テンションアップダウン第二回やっと始まる学園話
放課後に自由は無い、故にボクは逃げる。
しかし……。
「はぁはぁ……まっ撒いたか?」
「何で逃げたの?」
周囲を見渡しやっとのことで撒いたと思ったその時、その声は突如頭上から聞こえてきた。
「…………」
「…………どうして黙っているの?」
ボクは普段からあまり叫び声を上げたりしない、だからボクの悲鳴をしかと聞いて欲しい。
せーの!
「ぎゃゃゃやややあああ!!!!!!!!!!!!!」
「何で逃げたりしたのよ?私たちまでとばっちりが……」
「そこ静かに!」
ピシャリと言われ口を紡ぐ海苔ちゃん。
「梅ちゃん先生落ち着いて!まじで!」
こちらはボクらの部活の顧問の梅ちゃん先生に一番最初に捕まった(逃げる暇なんて存在しないくらい速かった)先輩の一言。
「じゃあ何で逃げたりしたの?」
多分皆心の中で同じことを思っているに違いない。
「それはいつもの流れで先生がこの後……」
先輩がボクらが思っていることを代弁してくれようとするが途中で最悪な形で遮られる。
「そんな悪いことを言う口はこれか!」
むちゅっという効果音が鳴りそうな口づけを無理やりされる先輩。
「~~~~~~!!!、ひっひはがはひっふへふふぅぅぅううう(舌が入ってくるぅぅぅううう)!!!」
何故先生がこんなことを「ぷはぁ、次はあなたよ海苔ちゃん」「ひぃ!!!」するのかと言うと、理由は簡単だ先生が「やっやめ、ちょっ……」「ぷはぁご馳走様でした」お酒を飲んで酔って「さぁメインディッシュといきますか」いるからだ!チキショウ!
先生はボクの肩を掴むと無理やり顎をあげ、自らの唇をゆっくりと近づけて来る。
「先生ストップストーップ!」
「だが断る!」
先生は少年マンガのキャラクターが言いそうなセリフを吐きながら、かなりお酒臭い口をボクの唇へと 近づけ……。
ボクが最悪なファーストキスに備え、身構えているのに一向に来る気配がない。
恐る恐るキツく閉じていたまぶたを少しだけ開く、目の前にあるのは先生の唇ではなく優しく目を閉じているフィーの顔だった。
「……フィー?何してんの?」
ボクの目が開いていることに気づいたフィーは少し恥ずかしそうに笑い、ゆっくりと先生と同じように顔を近づけてきた。
「フィー?」
「…………横向いて下さい、直ぐ済みますから」
ボクはフィーに言われるがままに顔を横に向けた。斜め下に酔いどれ先生がいたが気絶しているようだ。
「……先生から助けたご褒美を、頂きます」
先生が気絶しているのはフィーのおかげ(仕業?)なのか、とかご褒美って何のこっちゃ、などと考えるがその答えは直ぐにわかった。
直後に頬へ柔らかい感触が伝わってくる。
「フィー!?何を!?」
「…………ご褒美のチューです」
恥ずかしいことを真顔で言われしばしぽかんとしていたが、先輩と海苔ちゃんが気絶した状態から復活しフィーのことを注意している。
「だっ駄目でしょフィー!」「そうよ不可侵条約があるんだから!」など色々変なんことで怒られているフィー。
また無駄に騒がしい日常に、ボクの意識が戻ることはなく終止ぽかんとしっぱなしだった。
ちなみに、先輩が言っていた不可侵条約とは、ボクらの通う学園の四代イケメン?に手を出さないと言う、ファンクラブ連合が作った法律である。四代イケメンの内、不本意ながらその中の一人に入っているのがボク、あと先輩も入っている。残りの二人についてはまた別の機会に。
「まったく騒がしいわね、何事?」
さっきまで気絶していた元凶が目を醒ます。
「「「元凶が言わないでください(よ)」」」
「ハイハイ」
先生は一度寝ると必ず酔いが醒める。
「そんなことより、今日の部活を始めるから速く椅子に座りなさい」
ボクを含めた四人が各々の定位置にある椅子に腰を下ろした。
「まずは……」
「今頃どっかをほっつき歩いているあの子を探しに行きましょう」
「「「「やっぱり((か!))(かよ!)」」」」
ボクらの部活動は副部長を捜すことから始まる。
平穏だがどこか騒がしい放課後は、こうして進んで行くのである。