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<時空の乱れを検知しました>


<異端審問官はただちに原因を調査・修正してください>



 平原に紅白の軍勢が対峙していた。

 兵数はどちらも千人ほどで、色の違いはあれど軍容は似たようなものだった。

 今はお互いに将軍の号令を待ちつつ相手を睨んでいた。

 示し合わせたように同時に角笛が鳴り響き、兵たちの間から鬨の声が上がった。

 先頭の歩兵の槍が交差しようとしたその時、両軍の真ん中に光の柱が突如として出現した。

 すわ敵の魔法か、と両軍は動きを止める。

 光が薄れると、そこには二人の人物がいた。

『ただちに戦闘を停止しなさい。これより神の名のもとに異端審問を開始します』

 二人のうちの一人、頭の上に輪っかを浮かせ翼を背負った、明らかに天使な存在が言った。

「な、なんだお前は! 敵か!?」

 赤軍の方の兵士が天使に槍を突きつけて威嚇した。

『不敬』

 天使が指を突きつけると、空から雷が降ってきて、兵士を黒焦げにした。

 兵士たちが恐れおののく中、天使がはたと手を打った。

『私が人の争いに手を出してしまっては不公平になりますね』

 天使は身を翻すと白軍の不幸な兵士を指さした。再び雷が落ち、死体が増えた。

『これで公平です』

 今や言葉を発するものはいなかった。その様子に天使は満足した。

『さあ、異端審問官殿、出番です』

 それまで天使の影に隠れていたセーラー服を着た少女が前に出て宣言する。

「そ、それでは、これより異端審問を開始いたします!」

 どうしてこうなった。

 少女は心の中でひとりごちた。



 スマホでラノベを読みながら学校から帰宅していたところ、暴走したトラックにはねられて死んだ。

 死ぬ瞬間に思ったのは家族のことではなく、異世界転生のテンプレートみたいだな、だった。

 そして目覚めたら目の前に天使がいて、異端審問を手伝ってほしいと言われた。

「ど、どうしてボクが選ばれたんですか」

『あなたは専門家でしょう?』

「宗教とか全然詳しくないのですが」

『ああ、あなたの世界の異端審問とは意味が違います。異端審問というのは――』

 異世界転生者を裁くことです。



 短い回想が終わり現実へと戻ってくる。紅白の兵士たちは戸惑った様子で立ち尽くしている。

 ちらちらとこちらを見てくるが、話しかける勇気はないらしい。

「えーと、それでボクは何をすれば?」

『異端審問には三つの解が必要になります。転生者が誰か、何のスキルを使ったか、どうしてチートを行ったか、です』

 推理小説風に言い換えると犯人、凶器、動機、だろうか。

 周囲には紅白の印を身に着けた兵隊がたくさんいる。

「……すごくたくさん人がいるのですが。一回目にしては難易度が高すぎませんか。チュートリアル的なものはないのですか」

『ご安心を』

 天使が大きな胸に手を当てる。

『いざとなったらこの場にいる人間を殲滅するだけです』

 安心できる要素が欠片もなかった。

「そいつは穏やかじゃねえな」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 紅白の陣営から立派な身なりの人物がそれぞれ前に出てきた。

「あ、あなたたちは?」

「赤軍の将軍だ」

「白軍の将軍です」

「「なんでも協力するから皆殺しはやめてくれ(ください)」」

 そういうことになった。

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