表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/85

【7】異世界で、初めての料理〜山菜の天ぷらとタケノコご飯

 

 ジュー!!!!


 僕は今、侯爵家のタウンハウスで天ぷらを揚げている。豚になってから初めての料理だ。


(そういえば、大学の入学式のあと、彩人にも天ぷらを作ってあげたブーなぁ。あれは、春だから蕗のとうだったブーけど。)


 初めて僕の家賃18000円のアパートに来た時、あまりにもボロかったから引いてたっけ。


 あの時の挙動不審の彩人を思い出すと、ちょっと笑える。


 僕は天ぷら粉には重曹と氷と油を入れる。重曹が二酸化炭素を出すのでサックサクになるのだ。


 ただし、入れすぎるとちょっと苦い。ベーキングパウダーなら苦くないし失敗はないけど、僕は山菜のあくぬきによく重曹を使うので重曹派である。


「おお、本当にお嬢様のペットの豚ちゃんが料理している…。」

「可愛いっ!コック帽被ってる…。」

「…ファンタジー!」


シェフの人達がザワついている。いや、魔法がある時点で十分こちらの世界はファンタジーだと思うけどね。


「手伝って貰っちゃってありがとうぶ!こんなに材料が揃ってるなんて流石侯爵家ですぶ!」


僕がお礼を言うと、皆さん『かわいい…。』と言いながら、ほわーんとした顔になった。


 侯爵家にはなんと上新粉やあんこもあったので、よもぎ団子も作った。


 自由に使っていいと言われたので侯爵家の食材も一部使わせて貰い、夕飯が完成した。


◇◇今日のお品書き

・ウドの酢味噌和え

・タケノコの豚巻き炒め

・マイタケと豆腐の味噌汁

・ウドとマイタケの天ぷら

タコと筍の土鍋炊き込みご飯

・よもぎ団子(あんこ、みたらし)

・胡麻アイス


 豚巻きの周りには小麦粉をつけてカリッとした食感に仕上げてみた。


 侯爵夫妻も今日はいらっしゃるそうなのでシェフの人達にも手伝って貰い、色んな料理を作った。


 胡麻アイス以外は全部収穫した物を使って頑張った。


 それに、あまり容量は大きくないが、レベッカがアイテムボックスを持っており、山菜を入れてくれたので沢山収穫出来たのだ。


 容量は大体鞄五つ分くらいと言っていたけれど、それでも日本円で100万円くらいの価値だそうだ。


 話を聞く限りでは鉄貨が10円、銅貨が100円、銀貨で1000円、金貨が1万円、白金貨がどうやら10万円くらいの価値だと思われる。非常にわかりやすい。


 ちなみに昼間食べた海老味噌ラーメンは銀貨1枚と銅貨3枚だった。

 

 調理をしてみて思ったが、どうも魔素の影響で食材に赤い色がつきやすいようだ。マイタケも、タケノコも火を通すと薄いピンク色になる。


 そういえばこの世界は砂糖もピンク色だしね。


 だが、今回収穫した中でよもぎだけは地球と全く同じ、緑のままだったのが印象的だった。


 ウドはスズメノヒエと同様、葉脈だけ何故か赤く変色してしまったのだが。


(面白いブーな。逆に蓬には魔素を何らかの形で個体の外に排出する機能があるのかもしれないぶ。)


 顕微鏡があったら是非地球のものと比較してみたかった。


 もしかしたら、面白い結果が出たかもしれない。


◇◇


「美味しいっ!この繊細な苦味と透き通るような爽やかな香りがたまらないわっ。アルバートお爺様が好きそうっ。」


そう言ってレベッカはウドの天ぷらを頬張っている。


 ちなみにアルバート様というのはリュクス様のお父上で前侯爵様の名前らしい。


「ええ。私はこの酢味噌和えが気に入りましたよ。白ワインともよく合いますね。」


侯爵であるリュクス様も味わうように少しずつ召し上がってくれている。思えばこうしてゆっくりお話しするのは初めてお会いして以来である。


「リュクスっ。私っ!山菜って初めて食べましたっ!こんなに美味しいものなんですねっ。

 それにブーちゃんが作ってくれたなんて…!!感激いい…。」

 

そう言って侯爵夫人のモニカ様は蛸とタケノコのご飯をお代わりした。眼鏡が湯気で真っ白になっている。


 レベッカの赤髪はモニカ様からの遺伝らしい。


「ブー。いっぱい食べてくださいぶ。美味しいって言ってくれて嬉しいぶー。」


そう言うとモニカ様に『はわわわ、かんわいいですぅー!!』とグリグリされた。動物が好きらしい。


 みんなでデザートのよもぎ団子と胡麻アイスを食べた後、リュクス様が切り出した。


「すみません、我が家のペットの見た目をしているので何と言うか、気が抜けてしまうんですが…。


 鑑定の結果を見ました。君は鑑定によると『憑依者』と出ていた。それに『佐伯ノブオ』という名前も。


 つまり、君は魂、所謂『精神体』だけでこの世界に来たのだと思うんですよ。」


僕はその言葉を頭の中で反芻する。


「…つまり、もしかしたら元の世界で肉体が残っている可能性もあるということですブーか?!」


僕がそう言うと、リュクス様が頷く。


「そうですね。…まあ、事故に遭ったとの話なので、あまり期待はしないで頂きたいのですが…。


 少なくとも『ブー』は元々こちらの世界にいた存在なので、貴方は新しく肉体を持って生まれてきた…とは言えないですね。」


なんと。僕、てっきり死んでしまって豚に()()()()んだと思っていたのだが…。


「それに、君の【黒】という属性は恐らくこの世界で初めてだと思われます。


 また、今まで【白】属性を持っていたのは聖女など元の肉体のまま神に召喚された所謂『転移者』と呼ばれる人達だけなんですよ。


 君は魂だけ、しかも豚に憑依したのにも関わらず『白』属性を持っている。


 はっきり言って例外だらけだ。


 神殿経由でも連絡は行ったかと思いますが、なるべく早く女王陛下にお会いして頂く必要があります。


 現在会談でサンライズ帝国に訪問していますが、2週間後には戻る予定です。


陛下の予定が合い次第お会いして頂きます。」

 


…ということは、3週間後くらいってことか。


 まあ、気が重いけど仕方ないな。


 レベッカの断罪を防ぐ以外は特にやることもないからいいんだけどね。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ