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<時空の乱れを検知しました>
<異端審問官はただちに原因を調査・修正してください>
*
平原に紅白の軍勢が対峙していた。
兵数はどちらも千人ほどで、色の違いはあれど軍容は似たようなものだった。
今はお互いに将軍の号令を待ちつつ相手を睨んでいた。
示し合わせたように同時に角笛が鳴り響き、兵たちの間から鬨の声が上がった。
先頭の歩兵の槍が交差しようとしたその時、両軍の真ん中に光の柱が突如として出現した。
すわ敵の魔法か、と両軍は動きを止める。
光が薄れると、そこには二人の人物がいた。
『ただちに戦闘を停止しなさい。これより神の名のもとに異端審問を開始します』
二人のうちの一人、頭の上に輪っかを浮かせ翼を背負った、明らかに天使な存在が言った。
「な、なんだお前は! 敵か!?」
赤軍の方の兵士が天使に槍を突きつけて威嚇した。
『不敬』
天使が指を突きつけると、空から雷が降ってきて、兵士を黒焦げにした。
兵士たちが恐れおののく中、天使がはたと手を打った。
『私が人の争いに手を出してしまっては不公平になりますね』
天使は身を翻すと白軍の不幸な兵士を指さした。再び雷が落ち、死体が増えた。
『これで公平です』
今や言葉を発するものはいなかった。その様子に天使は満足した。
『さあ、異端審問官殿、出番です』
それまで天使の影に隠れていたセーラー服を着た少女が前に出て宣言する。
「そ、それでは、これより異端審問を開始いたします!」
どうしてこうなった。
少女は心の中でひとりごちた。
*
スマホでラノベを読みながら学校から帰宅していたところ、暴走したトラックにはねられて死んだ。
死ぬ瞬間に思ったのは家族のことではなく、異世界転生のテンプレートみたいだな、だった。
そして目覚めたら目の前に天使がいて、異端審問を手伝ってほしいと言われた。
「ど、どうしてボクが選ばれたんですか」
『あなたは専門家でしょう?』
「宗教とか全然詳しくないのですが」
『ああ、あなたの世界の異端審問とは意味が違います。異端審問というのは――』
異世界転生者を裁くことです。
*
短い回想が終わり現実へと戻ってくる。紅白の兵士たちは戸惑った様子で立ち尽くしている。
ちらちらとこちらを見てくるが、話しかける勇気はないらしい。
「えーと、それでボクは何をすれば?」
『異端審問には三つの解が必要になります。転生者が誰か、何のスキルを使ったか、どうしてチートを行ったか、です』
推理小説風に言い換えると犯人、凶器、動機、だろうか。
周囲には紅白の印を身に着けた兵隊がたくさんいる。
「……すごくたくさん人がいるのですが。一回目にしては難易度が高すぎませんか。チュートリアル的なものはないのですか」
『ご安心を』
天使が大きな胸に手を当てる。
『いざとなったらこの場にいる人間を殲滅するだけです』
安心できる要素が欠片もなかった。
「そいつは穏やかじゃねえな」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
紅白の陣営から立派な身なりの人物がそれぞれ前に出てきた。
「あ、あなたたちは?」
「赤軍の将軍だ」
「白軍の将軍です」
「「なんでも協力するから皆殺しはやめてくれ(ください)」」
そういうことになった。




