テンションアップダウン第二回お釣り
自動販売機はどの高校にも基本的に存在する。
自動販売機は機械だそして色々な怪談に登場するくらい、奇怪だ。
最初に言っておく!
機械に間違いはないと言う人がいたら今すぐボクの所に来なさい……以上!
「暑いなぁ」
まだまだゴールデンウィークが終わったばかりで、夏にはもう少し足りない季節に、三十度近い暑さを誇らしげな太陽が主張する。
「やっぱり、体育の後はのどが渇くなぁー」
独り階段の自動販売機前で唸るように呻くボク。
のどが渇いた時、ボクは何時も水道水をがぶ飲みするのだが……。
「男らしい飲みっぷり……か」
前回の体育後に水をがぶ飲みしていたら下級生の子に言われて以来、水をお淑やかに飲む事に挑戦して来たが……。
「水を飲むが格好いいって言われたら……」
そりゃ飲めなくなる。
「出費は痛いが背に腹は代えられない!」
体育着のポケットから百円硬貨を取り出し機械に投入する。
「やっぱり飲むなら……」
可愛い子が飲む飲み物と言えば、それは一つ。
「缶のココア!」
ぴっ!……ガチョンと音を出しながらココアが出て来る。
続いてお釣りが落ちてくる。
「……あれ?」
ココアは落ちてきたが、お釣りが落ちてこない。
「故障か?」
機械の側面を叩いてみる、するとチャリンチャリンチャリンとちゃんと硬貨が落下してきた……。
……枚数が増えた状態で。
「今度は増えたぞ!?」
本来のお釣りは二十円、しかし落ちてきたのは三十円。
「……まぁいいか」
面倒なのでお釣りをポケットに仕舞おうとしたとき頭の中の「ボク天使」が囁きかける。
「駄目だよネコババしちゃ!事務室に行ってお金を返そう!」
「やっぱりそうするべきだよね」
ポケットに入れようとしていた硬貨を握り事務室に向けて歩き出す……前に悪魔登場。
「たかだか十円位構わないだろ?気にすんなよ!レッツポケット!」
「面倒臭いからなぁ……」
再びポケットに入れようするがやはり出てくる天使さん。
「すとっぷですよ!二流の悪魔に騙されてはいけません!」
「そっちこそ騙そうとするなよな二流天使!」
どちらが二流でも関係ないだろう、本体は一つ……このボクなのだから。
「事務室に行くべきよ!」
「いいやポケットだね!」
「事務室よ」
「ポケットだ!」
「事務室!」
「ポケット!」
「事務!」
「ポケ!」
「事!」
「ポ!」
「頭の中で騒ぐなよ!」
頭がこんがらがってしまい思わず走り出してしまう。
「それで飲み物を置いてきたあげく誰かに盗られ、十円も握りしめたまま」
教室に着いたボクは先輩に相談してみた。
「ボクはどうすればよかったんですか?」
「そんなの簡単よ」
先輩は当然と言いたげな顔になり一言。
「自販機の中に入れて次の人が気づかなければその人が対処しなければならなくなるようにすればいいのよ!」
天使と悪魔も沈黙である。