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テンションアップダウン第一回桜咲く……って何のこと?

「さっ寒い、もう駄目……最後にご飯をいっぱいたべたかったな」

「遅れてしまいすみませんでした……」

 かれこれ何回同じやり取りをしたのだろうか、ボクだって頑張ったのに……。

 フィーが泊まりに来た次の日の今日、ボクは久しぶりに朝寝坊をやらかした。

 その後一度フィーを自分の部屋に返し、ボクは新幹線もびっくりの超スピードでお昼のお弁当を作り上げ身支度も十分で済ませた、のだが集合時間は午前九時、到着時刻は午前十時、一時間も遅れてしまった……。

「朝寝坊しても頑張って間に合わせようとした努力は認めるわ。でもね約束を守れなかった事実は変わらないのよ、いい?」

 さっきまでふざけていたが急に真面目な口調になり説教をし始める、先輩が怒るのも無理はない、何故なら先輩は朝の五時ぐらいからベストポジションを捕るために桜の木の下にずーっと座っていたのだ。

「朝からわたしはずーっと座っていたのよ、なのに差し入れの一つも無いし、後輩からの労いもないし……」

 …………。

「ぅうっ……ボクだって頑張ったのに、ひっく……そっそんなに攻めなくてもいいじゃないですかぁぁぁぁあああ……ぅわあああん!!!」

「えっそんなっ!」

 突然の事態に動揺を露わにする先輩。

「悪かったわよ、ごめんごめんね」

「ぅうっ…」

 先輩は涙で濡れたボクの目元を、ポーチから取り出したハンカチで優しく拭ってくれる。

「ごめんねわたしも少し言い過ぎたよ」

「ゆるじでぐれるんですが?」

「許す許すなんでも許す」

 優しい母親のような微笑みを浮かべる先輩。

「……ほんとうですか?」

「本当本当マジ本当」

「……じゃあ今日の料理で玉子焼きを出汁で作ったことは?」

「許す」

「……先輩が食べたかった手作りチーズケーキを作れなかったことも?」

「許す」

「……先輩が実は女の子大好きだって噂ながしたらその日のうちにファンクラブが設立されてしまったことも?」

「……許す」

「じゃあ部室にあった先輩のプリンを黙って食べたこ……」

「それは許さない!」

 ………………。

「……ちっ」

 そんなに人生うまくいかないか。


「そろそろお昼にしようか」

 シートの上にテーブルを置きながら先輩が提案する。

「もう一時ですか…」

 ボクは腕時計で時間を確認しつつテーブルの上にお弁当箱を乗せる、何やかんや話をしていたら時間が経っていた。

「あれ?…飲み物が」

「二リットルのペットボトルを二本用意していたのにもう無くなってるね」

 ボクの声に反応して横から海苔ちゃんがスーパーの袋を覗き込む。

「飲み物ないの?」

 先輩も会話に参加する。

「はい…ちょっとコンビニまで買いに行ってきますねー」

「海苔ちゃん待って、ついでにさきイカとチータラ買って来て」

「……ついでにポテチもお願いします」

「みんなで海苔ちゃんをパシリにするなよ!」

「うーん…確かに、よしゲームして負けた人が買って来るのは?」

 先輩の提案にみんな賛成した。

「ここに割り箸が全員分あるからこれに番号を書いて王様を引いた人が買いに行くってことでいい?」

 何故番号の中に王様があるのかはツッコまない。

「みんなせーので引くよ……せーの!」


「なんでこうなるかなぁ」

 言い出しっぺが負けるという大宇宙の法則を無視する結果となった、もちろん負けたのはボクだ。

「早く買って戻ろー」

 とりあえず目的の物を買ったのでみんなの場所へ戻る。


「やめて下さいあなた達しつこいですよ」

「いいじゃねえか女の子だけの花見なんて寂しいだけだろ?なぁ俺達と楽しく花見しようぜ?」

 戻って来ると男子大学生のグループが先輩達に絡んでいた。

「大丈夫みんな」

 とりあえずみんなに合流し会話にはいる。

「誰だお前?」

 大学生は酔っているのか顔が赤く息が酒臭い。

「この人達の友達ですけど?」

 先輩と大学生との間に入りながら言う。

「邪魔だよ、怪我したくなきゃ退きなー」

 先輩が震える手でボクのパーカーの袖を摘まむ。

「いいえ退きません」

 ちっと舌打ちをし今度は無理矢理にボクを退けようとしてくる。

「邪魔だって言ってんだろ男に興味はねぇんだよ!」

 ドンっとボクを押し一歩前に出る大学生、ボクはそいつの肩を掴み……。

「誰が男だぁぁぁあああ!」

 全力のハイキックを繰り出す。

 大学生は「ふぉぎぁぁぁあああ!」と悲鳴をあげながら吹き飛び桜の木に激突する。

「おい!コイツまさか女!?」

「嘘だろ!?男にしか見えなぎゃぁぁぁあああ!」

 ボクのことを男と言ったやつを片っ端から蹴りまくる。

 そこはすでに戦場と化してた……。


「いやぁ逃げられて良かったわね」

「あの後まさか警察が来るなんて」

「……助かってよかった」

「そうだね……ケホッ」

「大丈夫ですか!先輩!」

「大丈夫大丈夫」

「……ところで今日のお花見にあの二人を呼ばなくて大丈夫だったんですか?」

「……大丈夫じゃない?多分」

 みんなが笑顔で笑いながら歩く帰り道。

 ………………。


「なんでボクだけ男扱い……」

「「「…………」」」

 帰り道は沈黙が続いた。


 翌日まボクらは職員室に呼ばれ先生方に注意を受けた。

 何故かボクだけが警察官にお説教された…………。

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