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【6】異世界エビ味噌ラーメンと魔法について。


 ドンっと湯気を立てたラーメンどんぶりが目の前に置かれる。


「じゃーん!!この国のレーヌ町っていう港町で採れたシュラプとその味噌を使用した『シュラプ味噌ラーメン』よ!


 絶対ブーちゃんに食べさせてあげたかったのっ。」


レベッカはちょっと得意そうな顔でラーメン自慢をしてきた。


 ラーメンの上には美味しそうな煮卵と、なんとメンマとネギと焼豚までのっている。


 …僕も豚だけど、チャーシューって食べても共喰いにならないのだろうか。ま、まあ、心の中で仲間の豚を、弔っておくしかないだろう。


(仲間のお肉達…。ブーは無駄にしないで残さず全部平らげるブーぞ!どうか成仏してくれぶー。)


「ブー!レベッカありがとうぶっ!うんまそうだぶっ。頂きますブー。」


 そう言って、一口すする。


 うん、美味しい。シュラプってエビのことか。

 

 海老味噌が入っていることでコクが増しているけれど、決してくどくない。


 目の前を見ると、レベッカがキラキラした目で、『どう?どう?』と語りかけてくる。


「すっごくうんまいブー!!流石レベッカの選んだお店だぶー。」


そう言うと、レベッカは嬉しそうに破顔した。


「そう言えば、ブーの魔法属性は【白】と【黒】だったブーけど、レベッカはどんな魔法を使うんだぶ?」


なんとなくさっき魔素のことを考えていたら気になってきたので聞いてみた。


「私は『土』属性よ。例えば植物の成長を促進したり出来るわね。他には、水と火、風。全部で4属性の魔法があるわ。


 ブーちゃんや聖女様のような異世界から来た人達は、魔素を使わずに召喚した神が与えた力を使って魔法を使っているって聞いたけど。」


「ふーん、属性って遺伝したりするブ?」


「そうね。大体父か母、どちらかと同じになる事が多いわね。たまに、両方から遺伝する人もいるけれど。」


 …なんだか血液型みたいだな。


 ラーメンを食べ終わって満足した僕達はショッピングモールを出て、ヴァレッタ市内をウロウロする。


 西洋風の街並みの中には醤油や味噌、鰹節などの調味料を売っている小さな商店が混じっていて不思議な感じがする。


 少し歩くと自然公園があったので、そこでジュースでも買ってベンチで休もうという話になった。


「ここは、街中だけど、自然をそのまま残して散歩道や遊具が整備されているの。夏になったら蛍を見ることもできるのよ。


 都会の中のオアシス、と呼ばれて市民にも親しまれているの。」


うーん、ますます日本に似ているな…。


 レベッカの説明を聞きながらテクテク歩く。


 うん、静かだし緑がいっぱいで、川も流れている。そこに架けられた小さな橋もお洒落で川の中を覗き込むことができる。


 確かに落ち着くのは間違いない。


「あそこの売店でジュースを買ってくるから、ちょっと待っててね。」


レベッカはそう言って走っていってしまった。


(うーん…。女の子に奢られるのは複雑ブーけど、今、ブーは一文無しだし、レベッカのペットって立場だから仕方ないブーな…。)


じーっと周りの自然を観察する。


 雑草があるが、恐らくイネ科のスズメノヒエだ。


 魔法があるのに雑草は地球と変わらない。あ、でもよく見ると葉脈が所々赤い。何だか不思議な感じである。


 ふと、さらに奥の方に目を向けると。


「!!よもぎだぶ!あと、あそこの木の根元にはタケノコとウドもあるぶっ!!あのミズナラの木の根本に生えているのはもしやマイタケぶーか?!」


僕は興奮して、反射的にプチプチ蓬とタケノコ、そしてウドを引っこ抜く。

 きのこもマイタケで間違いなさそうだ。


(これだけあれぱオヤツの蓬団子には困らないぶっ!醤油が売ってるからみたらし団子ブーかね?!


 ウドは天ぷらでも酢味噌和えでも美味いブーし、タケノコはやっぱりタケノコご飯だぶ!


 街中に山の中にあるような山菜がいっぱいあるなんて信じられないぶっ!!!)


「…ブーちゃん、何してるの?」


ジュースを持ったレベッカがキョトンとして僕の方を見ている。


(はっ?!しまったブー!ついいつもの癖がっ!!)


「こ、これはその…」

僕が言い淀んでいると、レベッカがクスッと笑った。


「そういえば、鑑定結果に『美味しい野草料理が作れる』って書いてあったもんね。私、ブーちゃんが作ってくれたお料理、食べてみたいかも。」


「ええー、でも、侯爵家の料理の方がずっと豪華だブーよ?」


さすがにこんなお嬢様が僕の野草料理を食べて美味しいなんて思うだろうか…。


「ブーちゃんが作ってくれるから嬉しいんじゃない。


 よしっ。私も採るの手伝ってあげるから今日はお料理お願いね。シェフには厨房使わせてくれるように言っといてあげるから。」


…あー、これはもう作るしかなさそうである。


 レベッカもなんだか楽しみにしてるし、こうなったら美味しいと言って貰えるように精一杯頑張ろう。


 ―こうして、なぜか僕は異世界に来てまで野草を料理することになってしまった。


 まあ、僕自身貧乏舌なので、ちょっと豪華なご飯に飽きてきて質素なものが食べたいな…なんて思っていたので良しとしよう。





 


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