テンションアップダウン第六回先輩と先生
雨月マナの兄雨月ユイト、彼はマナ先輩より二つ年上、現在大学二年生。しかし本人曰く国内を旅しているから大学など行っている暇はないらしい……。
雨月マナと雨月ユイトについて語るにはやはり去年の……雨月マナとオレの出会いを話すべきだろう。
メイド服を着る前の話だからフィーの事件の少し後。
部活に入部してまだ日は浅い、しかしあの事件以来俺の周りには人が寄り付かなくなってしまった。
居場所がなくなったボクは毎日毎日部活に参加することで、放課後の余りある時間を潰すことにしたのだ。
「こんちわー……あれ?」
部室内に入ると目の前には見知らぬ女子生徒が座っている。
何か困り事があって頼み事でもしに来たのかと思いゆっくりと奥に位置する椅子に向かう。
「あら?」
彼女の横を通る時に彼女と目が合う。
「もしかして何かを依頼しに来たの?」
「え?」
彼女の言っていることの意味がよくわからない、何故彼女はボクが言おうとしていたことを先に言ったのだろうか。
「どうかした?」
謎の女生徒は驚いたまま何も言わないボクに疑問を感じ、少しだけ近づく。
見知らぬ女生徒に近づかれこちらは一歩後退する。
「……何で下がるの?」
「いやー……」
曖昧に返事をしながら片手を後ろに回し助けを呼ぶためにメールを送る。
コイツは多分新手の殺し屋で、可愛い顔立ちをしているが実はプロなのだ。
頭の中で相手の目的を考えていると相手は自らの懐に手を伸ばした。
ボクは相手が懐からピストルを取り出すと瞬時に判断し、床を転がり椅子の裏に隠れる。
「!?」
相手は驚き一瞬動きが止まる、その隙に扉へと走る。
ガチャリ。
ボクが扉から出ようとしたその時、扉の方が先に開く。
「……誰?」
「貴女こそ誰?」
目の前には、誰かに顔がどことなく似ている女性が立っていた。
「梅ちゃん先生」
「あら?雨月さん、久し振りね」
コイツ等仲間か!と瞬時に理解したボク。
「『せんせー、そろそろ襟から手を離してよ』」
「離したらまたウロチョロするじゃない、駄目よ」
新たな刺客の後ろから吠天先輩が現れる。
「吠天先輩!?」
「『ヤッホー元気?』」
吠天先輩が此処に居るということは……。
「吠天先輩も刺客!?」
「『何の話?四角?どちらかというとちょっと丸々とした顔じゃない?』」
コイツは何を言っているのだろうか、頭大丈夫?状態である。
「丹沙、この人は知り合い?」
「『あー……まだ紹介してなかったね』」
吠天先輩がボクの後ろに周り肩に手を置きながらボクを紹介し始めた。
「新しく入った女の子…女、の子…おん…な」
雨月マナという一つ上の先輩は、ボクが女だと言うことに疑問でもあるのか先程からぶつぶつと呟いている、シバくぞ!
「どうしたの?」
マナ先輩の奇行に、梅ちゃん先生が冷蔵庫からワインを取り出しながら訪ねる。
「何でワインを冷蔵庫から出してんの!?ってか何でワインあんの!?」
「何でって自分で飲むためにあるのよ」
梅ちゃん先生は当たり前でしょうと言わんばかりのため息を吐いてきた。
「あんた!」
梅ちゃん先生に更なるツッコミをしようと手を持ち上げたとき、マナ先輩が話しかけてきた。
「何ですか?」
「丹沙に手をだすんじゃないわよ!」
何をどうしたらそんな発想に行き当たるのだろうか、かなり疑問だ。
「聞いてるの!」
相手をするのがだんだんと面倒になってきたので吠天先輩とバトンタッチしようと室内を見渡す、がしかし居ない。
「あれ……吠天先輩?」
名前を呼んでも返事がない。
「ちょっと、本当に聞いてる?」
マナ先輩を無視しながら吠天先輩を探す、しかし見つからない。
「ちょっと!何で無視するの!?」
「ちょっと静かにしてください」
先輩に対し少しきつめに言う。
「こらこらー喧嘩しないのー」
今度は何だ?と声のした方を見る、そこにはワインのボトルを片手に持った梅ちゃん先生がいた。
「!?しまった!」
今度は慌て始めるマナ先輩、全く持って忙しい人だ。
「逃げるわよ!」
「何から逃げるんですか?」
ボクは貴女から逃げたいですよ。
「喧嘩しているのなら仲直りしなさーい」
梅ちゃん先生がボクとマナ先輩の肩を同時に掴む。
「ひぃ!」
何でこんなにも脅えているのだろうか、訳が分からない。
梅ちゃん先生の手が段々と頭の方に行き、頭を鷲掴みにする。
「?先生頭から手を……」
「仲直りのちゅー」
次の瞬間、マナ先輩とボクの睫毛が触れた。
「!!!!!」
「ーーー!」
こんな感じにボクと二人の変人は出会った。
ちなみに最初マナ先輩を新手の殺し屋と思った理由としては、前日に吠天先輩に貸してもらった本の影響を受けただけなので特に気にする必要はない。




