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Ⅱ.三か月後・・・。

余り進みません。悪しからず。

 幻夜と鏡夜の二人は、ノアに魔改造された自分の体と能力を確かめる為、修行を開始した。最初は上手くいかず、自暴自棄になったり喧嘩したりしたけども、次第にコツをつかみ、世界に漂う魔力をその目に映して、媒介がなくとも道が開けるようになっていた。双子特製転移魔法の完成である。だが、まだまだ使う度に肉体の疲労がある。

 鏡夜と幻夜の二人は故郷である銀雪島から場所を変えることにした。修行中の偶然あけてしまった道を通って、神々の神域へと至る道、狭間の空間へと。

そして、そこでも修行を続けて………三ヶ月後。



「ふぅ、これでいいでしょう」


鏡夜は汗を拭いて目の前にそびえ立つ巨大な鏡を見上げた。その隣で幻夜が嬉しそうに跳ね回る。


「やっとできたね~。鏡兄ぃ~」

「ああ、やっとだ」


双子は三か月前から現在に至るまでの過程を、万感の思いを込めて振り返る。


双子は把握が完了してみて驚いた。なんせ妖族として今まで生まれ持った能力は、鏡の中を渡れるだけ、鏡の中に入って人を騙したり、リンゴなどの小物を運んだり、声を届けたりなど、ちょっと色々出来るだけ。他人を運ぶためには、ある鏡から鏡の中の通路を伝ってまた別の鏡に、そこから外へ―――というようにまるで空港の飛行機乗継を何重にも経由するがごとくしち面倒臭い手順を踏んでやっと出来た。更に一日の人数制限まであったのだが、制限がなくなって、ある次元から別の次元へ、ある時代からまた別の時代へ、世界から世界へといろんなトコロに、鏡を媒介にして自由自在に狭間や境界などを通って行けるようになってのだ。まさに移動や旅行に特化した能力である。―――余談だが、幻夜と鏡夜の二人はは三ヶ月のうちに慣れない狭間にも慣れて、家まで建ててしまった。


ノアが誕生日プレゼントという爆弾を落として魔改造を施しやがった能力を把握し、修行するだけならこんなに時間は掛からなかった。一ヶ月もあれば十分である。だが双子は修行の合間にイベントの企画もやっていたので、魔改造された能力の完全習得までこんなにも時間がかかってしまったのだ。


なにをやるのかというイベントの構想を練り、安全性を考慮しつつ実現可能かを調べ、お客様の心を掴むキャッチフレーズと収益を考える。イベントというのはある意味商売やお祭りのようなものである。月夜げつやの人々は祭りが好きだ。手を抜こうものなら八つ裂きにされかねない。幻夜と鏡夜の同族である妖族たちはまだいい。族長である妖姫(あやしひめ)雪那(せつな)の能力で氷漬けにされて一ヶ月放置されるだけで済むからだ。コワイのは他である。誇りと遊びを何より尊ぶ龍族は怒り狂って雷を落とし、月夜国の軍部の大部分を占める月兎族の武闘派集団と月猫族には揃って海につき落され、人魚は呪歌を唄い、魔法使いはお得意の怪しげな薬を箒に乗って国中にばらまき災厄をばら撒くであろう。魔界と冥府を統括している大人しい性格の魔王ですら地獄の淵を開いて手招きするだろう。


月夜国で祭りに手を抜くことなどありえない。遊びを全力で楽しめないなんてありえない。というか、全力で楽しめない祭り(あそび)を企画すること自体が自殺行為なのだ。手を抜く事なんてできようものか。いや、出来はしない。月夜の者が“遊び”にかける情熱は何度転生してやりなおしたとしても変えられないくらい業が深いものなのだから。


「さて。それでは王城に行って王の許可を貰いに行きましょうか」

「え~? なんの許可なのだ~? イベント開催の許可なら、いらないんじゃなかったのか~?」


おもむろに腰を上げた兄に、手鏡を弄って能力の調子を確かめていた幻夜は首を傾げて記憶をたどる。


「ああ。(あるじ)こと、朧月ろうげつ様が私たちにイベント開催券を渡した時点では、な。ちょうど一週間前だ。大きなイベントを開催する時は王の許可が居るようになったらしい。先ほどカードの表側の注意事項欄に浮かび上がってきた」


そういって鏡夜はぴらっと黄金色をおびたカードの裏を弟に提示する。


「へぇ~。ほんとうだ~」


感心と驚きがない交ぜになった声をあげて幻夜はふと聞きなれない名称に小首を傾げた。


「あれ~? 朧月って、主の名前のひとつ~?」

「今の名前の名字だそうだ。名前の一つでもあり、偽名の一つでもあるらしい。この前来た時に教えてくださった」


創造主ノアは気まぐれ者の遊び好きな困った子供で、名前すら気分によって季節や日によって着せ替える服のようにころころ変える。ただ、『ノア』という名前は気に入っているらしく、鏡夜たちの世界に残っている文献の数々には決まってその名で記されているとか、いないとか。


「へ~。朧月様か~。あの方にぴったりだね~。だって、あのひと、掴みどころないものら~!」


だけど改名癖と放浪癖と遊び好きの悪癖が治ったわけではなく、ノアに関する様々な話題は尽きない。この世界の神は揃って人に近い存在だ。ちなみに広義的には千歳を超えた幻夜と鏡夜の二人も神の一柱である。まだまだ新米のペーペー雑用係の木端ひとかけらもいいところの新人社員的な存在だが。


「ああ、そういえばそうだな。まぁ、私達の前では大概、お茶らけているというか、色々とハッ茶けているのだそうだが。………で、話を戻すぞ! 私達が企画したイベントは、かなり規模が大きいものだと解るな?」

「そりゃそうなのだ~! なんせ、時空や次元、世界や時代まで行き来しちゃえる~。そんな企画なのらから~!!」


幻夜はその場で拳をあげて元気良く力説する。


「そうだ。それでだ、大きいイベントならばなぜ王の許可が必要になったかというと、国の人口がこの三か月のうちに一気に増えたからだそうだ」

「ああ~、春だから月兎族あたりの繁殖期だものね~。なにかと交流の深い月猫たちも釣られたとかそんなとこなのら~?」

「そうだ。だからそれに伴って、イベントも増え、色々と処理しきれなくなった為の処置なんだと」

「色々と~?」


「ああ、色々と、だ。」


「それで、堪りかねた王や官吏たちが、戦ごととか、大人数が参加できる大きなイベントだけでも王の承認が必要なことにしよう。そうすれば少しは減るかもしれない、とな」


「ふ~ん? それじゃあ、さっそく承認を貰いに蒼い王様のところに行こう~!!」


「ちょっと待て! お前、解ってないだろう? それにいくのはこの開催券に色々と書いてからだ」


鏡夜は羽ペンを探しながらカードを持って叫ぶ。


1、このゲームでなにがあったとしても責任をとること。イエスorノー? イエス。

2、開催期間を決めよ。

3、イベントの名称は?

4、イベントの呼び込み文を書け。

5、イベントの詳細なルールと内容を……(以下略)


―――――そんな項目がずらずらっとB5用紙並みの大きさの紙に書かれていて記入しなければならなかったのだ。


「え~、早く書いてよ~! 鏡兄ぃ~! そんでもって早く行こうよ~!」

「まてっ、まて、揺らすな。字がにじむ。歪むから待て」

「はーやーくーなのら~!」


待ちきれないと肩を掴んでぐらぐら揺らしてくる幻夜を押しのけて必要事項を記入する。


「・・・・・よし。できた。じゃあ、王城、基、蒼月の館に向けて行こうか。」

「レッツ、ゴ~!!」


イベント開催まであと少し。




次は王城です。といううか、王の館です。


そして、主人公、・・・次くらいに出せたらいいなぁ。

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