ⅵ.京の都とチュートリアルと娘さん
修羅は【鏡の双子】の能力で出来た鏡を通った。異世界へと繋がる鏡の通路。その入り口となった鏡を。
そして修羅は気が付くと見知らぬ場所にいた。
なにやら辺りはとても活気で賑わっていて、人が多い場所である。
「あれ?ここは……どこだ?」
修羅はそこから出てきたと思われる自分の後ろを振り返った。
振り返った先には、小さな池と庭付きの古い御堂が一つ。ただそれだけ。
修羅がいた世界はどこにも見当たらない。
修羅は周りを見渡す。
そこはとても人が多い場所。
お店がたくさん立ち並び、お客がその店たちと商品たちの品定めをしたり、友達や近しい者たち同士で談笑したりしているのが見られる。
「あんれ~?お兄さんどうしたの?道にでも迷った~?」
辺りを見ていると、突然白と浅葱の和服を着た少女が声をかけてきた。年のころは12頃。好奇心が旺盛そうだ。
修羅は自分はそんなにキョロキョロとあたりを見回していただろうか、と思ったがなにもいわず、
「まぁ、そのようなものだね。」
という。
「くすくすくすくすっ♪な~んてね♪異世界ツアーの参加者さん♪確か名前は…夢旅 修羅。僕の名前は紫苑。遊月 紫苑です。」
少女は愉快そうに楽しげに、にっこりと笑って自己紹介をする。
「あなたは…月持ちの方か?」
月持ちとは、修羅の産れた国で、特別な力があるもの、神や創造主に気に入られた不老長寿な者達などのことを指して言う言葉である。
修羅は少女が自分を異世界ツアーの参加者と知っていること、少女の名乗った名字が“遊月”だということからこう推測したのだ。
「あははははっ♪そうとも言えるし、そうでもないともいえる。僕は自由気ままに旅する大人になりきれなかった子供の成れの果て?いや、まだその途中。だって僕はまだこどもだしぃ~♪キャハハハハハッ♪ま、そんなことはどうでもいい。」
「よく聞きなよ?夢旅修羅。ここは日本という国の京都という町。文化人たちが数多く集まる雅な都。この日の本の国の中心さ。文化と地理的にはね。あ、言葉はまわりとちゃ~んと通じる。創造主、ノアは貴方たちをそういう風に創ったからね♪道がわからなかったらそこらへんの人に聞けばいい。
あ、そうそう。時代背景的には戦乱の時代の中期から末期ごろ。戦国時代と呼ばれているのが今のこの世界のこの国の時代。できればただ一国だけに味方するなんてしちゃいけないよ?出来るだけしちゃいけないよ?だって未来を変える可能性があるからね。
あ、ちなみに屋内は土足現金。靴は脱いであがりなよ?お金は…50両くらいあれば当面は足りるかな?それで簡易的な旅支度もやれば出来ると思うよ?古着は捨てずに売る事。物は大切にがここの信条。字は月猫の字が日本語と呼ばれているものだけど、ここはそれの原型よりも字が古い。兎の字は漢文、漢民族と呼ばれる大陸の文字を基にしてあるからそっちの方が通じるかも。でも、早めに師を見つけた方がいい。字が読めないといろいろと困るからね。
ん~、と、あとは~…おいおい。僕が思い出したらでいいよね?
あ、ちなみにお金だけど、10万ルナ=1両だと思えばいいよ?んじゃ、質問は受け付けないけど、理解はできた?」
「あ、ああ。ぎりぎり、な。」
「ふふふっ♪そっ♪んじゃねぇ~♪バイビ~♪」
「あっ、消えた。」
「どいた!どいたどいた!!」
声とともに男(飛脚)が荷物を肩に担いで走り過ぎて行く。
修羅はそれにぶつかりそうになる。
「うおっ!!あっぶね~!」
「おや、あんさんこの近所の人やないねぇ?」
声のした方をみると、小ざっぱりとした感じの清楚な(京風)美人の女性がいた。
「あ、はい。わたしは旅の者。この界隈には今日着きました。」
「ほんならあの天守閣の在るお城には近づかん方がええで?なんでも、ごっつ悪賢い性悪狸がおるそうやさいかいな。あんさん、近づいたら有り金ぜ~んぶ盗られてしまうで?」
「ご親切にどうもありがとうございます。(にこっ)」
「(ぽっ///なにこん人!?めっちゃ優しゅうてカッコいいやないの!?)」
「あ、あの・・・よかったらうちでゆっくりしていってください。うち、団子屋やってはりますねん。美味しい三食団子と中だれ団子っちゅう団子が評判なんどす。あ、あの…だから…」
「それはそれは…、ちょうど小腹が空いていたところです。では、お言葉に甘えさせていただきますね?お綺麗で可愛らしい春の桜のようなお嬢さん。」
「は…はい(///桜の様だなんて…)」
修羅は団子屋の看板娘の御嬢さんを誑し込んだようだ。無自覚に。
御嬢さんの容姿は、黒髪の京風美人。
ちなみにお金の価値ですが、
一円=一ルナ
10万円=10万ルナ=一両
…です。
つまり、紫苑少女は修羅に50万両ほど渡したわけですから、修羅の持ち金は500万円ぐらい、となります。
10万円=一両は、江戸時代ごろのお金の価値。
学校の資料集の隅のほうにひっそりと載っていました。