テンションアップダウン第一回桜を見に行く前に
春だからと言う理由で花見に行くのはなんとも言えない感じがする。別にわざわざ自らあんなうるさい場所に行かなくてもいいと思う、なのに……。
「今は七分咲きだからもう少しで満開ですね」
「そうね、何を持って行こうかしら?あっ、お弁当はお願い」
いやいやいやボクにお願いされても……。
そもそも誰も行くなんて……。
「もちろん行かない、なんて言わないよね?」
「人の考えを見透かしたようなことを言わないでください」
事実だが。
「だってこの中にいる人で料理が出来るのあなただけじゃない」
ボクは部屋の中にいるメンバーを見渡す。昨日の一暴れの後片付けが済んだボクの部屋に各々好き勝手に座っている。
先輩は勉強机に付属の椅子に座っていり、フィーはボクのベットの上、ボクはクッションに、海苔ちゃんは床に正座をしている。
「確かにボク以外に料理が出来る人はいませんけど…」
「……私は一応少しは出来るけど…」
「ダメだよ!フィーが包丁を使って怪我したら、その包丁を作った人を葬らなくちゃいけなくなるんだよ!」
ボクが鼻息荒く熱弁を振るうと、先輩は呆れながら「だからあなたしかいないのよ」と言う。
「それにもう一人の方はなんか……手遅れだし、責任も取らないと」
目線だけを動かし見た先には、海苔ちゃんだった者が座りながらぶつぶつと何かをつぶやいている。
「あなたはとても可愛いらしい女の子ですあなたはとても可愛いらしい女の子ですあなたはとても可愛いらしい女の子ですあなたはとても可愛いらしい女の子です……」
昨日は少しやりすぎたかな?と思いつつ話を戻す。
「でもボクそういう人混みにはちょっと……」
嘘ではない。
まだ渋るボクに先輩は王手となる秘密兵器……でもないが、とりあえずボクに有効な技で攻めて来た。
「フィーちゃんやっておしまい」
どこの敵キャラだよ!と言うボクの心の中でのツッコミをそのままにフィーはボクの目の前に腰を下ろす。
「なっなんだ?なにがした……」
「……私達と一緒にお花見に行きましょ、手作りのお弁当が沢山食べたいなー……私と行くの嫌ですか?」
「ふぐっ!!」
正直耐えられません、だって可愛い過ぎるんだもん!!
「わかったよ……一緒に行く……」
熱くなった顔を下に向ける。椅子に座っている先輩がガッツポーズを取っているのが視界の隅に映った。