ぷろろーぐ
一話からのお話が分かりづらいようなので、ぷろろーぐ付け足してみました。
宜しくお願いします。
神と人の距離が近い世界があった。
人外と人間が共存する世界があった。
魔法と科学が共存する世界があった。
武力と知力が共存する世界があった。
人は言った。
「この世界、少々いろんな種族と能力と願望を詰め込み過ぎてはいないか」と。
創造主である子供は笑い、御付きの黒猫は言った。
「だがそれがいい。人間らしく矛盾していて末永く楽しめそうじゃないか」と。
人は言った。
「お前ら人外だろうが。この世界に住む人間のことも考えやがれ。ややこしくて仕方がないだろうが。何様のつもりだ」
猫と子供は言い返す。
「人間など知らん。滅ぶなら勝手に滅べ。オレらは人間にされた仕打ちを忘れない」
「僕らは“ヒトであって人でなし。されどひとであらねばならぬモノ”。楽しければそれでいい。愛しい我が子らが四苦八苦して生きていくさまを眺められるならばそれでいい。なにより―――」
白き衣を纏った子供とその腕に抱えられた猫は互いに目を見かわして優しく笑い合う。
「「我らのヒマツブシと生きる糧になってくれるならば、それにこしたことはない。一興一興」」
そしてカラカラと楽しげに笑った。
「遊びをせんとや」
人は絶句し、頭を抱えて喚けども、
「まどいせん」
創造主の子供とはじまりの猫はうっそり笑うばかりなり。
暫らくして問いかけた名も無き人はなくなった。子供は自身の世界を観察することで遊び学び遊戯と為す。猫はその世界で子供の為に役を演じ始め、地位と名声と居場所を獲得していった。
これは、月と太陽と星の三国のお話。
だけど、これから語られるのはまた別のお話。
国が成立し、人口が増え、子供と猫が長い永い遊びを始めてから数千年が経った後のお話。
これは後に、この月と太陽と星の三国が織りなす世界から、創造主の子供が自分の育った国に見立てて試験的に創った異世界に渡り、歴史の隅に秘かに名を残すこととなった一匹の夢見る兎のお話である。