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息も出来ない  作者: 月丘 翠
沙樹side
7/15

いただきます、イチゴタルト

「おはよ」


翌日集合場所に行くと、すでに数名が来ていた。

早乙女も来ている。

私服姿は初めてだが、やはり服のセンスもいい。

黒のジャケットに黒のパンツ、かちっとした装いが本人の雰囲気にもよく合っている。


隣には望月が立っていて、早乙女に話しかけている。

ちらりと沙樹を見て勝ち誇った顔をしている。

望月も美人なので二人が並ぶと、美男美女のカップルといった感じだ。


「望月はすでに彼女気取りだね」

真理はふんと鼻を鳴らした。

「美人だからお似合いだよね」

「何言ってんの、そんな弱気じゃダメでしょ」

「いや、そうはいっても」

「ダメ!気持ちで負けちゃ!」


真理はそういうと、さり気なく早乙女の近くまで沙樹を連れて行こうとするが、早乙女ファンと望月にブロックされて近づけない。

その後、カラオケへ移動したが、早乙女の隣もがっちり取られてしまい、沙樹と真理は端に押しやられてしまった。

早乙女は「俺はいい」と歌うのは拒否していた。

早乙女の歌を聞くことも出来ず、ただ元気な男子が交代で今流行りの曲を歌っているのを聞きながら、ひたすら手拍子をうつ。


(これはなんの時間…)

沙樹は少し疲れてお手洗いに行くことにした。


洗面台でリップクリームを塗っていると、望月が入ってきた。


「あら、浦田さん」

「あぁ、どうも・・」


元々コミュ障な沙樹はこういう時に上手く言葉が出ない。


「ねぇ、早乙女君と私、似合ってると思わない?」

「あ、はぁ」

「人それぞれ身の丈に合った人と付き合うのが一番なのよ」


鏡を見てヘアスタイルを直しながら、そういうと望月はにこっと笑って去っていった。

早乙女はお前に不釣り合いだと言いたいのだろう。


(そんなことわかってるよ)


沙樹は、鏡に映った自分を見た。

「身の丈か・・」

そこには自信なさげに泣きそうな顔の女の子が映っていた。


カラオケを出ると、そのまま帰宅する組と晩御飯に行く組に分かれることになった。

沙樹はもちろん帰宅する組だ。

望月や早乙女はご飯を食べに行くようだ。


「沙樹、元気ないね」

「え?そんなことないよ」

「ねぇ。ちょっと二人でお茶して帰ろうよ、まだ17時だしさ。私のおススメのイチゴタルトの店があるからさ。沙樹、いちご好きでしょ?」

「・・・うん。ちょっとお茶して帰ろうかな」


「じゃあ俺もいいか」


振り返ると早乙女が立っている。


「・・・」

一瞬、真理も沙樹も驚きで言葉に詰まる。


「ダメなのか?」

「いや、全然。ねぇ、沙樹?」

「あ、うん。もちろん」


「早乙女君がお茶に行くなら私も」

振り返ると望月が立っている。

無理矢理にでも望月もついていくぞという圧がすごい。

「望月はさっきご飯にいくと言っていただろ?お店に電話してたから今更行かないのはよくないと思うぞ」

早乙女がはっきりそう言うと、望月は何も言えず、すごすごと引き下がっていった。

その時にまた恨みがましく望月は沙樹を睨んでいたが、やがて男子たちに「行こう」と促されていなくなった。


イチゴタルトは美味しい・・・

美味しいはずだが、味がしない気がする。

早乙女はブラックコーヒーとタルトをじっくり味わっているようだ。

全くというほど会話が弾まない。

真理と沙樹はアイコンタクトでどうする?と言いあって、真理が勇気を出して早乙女に話題をふった。


「あ、あのさ、早乙女君はどうしてお茶に?」

「来ない方がよかったか?」

「そうじゃなくて、なんか意外だなって」


「・・いちご好きだからだ」


「え?」

「いちご好きなんだよ」

早乙女の顔が少し赤くなっている。恥ずかしかったらしい。


「ふふふ」

なんだか照れている早乙女がおかしくて、真理と沙樹は目を合わせて笑ってしまった。


「そんな変か」

「全然そんなことないよ、ねぇ沙樹?」

「うん。意外だっただけ。早乙女君ってクールって感じだから、いちご好きってのがなんだかイメージになくて」

「変なイメージ作るなよ」と早乙女は小さくつぶやくと、照れているのを誤魔化すようにイチゴタルトを頬張った。


そこからは少しずつ打ち解けて、会話が弾んだ。

早乙女はクールというより照れ屋なだけということや、好きな本はミステリー、苦手なものはピーマンと子供っぽいところまでわかった。


「もう19時だ。そろそろ帰ろうか」

真理は出る前にお手洗いにいくと去ってしまい、早乙女と二人っきりになった。

静かな時間が流れ、店のBGMがはっきりと聞こえる。


「そのワンピース」

「え?変?このワンピース」

「いやそうじゃなくって・・・」

早乙女が何かを言おうとしたら、真理が帰ってきた。

早乙女はその先を続けることはなく、お会計を済ませて店を出た。


「楽しかったね」

真理は満足そうに早乙女と沙樹を見ている。


「ねぇ、早乙女君、良ければ連絡先交換しない?」

真理が大胆なことを言い出した。

絶対断られると思ったが、案外すんなり「別にいいけど」といって交換できた。

スマホを持つ手が少し震える。

LINEの連絡先に早乙女という名前が増えた。

思わず少しにやけてしまう。

「じゃあな」

そういうと早乙女は帰って行った。


「沙樹、これは進展したね!」

「真理のおかげだよ」

「持つべきものは親友でしょ?」

真理はにやっと笑った。


真理とも別れ、家に向かっていると、スマホが震えた。

“早乙女”という通知が来ている。

震える手で開くと、“ワンピース似合ってる”それだけが書かれていた。

あの時、ワンピースが似合っていると言いたかったらしい。

今日は楽しかったとか色々他にもつけることあるはずなのに、それだけを送ってくるのが早乙女らしい。

沙樹は頬を赤く染め、鼻歌を歌いながら帰った。


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