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息も出来ない  作者: 月丘 翠
早乙女side
13/15

おいしい、王子様

早乙女は集合場所に着いたが、まだ沙樹は来ていないようだ。


(来ないってこともあるのかな・・・)


早乙女は話しかけてくる奴らを交わしながら、沙樹が来るであろう方向を見ていた。

来なかったらどうしようとソワソワした気持ちになってくる。


すると、白のロングワンピースを着た沙樹がやってきた。

早乙女は、息をのんだ。


(可愛すぎる)


望月がやたら話しかけてくるが、早乙女の目には沙樹しか入ってこない。


(お姫様みたい)


カラオケに入っていくと、なぜか奥に押し込められ、仲良くもない女子たちに囲まれてしまった。

沙樹は奥の端の席にいる。


(カラオケなんて苦手な場所に我慢してきたのに・・・)


早乙女は「俺はいい」と歌うのは拒否した。

そうなると、ただ元気な男子が交代で今流行りの曲を歌っているのを聞きながら、ひたすら適当に手拍子をうつしかない。

憂鬱になりながら、帰りたい気持ちを押し殺しながら沙樹の方を見ると、いなくなっている。

真理がいるから帰ったということはなさそうだ。

早乙女はついてないと心の中でホッとため息をついた。


かなりの時間カラオケで歌を聞かされて、ぐったりした気持ちで外に出ると暗くなっている。

沙樹を見ると、少し元気がないようだ。

同じようにもしかしたら疲れてしまったのかもしれない。

「早乙女、2次会で晩メシ行こうぜ」と元気な男子たちは、まだまだこれからといった様子だ。

望月もご飯に行くと言っている。


(絶対行きたくない)


沙樹の方を見ると、真理と帰ろうとしているようだ。

「ちょっと待って・・」

そう言って男子を制すると、沙樹の方へ近づいた。


「ねぇ。ちょっと二人でお茶して帰ろうよ、まだ17時だしさ。私のおススメのイチゴタルトの店があるからさ。沙樹、いちご好きでしょ?」

「・・・うん。ちょっとお茶して帰ろうかな」

沙樹と真理の会話が聞こえる。


(勇気出せ、俺)


「じゃあ俺もいいか」

沙樹と真理がこっちをみて驚いている。


「ダメなのか?」

返事はない。


(絶対女子の会話に入るキモい奴って思われた・・終わった・・・)


早乙女は表情が固まったまま動けなくなった。


「いや、全然いいよ。ねぇ、沙樹?」

「あ、うん。もちろん」


(ナイス、佐藤!)


真理に感謝しつつ、移動しようとすると、

「早乙女君がお茶に行くなら私も」

そう言って望月が立っている。


(本当にこいつは俺に嫌がらせしてくるな・・)


「望月はさっきご飯にいくと言っていただろ?お店に電話してたから今更行かないのはよくないと思うぞ」

早乙女がそういうと、すごすごと引き下がっていき、男子たちに「行くぞ」と引っ張られて見えなくなった。

「じゃあ行こうか」

真理に連れられてカフェに向かった。


(イチゴタルトうまい‥!最高!!)

ブラックコーヒーとも相性最高だ。

早乙女はイチゴタルトの美味しさに感動していた。


「あ、あのさ、早乙女君はどうしてお茶に?」


沙樹が話しかけてくれた。


「来ない方がよかったか?」

(そうじゃないと言ってくれ)

「そうじゃなくて、なんか意外だなって」


「・・いちご好きだからだ」

(・・沙樹ちゃんが好きだから)


「え?」

「いちご好きなんだよ」

早乙女は顔が少し熱くなった。


「ふふふ」

真理と沙樹は目を合わせて笑っている。

沙樹の笑顔を久しぶりに見た気がした。


「そんな変かよ」

「全然そんなことないよ、ねぇ沙樹?」

「うん。意外だっただけ。早乙女君ってクールって感じだから、いちご好きってのがなんだかイメージになくて」

「変なイメージ作るなよ」と早乙女は小さくつぶやくと、照れているのを誤魔化すようにイチゴタルトを頬張った。


そこからはすっかりと打ち解けて、会話が弾んだ。

クールな王子様のイメージを崩したくなかったのに、いらないことまで話してしまった気がする。

沙樹とゆっくり話ができるなんて夢のようで、王子様キャラなど忘れてしまっていた。

色々話すたびに笑ったり、驚いたり、ころころ変わる表情が可愛すぎて困る。


「もう19時だ。そろそろ帰ろうか」

真理が出る前にお手洗いにいくと去ってしまい、沙樹と二人っきりになった。

静かな時間が流れ、店のBGMがはっきりと聞こえる。


(服装を褒めると女子は喜ぶんだよな)


「そのワンピース」

「え?変?このワンピース」

「いやそうじゃなくって・・・」

「似合ってるよ」と言おうとしたら、真理が帰ってきた。

早乙女はその先を続けることが出来なかった。

お会計を済ませて店を出ると、もうお別れの雰囲気だ。

中途半端に服装に触れてしまって、どう思われているのか気になって仕方ない。

早乙女はなんとか続きを伝えたいと思うが、真理がいると言えそうにない。


「ねぇ、早乙女君、良ければ連絡先交換しない?」


真理が神様に見えた。

(佐藤、君は俺の神様だよ)

嬉しくて犬だったら尻尾全振りだったが、何とか抑えて「別にいいけど」といって交換できた。

スマホを持つ手が少し震える。

LINEの連絡先に浦田沙樹という名前が増えた。

思わず少しにやけてしまった。


帰り道、何度も何度もLINEの友達の欄を見てしまう。

早乙女は、震える手でトークをタップした。

(さっきの続き伝えよう・・・)


“ワンピース似合ってる”


続きで“今日はありがとう”と打ちたかったのに、緊張で手が震えたせいで送信してしまった。

慌てて送信取り消しをしようとしたが、既読とついている。


(これだけってやばい、絶対印象悪い・・・)


早乙女はがっくりと肩を落とした。

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