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恋愛依存症  作者: ナオコ
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出逢い

久明しかいない。いや、久明しか見えていないのかもしれない。いつも過ごしている風景と何ら変わりはない。家からバス停までの田んぼ道も、通学途中に見えてくるお洒落なカフェも、何もかもがいつも通りそこにある。しかし、久明しかいないのだ。静かで音もなく、不気味なほどに人の姿も見当たらない。猫一匹さえも歩いていない。

痩せたい。今も有紗の手にはドーナッツがしっかりと握られている。目の前のテーブルの上の皿には、美味しそうな笑みを浮かべたドーナッツ達が、こちらを誘惑していた。

明後日は久明と会う日だ。

それまでには痩せておこう。ドーナッツを頬張りながら、有紗は心に誓った。

久明とは、現在通っている大学で知り合った。お互いの共通の友人からの紹介だった。

恋愛はいちいち一喜一憂しなければいけないし、たった一人の男をちやほやしなければいけないし、色々と面倒くさい。恋愛をすると、ひたすら真っ直ぐにその相手に夢中になってしまう有紗は、恋愛なんて疲れる事には、参加したくなかった。

久明も恋愛に対しては後ろ向きだった。高校時代に一年半付き合っていた彼女の束縛が、久明を疲れさせた。大学では、合コンや紹介の誘いなど、出会いの瞬間が幾度か訪れたが、その度に理由をつけては、恋愛から逃げ続けた。

そんな二人を知り合わせたのは、久明の高校からの友人であり、有紗とは大学の授業で仲良くなった恵美だった。恵美は、有紗をご飯に誘った。同じように久明も誘った。有紗が約束していた場所へ行くと、恵美の姿はなく、そこには久明がいた。ちょうど待ち合わせの時間に、恵美からメールが届いた。そこに来ている彼は、本当にいい人だと、食事だけでいいので、話してみてほしいと書かれていた。久明の方にも同じような内容のメールが送られていた。

二人は携帯の画面から顔をあげ、お互いの顔を見合せ、軽く会釈した。そして、苦笑いで見つめあった。

これが二人の出会いだった。

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