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テンションアップダウン第四回夏休みはほど遠い

 親と言う存在は全く子供の考えや気持ちを理解していない、だから反発をしてしまう。


「お父様……今なんと仰いましたか?」

「『部活を辞めろ、そう言った』」

「何故でしょうか?」

「『言わないと解らないのか?理由は簡単だ、部活のせいで成績を落としているからだ』」

「そんなっ!」

「『一学期最初のテスト、赤点を取ったらしいな』」

「うっ……しかし」

「『理由などに興味はない、結果が全てだ』」

「ならチャンスをいただきたいのですが!」

「『チャンス……だと?』」


「『頑張って痩せなさいね!』」

 いつの間にか終わったらしい部活、吠天先輩がテストの話をし出した辺りから記憶がトんでいる。

「サヨナラ……」

 今にも死にそうな表情の友達が部室から出て行く。

「ちょっと待って!」

 急いで帰り支度を済ませ先輩方に挨拶を済ませる、そしていち早く帰宅した友達の後を追う。


 場所は変わり寮と学園から少し離れた場所にあるファーストフード店。

「話って何?ボクはダイエットしなくちゃいけないから忙しいんだけど」

 そう言って彼女は私が注文したフライドポテトを口に運ぶ。

「ダイエットするんじゃないの?」

「うっさい黙れ」

 唇を尖らせなが文句を言う、ならポテトを食べる手を止めろと心の中で言う。

「……んで話って何?」

 相変わらずせっかちだと思う反面、正直彼女から話を切り出してくれたことは有り難い。

「あの…その……」

 正直切り出されても言葉に詰まる。

 私がもごもごとしていると、彼女は指と口を備え付けのペーパーで拭い優しく私に喋りかけてくれた。

「食べ終わったから帰るね」

 彼女は「御馳走様でした」と言い残し店から出て行った。


 ようやく追い付いた。

「何で帰ったのよ!」

 私は彼女が店を出て直ぐに店を出た。

「おかげで私の大好きなプリンシェイクを思いっ切り振っちゃったじゃない!」

「シェイクだけに?」

「違うよ!確かにそうだけど違うよ!」

 店を出て直ぐに追いかけたのに追いついたのは寮の前だった。

「相変わらずやかましいな、用件を早く言ってくんない?」

 心底面倒臭そうに頭を掻きながら言う。

「散々人に奢らせてなんで何も聞かずに帰るのかな!」

「だって全然喋らないんだもん」

「だもん、じゃないよ!私は怒ってるんだよ!オコだよ!!!」

「オコって言葉は馬鹿って意味だからね……」

「知らないよ!」

「それに寮の前で騒ぐと怒られるよ」

「私が怒ってるんだってば!」

「あなた達…寮の前で何してんの?」

 私が寮の前で文句を言っていると、何時の間にか寮から寮母さんが出てきていた。

「禾那さんは迷惑をしています、あなた達のようなガキが禾那さんに迷惑を掛ける時点で万死に値します解りますか?馬鹿に分かり易いように言ってあげようか?あげるよ!迷惑掛けずにさっさと失せな!」

 この時点で私達は涙目です。

「さっさと自分達の部屋に籠もって勉強しなさいよー」

 私達は俯いて寮の中に入っていった。


「じゃないよ!」

 勢いよく扉を開き中に入る。

「にゅわっ!」

 ガタンと音を立てて椅子から落ちた彼女の姿を確認し、やってもうた的な顔になる。

「だっ……だいじょーぶー?」

 ゆっくりと後ろ手に扉を閉め前に進む。

「…………」

 無言で後頭部を押さえている姿を見て何ともいえない気持ちになった。

「……何してるんですか先輩」

 何時の間にか私の背後をフィーちゃんに取られていた。

「フィーちゃんこれはね……そのっ…痛!ちょっ痛!痛いよ!蹴んないでフィーちゃん!」

 何故だかフィーちゃんにすねを蹴られた。


「何のよう……」

 ご機嫌斜めになってしまった、何故だろう?

「……さっさと用件だけ言って帰って下さい」

「さっきから扱い酷くない!?先輩だよ!私!」

「……先輩…………ふっ」

「酷!」

「……私と先輩はライバルですよ?」

 確かにっと納得してしまった。

「用件がないなら早く部屋に帰れ」

「用件はあるよ!」

 ここでようやく彼女に自分の用件を伝えた。


「で、ボクが海苔ちゃんに勉強を教えればいいと?」

「そゆこと」

 父親との話は殆ど省いたが伝わったようだ。

「それでボクへの見返りは?」

「見返り?」

「そう、報酬とも言うけど……まさかただ働きなんてさせないよね?」


「……友達なら見返りは求めないよ!」

「…………そーだねー」

「まさかの棒読み!?酷いよ!」

 彼女の言葉にはビックリする。

「でも真面目な話海苔ちゃんに勉強を教えるのは無理だよ」

「何で!?報酬ならちゃんと払うよ!」

 またも彼女の言葉にビックリする。

「だって海苔ちゃん……尋常じゃなく馬鹿じゃん」


 その日から私の闘いは始まった。

 毎日のように自習室や図書館、喫茶店で勉強をしてから帰った。

 毎日毎日勉強をした……がしかし。

「全然時間が足りない……」

 もはや涙目になりながら問題を必死に解いていく。

 寮から家に帰ってきた今現在も自室に籠もり問題と向き合っている。

 コンコン、不意に部屋の扉がノックされる。

「お嬢様、旦那様からお電話です」

 テストまで残りわずか、このタイミングでの電話に少し躊躇してしまう。

「……はぁ」

 執事から子機を受け取り、出る。

「『私だ……』」

「お父様……何か御用でしょうか?」

「『勉強の事だ』」

「…………」

「『約束はちゃんと果たしてもらうぞ、お前は昔から何をやっても……』」

 ピッ……ツー、ツー、ツー……。

「お嬢様!?」

 執事が何故かすっとんきょんな声をあげている。

「お父様に伝えておいて……もう電話しないでって」

 私は当然の事を言ったと言わんばかりの表情で執事に告げる。

 あんなに子供心がわからないなんて酷いと思う、普段から家にいないのに父親面するなと言わなかっただけマシだろう。

 私にはお母さんが居ない、三年前に病気で亡くなってしまったからだ。

 お母さんが亡くなった時もお父様は海外で仕事をしていた。

 お父様が帰国したとき、私は言ってしまった。

 「普段から家に居ないで私とお母さんをほったらかしにしているくせに、こういう時だけ父親面しないで」って。

 その時お父様は酷く悲しい顔をしていた。

 私とお父様はまだ一緒にお母さんのお墓参りに行っていない……。


 テストまで残り二日。

 言い忘れたが、ただいまダイエット中である彼女は日に日に野性的に……野生化しつつある、私には関係がないが。

「えっと……うぅん…………わからない」

 ただいま図書館にて物理の問題と格闘中である私はかなり唸っていた。

「……五月蠅いですよ先輩」

 ふと問題集から顔を上げると対面の椅子にいつの間にかフィーちゃんが腰掛けていた。

「……たすけてぇ、ふぃーちゃあん」

 思わず後輩に救いの手を伸ばす、後輩に救いを求めている時点でもはや終わりだ。

「……良いですよ、もとよりそのつもりです」

「へ?」

「……今回のテストで点数取らないと部活を辞めさせられるんですよね?」

「うん……」

「……海苔ちゃん先輩が部活を辞めてしまったら先輩が……あの人が悲しみます、だから助けましょう!」

「ふぃーちゃあん!」

「……勘違いしないで下さいね、別に先輩の為じゃありませんから」

「ツンデレだよぅふぃーちゃあん」

「……帰りますよ?……まったく」

 それから私は残りの二日間全部をフィーちゃんと過ごした。

 その時の話は面倒臭いから割愛させてもらう。

 何故ならこれからが大変だったのだから。


 時は進みテスト最終日放課後。

 全てのテストを今までにないくらいの出来栄えで終了しルンルン気分だ。

「『海苔ちゃんテストどうだった?』」

 部活に向かう途中で吠天先輩とたまたま会った。

「いい感じでしたよ!」

 いい感じだった……一教科を除いては。

 最終日まで散々残ってもらい勉強をしてきたが、唯一数学Bだけ自信がない。

「『……取り敢えず終わったんだから、クヨクヨしないで部活を楽しもうよ』」

「そうですね……ところで夏の合宿で使う貸別荘はどうなりました?」

「『うーんとねー……昨日電話で確認したら貸してくれるって言ってた人が、貸別荘辞めちゃったらしいんだよね』」

「そうなんですか……どうします?」

「『マナの家によるけど使えたらそっちかな?』」

 夏休みまでもうすぐなので心が躍る。

 先輩と話をしていたらいつの間にか部室の前に着いていた……。


「お腹が冷たいよぅ」

「……先輩すみません」

 ただいま居ります所は廊下の水道前に御座います。

 涎まみれのお腹を濡らしたハンカチで拭うボクっ子と、しょんぼりとうなだれている後輩が今私の目の前にいる。

 部活も今日は既にお開きになり先輩二人は帰ってしまった。

「気にしないでいいよ気の迷いってやつだよ」

 しょんぼり中の後輩に優しい言葉を投げかけている。

「大丈夫です殆ど気にしてません」

 バチン、と言う音が聞こえた。

「……かなり気にしてます、ハイ」

 強烈なデコピンを喰らったフィーちゃんは涙目だ。


「……海苔ちゃん先輩、テストはどうでしたか?」

「うん!出来た……と思う!」

「……思うってなんですか思うって」

 後輩は呆れたようにため息を吐いた。

「……私が教えたんですよ?完璧でないと困ります」

 そうは言っても出来ないのが現実である。

「……お父さんを見返すんですよね?頑張って下さい」

「!」

 後輩の思いがけない声援に驚き、一瞬だが涙腺が緩んだ。

「フィーちゃん……」

「……だから勘違いしないで下さい、別に先輩の為じゃありませんから」

 「行きますよ」そう言うと彼女は帰路に着くために歩き出す。

 私はとても優しい後輩を持てた事を何処かの誰かに静かに感謝した。


 またまた日付は進み三日後。

 今日は待ちに待ったテスト返却最終日だ。

 私の学校はテスト後三日以内に全ての教科が返ってくるのだ。

 昨日一昨日とちらほらとは返ってきたのだが、まだ例の数学は返ってきてない。

「次、磯川原」

 担任教師である梅ちゃん先生に呼ばれ前に行く。

「数学数学現国日本史物理、全部あるか確認しなさい」

 一、二、三、四、五、全部間違いなくある。

「じゃあ次……」


「テストの解答をしっかりと見て間違いなどがあれば担当教科の先生の所へ今日中に持って行きなさい、これでHRを終わりにする」

 先生の声が遠くから聞こえる。


 次の日は日曜日。

 毎週日曜日恒例の実家帰宅。

 今回は手土産にテストを持っている。

「……絶対お父様は認めてくれないな」

 迎えに来てくれた金持ちの代名詞的な車に乗りながら、気分が憂鬱になることを考える。

 テストの結果、一言で言えば良かった。

 基本的な科目なら全て八十点以上……しかしやはり数学Bが少し悪かった。

 点数にすれば六十とちょっと、しかし私の父親は甘くない。

 一教科でも低ければ部活を辞めろと言うだろう。

「……はぁ」

 電話の向こう側に居る相手なら誤魔化せる可能性があるが、残念ながら不可能だろう。 こういう時に限ってテレビ電話にするほどの勘の良さを持っている、私の父はそういう人なのだ。

 色々考えていたらいつの間にか家の着いていた。

「お嬢様、旦那様が」

「わかった、今行く」

 遅かれ早かれ電話が来るとは思っていたが、帰ってきて早々のタイミングなので驚いている。

 取り敢えずテストを全て持ちお父様の書斎へ向かう、テレビ電話はお父様の書斎にあるからだ。


 書斎は私の部屋に近いので直ぐに行ける。

 主が不在の部屋は何処か寂しい。

 私は久し振りに書斎の扉を開いた。

「部屋に入るときにはノックをしろと言ってあるはずだが?」

 どうやら最近のテレビ電話はノックをしたかどうかを感知するようだ、しかも最近のテレビ電話は立体的に人を映すことが出来るようで、あたかも父親がそこに居るように見える。

「聞いているのか?宇美」

「何時帰ってきたのですか?お父様」

 何故か今海外に居るはずの父親が目の前に座っていた。

「ノックをしろ、帰ってきたらただいまだろ。そんなことも出来ないのか?」

「旦那様、お嬢様は突然の出来事のため混乱なさっているのです」

「そうか……」

 予想外過ぎて嘔吐しそうだ。

「宇美落ち着いたか?」

 だから嘔吐しそうである。

「早速だがテストを見せなさい」

 暴れる胃の内容物を抑えながらお父様にテストを渡す。

 お父様はテストを受け取り目を通していく。

「旦那様、わかっていますよね?」

「うむむ……」

 何をわかっているのだろうか、私のお昼ご飯だろうか。

「……今回のテスト頑張ったようだな、よくやった…」

 …………は?

「…………は?」

 ついつい考えが口から出て来てしまった。

 予想外過ぎる言葉に度肝を抜かれて戻されたような感覚が襲った。

 何故あのお父様があの成績で私を褒めたのか、褒めるためにわざわざ帰国したのか。

 正直にまどろっこしい事を抜きにして言えば。

「海外で何か変な物でも食べた?すごい気持ち悪いよお父さん」

「んな!久々に会った父親に向かって気持ち悪いよとは何だ!あとお父さんじゃなくてお父様と呼びなさいと言ったはずだ!」

「すみませんお父様……つい」

「たくっ……あの人に言われなければ帰ってくるのはもう少し先だったのに、褒めることだって……」

 どうやらお父様は誰かに言われ帰国し誰かに言われ私を褒めたらしい。

「正直に言うぞ……」

 いつもの調子に戻ったらしい、だが先程行いにより威厳もへったくれも無い。

「今回のテスト、頑張ったようだがまだまだ甘い、こんな事じゃ後々ついていけなくなるぞ……だが頑張りは褒めてやる」

 やっぱり褒めることにしたらしい。

「部活は辞めなくて良い、その代わり次もしっかりやるんだぞ」

「はい……頑張ります」

「旦那様、何かご褒美を……」

「……そうだな、宇美何か欲しい物はあるか?」

 話が私を置いて進み過ぎていて訳が分からない、ご褒美?何それオイシイノ?

「無いのか?」

「急に言われても……そうだ!」

 ここで私はナイスなアイデアを思いつく。

「二つあるのですが良いですか?」

「二つか……言ってみなさい」

「夏休みに部活で合宿をするので海の近くにある旅館を手配して下さい」

「……いいだろう、もう一つは?」

「お父様と一緒に」

 私はここで前々から言いたかったことを言った。


「お父様と一緒にお母さんのお墓参りに行きたいです」



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