

 目の前に、人型を成したバケモノがいた。

 身長は三メートルを超え、全身が青い体毛に覆われている。頭部には巨大な角が生え、黒い翼と鞭のような尻尾さえある。誰が表現しても悪魔と呼ばれる姿であった。

 戦士は悪魔数体に囲まれても笑みさえ浮かべていた。彼の手には英雄が残した聖剣が握られており、体は伝説の鎧に守られている。なにより、彼の後ろには頼りなる仲間がいた。それぞれが自分に合った最強装備をまとい、培った技を誇りに思っている。

 先頭に立つ戦士はただ号令を発すればよい。

 「いくぞ!」と。


 時庭桂ときにわけいは満足して宿屋に戻った。メニューを出し、セーブしたのち終了。ゲームのコントローラを置く。

「ふぅ、第七八次ダンジョン最下層探索完了!」

 一見、少年に間違われそうな元気な瞳を輝かせ、大きく伸びをした。買っておいたペットボトルの水を一口飲み、余韻に浸る。

「成果はあった?」

「ぜーんぜん。さすがにここまで最強装備をそろえちゃうと、なかなかね」

 話しかけてきた同級生の芳田由愛よしだゆめに手を振って答える。彼女は「そう」と液晶モニタに映るチェス盤に意識を戻した。CPU思考ターンの暇つぶしに声をかけただけなので、結果がどうであろうと由愛にはどうでもよかった。

 桂の正面からは、艶っぽい男女の声が聞こえてくる。

「なにを泣いているんだ?」

「聡がそうやっていつもいつも助けるから、だからあたしはそれに頼っちゃって、甘えて、それで……」

「いいじゃないか、それで」

「え……?」

「オレが、そうしたいんだ。オレはいつでも、おまえを守っていたい……」

 スコーン

 桂の投げた丸めたメモ用紙が清氷頼子しひょうよりこのおでこに直撃した。

「なにするんですか、先輩〜っ」

 情けない声で抗議する頼子に、桂は苦々しく答えた。

「毎度いうけど、ゲームキャラのセリフを声に出さないで」

「いいじゃないですかぁ、こういうのは感情移入してこそですよぉ」

「聞いてるほうは恥ずかしいの!」

「先輩だって魔法の名前とかを叫んでるじゃないですかっ」

「あれはいいのっ」

「ズルイですよ! それに本当にウルサイっていうのは、陽光ヒカリのことを言うんです!」

 と、頼子は部屋の隅を指差す。そこには恐ろしいさばきでレバーとボタンを叩く赤帽子の少女がいた。

「やあああああっ、無炎の――!」

 桂は叫ぶ少女を見なかったように視線を戻し、「あれは、しかたない」と咳払いした。

 話を振った頼子も「えと、そうですね……」と冷静になった。

「さてと――」

 二人はそれぞれの席に座りなおし、ヘッドホンをつけた。

 部屋にはもう一人の少女がいた。彼女が5.1chヘッドホンを装着しているのは、桂や頼子のように外部の雑音を消すためよりも、ゲーム内音声をよりはっきり聴くためだった。長い黒髪の奥から放たれる鋭い眼光は、液晶モニタごしのスコープを覗いている。ゲーム内で五〇〇メートルは離れた標的が照準の中心に入ると、トリガーを引いた。

 バスンッ

 ヘッド・ショットで標的の頭部が破裂した。

「ミッション・コンプリート」

 一流のスナイパーを気取り、山岡志穂は息を吐く。外部の音は聞こえていないだろうが、外部からは彼女の所作は丸わかりだった。 

「今日も平和だ」

 由愛は静かに次の一手を打った。

 私立空城北くうじょうきた高等学校の文化部棟に、その部屋はあった。扉には水色のTシャツが貼られ、胸には白文字で「Shall we play a game?」と書かれている。彼女たちの所属する、ゲーム研究部・部室だった。

 部室内の壁際には古今東西のゲームが収められた棚が、中心にはパソコンやゲーム機本体が置かれた机が六人分並んでいる。エアコン完備の部室で、好きなゲームや関連品を部費で買い、毎日ゲームに没頭する。そんな夢のような部活動がゲーム研究部だった。

 現在、正式部員は六名。ロールプレイング大好き部長の時庭桂・二年、アクション系全般を網羅する山岡志穂・二年、思考型ゲーム愛好家である芳田由愛・二年、シューティングの鬼と呼ばれる野原陽光・一年、恋愛ゲーム・ラブの清氷頼子・一年。そして――

「おつかれさまー」

 気苦労の多い副部長、掛理利子かかりりりこ・二年が息を切らせて入室してきた。

 「おつかれさま」と答えたのは由愛だけだった。残り四人は自分の世界に浸り、副部長の存在に気づかない。

「みんな、ちょっと話を聞いてほしいんだけど……」

「ムダだよ。みんな自分の世界に潜行中」

 由愛の説明を待つまでもなく、理利子にも状況は把握できた。

「一大事なのに……」

「押そうか?」

「えと、さすがにそれは……」

「だいじょうぶ、わたしは先に落としておく」

 由愛は自分のパソコンをシャットダウンし、それから『押したら死刑!』と貼紙された赤いボタンを押した。と同時に、四人から「ああああああああああ!」と絶叫があがる。

「強制スイッチは使うなぁ!」

「二八人連続キルが……」

「聡くぅぅぅぅぅん!」

「ハイスコア……」

「いや、すまない」

 由愛はうっすら笑って謝罪する。あのスイッチは、各ゲーム機につながる強制リセットボタンだった。最新電子機器には最悪の装置である。以前、これのおかげでゲーム機二台がスクラップになったこともあった。

「それはさておき、理利子から話があるそうだ」

 促されて四人はようやく副部長に気づいた。

「理利子、いつ来たの?」

 部長の桂が、副部長に尋ねる。二人はクラスメイトであり、幼馴染でもあった。理利子自身はゲームが不得意であったが、桂に誘われゲーム研究部に入部した。ただ、昨年は正式な部活動ではなく、ゲーム研究同好会であった。発足者の桂、それに理利子と中学からのゲーム仲間である志穂と由愛の四人ではじまった同好会は、今年度に陽光と頼子が加わったことで正式に部へと昇格した。

「今さっきだよ。それより大変なの。話を聞いて」

 普段、おっとりすぎる彼女が尋常ではなく慌てている。部員たちにも不安が広がる。

「どうしたの?」

「さっき、部活動定例会議があって――」

「あ、今日だっけ?」

 部長の桂が驚いている。部長がいいかげんなので、この手の面倒な話はすべて掛理利子副部長が請け負っていた。部として機能しているのは彼女のおかげである。

「桂のボケはいい。で、何を言われたんだ?」

 由愛の冷静な一言に桂は「ぐぬぬ」と呻いたが、全員から無視された。

「文化祭」

「文化祭?」

 部員たちの肩の力が抜けた。どんな真剣な話が飛び出してくるのかと身構えた分だけ、肩の荷は軽い。

「来月の第二土曜日……十月一二日でしたっけ? わたしとヒカリにとっては初めてですね」

「いやいや、わがゲーム研究部としても初めてだよ。部に昇格したのは今年だからね」

「あ、そうですね。楽しみです」

「で、それがどうしたの?」

 再び理利子に注目が集まる。彼女の顔は変わらず暗い。

「廃部がかかってるの」

「え?」

 部員がざわめく。

「なんで、どして?」

 話が見えない部長に、副部長は重い声で説明した。

「この部が学校に貢献していないからだって」

 全員、容易に想像しえた。自分たちはゲームしかしていない。部費の浪費。社会的に最低。学校のお荷物。クズ。カス。そんな単語しか思い浮かばない。浮かばないが、皆、大して気にかけていない。

「まぁ、たしかにちょっとダメっぽいけど……ねぇ?」

 桂が部員たちに話を振る。きっといいところもある、と証明してくれると信じてだ。

 「このパラダイスが、消える……?」志穂の手が震えている。

「いったい月に何本のゲームが出てると思ってる……。それが全部タダでできたんだぞ……。それが、たかが文化祭ごときで消えるというのか……」

 由愛も理不尽にもだえている。

「海外のボードゲーム事情を知るにはここの設備と予算が不可欠なのに。このさきは延々とソリティアでもしていろというのか」

 赤い帽子に隠れた表情の奥で、陽光は呻く。手の皮がむけて痛々しい掌を見つめて。

「専用レバー、作れなくなる……」

 頼子は過去のハーレムを思い、青ざめながら笑っていた。

「聡くん、タケル、真治さん、昌幸さま、こーちゃん、剣士郎どの、ぼっちゃま、ラインハルトさま……」

 「みんな聞いて!」壊れかけた部員に理利子が声を張り上げる。

「条件があるの。それを満たせばだいじょうぶだからっ」

「条件?」

「うん。文化祭ではどの出し物がよかったかアンケートをとってるでしょ? それなりの成果をあげれば廃部は考え直すって」

「それなりって、具体的には?」

「中位くらいかな。それだけ取れれば説得もできると思う」

「一位とれとか、そういうムチャじゃないんだ?」

「そんなのムリだよ。目標としては客層が被りそうなパソコン部以上かな」

 意外と現実的な判定基準に、部員は胸をなでおろした。

「それで、出し物は何をするんですか?」

 現実世界に戻ってきた頼子が挙手した。

「それはこれから決める。意見のある人?」

 部長の視線を全員が一斉に避けた。

「何もないの?」

「去年みたくゲーム攻略ビデオを流すか?」

 腕組したまま志穂が提案した。昨年は同好会だったため、低予算でもできるビデオを流しながらの攻略解説を行った。大型テレビを桂の自宅から運び込むのに苦労し、のちに両親に怒られた。

「忘れたの、志穂。あんたの攻略紹介になったとたん、客がヒいたのを」

 桂が冷ややかに暗殺者を見やる。

「あれのどこにヒく要素があるんだよ? 超ムズ・ゲーと呼び声高い『マーダー・パラダイス』を紹介しただけじゃないか」

「スプラッタ・シーンを延々と見せつけられて喜ぶ人がいると思う? 子供やお年寄りだって来てるのに」

「う……」

 たしかに刺激が強すぎるかもしれない。だが、桂にだけは言われたくなかった。

「それなら、おまえのはもっとヒドかったろ」

「どこが!」

 桂はRPGロールプレイングゲームの攻略ビデオを流し、ポイントごとの解説をしていた。客の反応も悪くなかったはずだ。

「おまえが紹介したゲーム、当時の超最新作だったよな」

「そうだよ? 二日も徹夜して撮影したんだから」

「バカ、みーんな自分でクリアする前にエンディング見せられて、ガックリして帰って行ったんだぞ!」

「!!!」

 思いもよらなかった理由に、さすがの桂も言葉に詰まった。

「たしかに、あれは許されない。推理小説の犯人に赤線が引いてあるようなものだ」

 由愛もうなずく。そういう彼女は会場に机を置き、海外のマイナーなボードゲームを紹介していた。参加者はゼロではなかったが、最後まで付き合う客はいなかった。

「とまぁ、そんな失敗もあり、また、同じネタでは集客が望めないだろうからボツってことで」

 桂が苦笑しながらまとめた。

「おととしは?」

 赤い帽子から口元だけを覗かせて文化祭未経験の陽光が尋ねた。ゲームをしているとき以外、彼女は口数も少なく、おとなしい。

「わたしたちが作った同好会だから、存在すらしてない」

「なるほど」

 陽光はうなずいて話題を打ち切った。

「ゲーム研究部らしくお客にゲームをしてもらって、データを取ってまとめるというのはどうでしょうか。客層や好み、プレイ技術なんかを」

 頼子が口に指を当てて、考えながら提案した。

「頼子ちゃんにしてはまともだね」

 由愛が素直に感心する。が、一筋縄でいかないのが清氷頼子であった。

「もちろんゲームは乙女ゲーかボーイズ・ゲーです。男子生徒が夢中になってプレイする姿を見るのは楽しいでしょうねぇ……」

 彼女は外見からは『かわいい少女』というイメージがぴったりと当てはまるが、脳の中は不純で埋まっていた。彼女がダークな想像を嬉しそうに語るとき、部員は「ネクロヨリコンが開いた」と恐れおののくのである。

「ゴメン、前半だけ参考にさせてもらうね」

 桂が背後のホワイトボードに書いていく。

「研究成果をもっと端的に表すのはどう?」

 由愛だった。

「端的って?」

「わたしたちが面白いと思うゲームを作る」

「たしかに研究成果だね」

 ホワイトボードに候補が書き込まれる。

「ゲームセンター・マップ……」

 ボソッと口にしたのは陽光だ。

「近隣のゲーセンを調べて、稼動機体を紹介するの?」

「そう。一般向けにキャッチャーやプリント機も調査」

「悪くないね」

 また一つ題材が増えた。

「理利子は何かない?」

「えーと、ゲーム史を当時の技術と世相を交えて考察する論文とか……」

「却下」

「え、なんで?」

「難しすぎて頭イタイ」

 見渡すと、由愛以外の部員が頭を抱えてもだえている。崇高すぎる研究は彼女たちには不可能だった。

「……わかった」

 おそらくゲーム研究部としてはしごく真っ当な題材であった。が、それができないのが彼女たちだ。そもそも彼女たちの根幹は、タダでたくさん面白いゲームがしたい、それだけなのだ。

「というわけで、頼子ちゃん、由愛、ヒカリの提案の中から選ぼうか。どれが現実的、かつ集客につながるか考えてみよう」

 そういって頼子の案を取り上げる。

「アンケートをとるのも集計するのも楽といえば楽だよね。ゲームがあれば集客も見込めるし」

「ですよね」

 頼子の大きな目が輝いた。

「けど、インパクトにかけるかな。既存のゲームを置いたところで部が評価されるわけでもないし。データはのちに役立つかもしれないけど、わたしたちに必要なのは当日の評価なのよね」

「ですよねぇ……」

 頼子はシュンとなった。

「由愛案のゲーム制作だけど、完成すればインパクトがあり、面白ければ高評価まちがいなし」

「フッ」

 由愛の表情はあまり動いていないが、口元の笑みは隠せない。

「けど、現実的にはかなりキビしい。準備期間はおよそ一ヶ月。それで完成するの?って話」

「フゥ……」

 由愛からため息がこぼれた。

「最後のゲーセン・マップ。わたしたちゲーマーにしたら宝の地図だよね。そこに一般向けも加えることで役立ち感はハンパなし」

 陽光は部長の言葉に二度うなずいた。

「だけど、これまた評価されるのは後日となっちゃうんだよね。当日にゲーセン通いをする人がどれだけいるか、また、そのデータがいつまで有効かわからない。行ってみたら機種変更していた、なんてこともありえるわけで」

 陽光は一度うなずき、うなずいたまま顔を上げなかった。

「それじゃ、どうする?」

 志穂は不機嫌を隠そうともしない。彼女はすっきりしない話がキライだった。

「どうしようね……」

 桂は腕組し、しばらく考える。そしてホワイトボードに二本の消去線を引いた。

「欲しいのは当日の評価。とすれば、これしか残らない」

「ゲーム制作」

「そう」

 残った候補はそれ一本だった。

「けど、おまえが言ったとおり難度高すぎだろ? ゲームなんて作ったことがない」

 志穂に続いて、頼子も陽光も追従してうなずいた。

「わたしもないよ。でも、やるしかない」

「……難しく考えるとダメなんじゃないかな」

 理利子がつぶやく。

「なにかいい考えがあるの?」

「たしかにコンピュータ・ゲームとなれば難しいけど、たとえばボードゲームとかカードゲームならできるんじゃないかな?」

「そっか。プログラムとか映像とかいらないし、紙とペンがあればいくらでも試行錯誤できるね」

「なるほど、それならいけそうじゃん」

「工作得意」

「さっすが理利子先輩ですっ」

 部員のほとんどが希望を見出しテンションを上げるなか、由愛の表情だけは硬い。

「いや、ダメだ」

「え?」

「既存のルールに則らないゲームは、一般人からは拒否される」

「どういうこと?」

「たとえば修学旅行でUNOをやろうといえば人は集まる。だけど、オリジナルの戦術級ボードゲームをやろうと誘ってプレイする者はいるだろうか?」

「……やらないね」

 未知のゲームに参加するには、ルールを一から覚えなければならない。しかもおもしろいという保証もなく、今後プレイするかもわからないゲームのためにだ。そんなのは時間の浪費だった。

「そういうこと。わたしは昨年の個人展示でそれを痛感した。たとえ数年後に世界中でブームになるほど面白いゲームだとしても、その場で興味を引かなければ意味はない」

「ならどういうゲームがいいんだよ?」

「見た瞬間にルールがわかり、オリジナル要素があり、プレイする側に負担をかけず、見た目で興味を引くゲーム、かな」

「とてつもなく難しいだろ、それ」

 志穂が頭を抱えた。いや、全員が苦悩に唸っている。

「例がないわけでもない。たとえばモグラ叩きやボーリングなんかは、的やコースを工夫することでオリジナルにも見え、一目でルールがわかる」

「なるほどね。それなら――」

「でもゲーム部ウチはやらないよ。そういうのは校庭で運動部がやるはずだから」

「うわぁ……」

 あきらめムードの部員たち。またも行き詰って各自が知恵熱を出すまで思考をフル回転させる。

 その中の一人がハッとした。

「わかりやすい、見た目、簡単……シューティング」

 「シューティング?」赤帽子の少女のつぶやきを桂は聞き逃さなかった。瞬間、イメージが湧いた。

「そっか、シューティング・ゲームなら、誰でもすぐにわかる」

「見た目もハデにできるじゃん」

「難易度も調整しやすいな」

「なぜかギャルゲーのオマケによく入ってるやつですね」

「弾幕……破壊……ハイスコア」

 陽光の言葉にイメージがさらに増大される。完成すれば、きっと大好評間違いない。

 浮かれ出す一同に、輪に入れなかった理利子がツッコむ。

「でも、誰が作るの?」

 短い祭は終わった。

「理利子、プログラムできなかったっけ!?」

 桂は血走った目で幼馴染に食ってかかる。

「ちょ…ちょっとだけだよっ。展示するような規模のおっきなプログラムなんて作ったことないよっ」

「じゃあ、がんばっておっきなの作ってみようか!」

「ムリ、ムリだってばー!」

「ほんの少し、少しでいいからおっきいのがんばってみよ? ね?」

 スパーンっ、パンっ!

 「やめろ、ヘンタイ」見かねた志穂が新聞紙刀で頭を叩く。ついでに頼子も叩かれたのは、彼女がネクロヨリコンを開いてハァハァしていたからだ。

「しかし困ったね。作れる人がいないんじゃ、どうしようもない」

「外部の応援を頼むのはどうですか?」

 痛みの場所を押さえながら頼子が案を出す。

「外部?」

「グラフィックは美術部、BGMは吹奏楽部みたいに、得意そうなところに頼むんです。プログラムなら――」

「当然パソコン部だね。ちょうどいいじゃない、あそこには親友がいるし、頼んでみよう。彼女なら絶対おっけーしてくれるもん」

 桂は自信満々だったが、幼馴染の理利子は賛同しかねる乾いた笑みを返した。

「よーし、さっそく行ってみよう!」

 元気よく退出する桂を追い、理利子も続く。

 由愛と志穂はたがいに顔を見合わせ、「ムリだな」「ムリムリ」と無言で意思疎通した。知らぬは本人ばかりなり、であった。

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