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野草料理が得意な貧困大学生、悪役令嬢のペットの豚に憑依する。  作者: 間宮芽衣(旧ブー横丁)
憑依&異世界生活編@ノーリッジ侯爵家

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【5】初めての異世界タウン『ヴァレッタ』と『アセンブリ』


 僕は、巨乳好きなのがバレて、なんとなくレベッカと目を合わすことが出来ずにソワソワしていた。


 それに、愛しのペットの中に2つも年上の男が入っているというのはどんな気持ちなんだろうか。


 が、当の本人はそんな事はスルーして大興奮である。


「凄いわ!ブーちゃん!『白』属性だなんて!聖女様と同じじゃないっ!」


そう言ってギュッと蹄を握られた。


「ブー…。そんなに凄いブーか?」

僕はなんとなくイジイジしながら答える。


「ええ!!この世界の人が持っていない属性よっ!これはブーちゃんが『神様』に力を直接与えられたっていう揺るぎない証拠でもあるの。」


すると、エロジジイが会話に割り入ってきた。


「しかし、レベッカ様。スキルも『黒』属性も今まで聞いた事も見たこともないですよ…。これは女王様に報告しなければなりませんね。私が神殿経由で報告するとしましょう。」


そう言われてレベッカが眉を下げる。


「…そうね。大事にならなければいいけれど。


 とりあえず、私の方でもこれをそのまま書き写して、お父様にも見せるわね。」


(ブー…女王様に報告?確実に面倒なことになりそうだぶ…。)


 大体、どんな人なのかもわからないが、女性でありながら一国を治めているとなるときっと気が強くて厳しい人に違いない。


 僕は遠い目をするのであった。


◇◇


 エロジジイが帰ったので僕はお出かけの準備をする。よっしゃー、ラーメンラーメン!!


「良かった。ブーちゃんすっかりご機嫌ね。さっきは知らない人が来ていたから緊張していたのかしら。


 はい!出来上がり。可愛いわよ。ブーちゃん。」


 そう言ってレベッカは僕に可愛いらしい緑色の蝶ネクタイを結んでくれた。


 今日は緑色の蝶ネクタイに可愛らしい同じ色の帽子と白いシャツ、緑色のベストにチェックのズボンを履かせてくれた。


「ブー!ありがとうブー!レベッカも可愛いブーぞー。」


レベッカはちょっと裕福な平民スタイルらしい。

 緑色のチェックのワンピースに緑の帽子のついた麦わら帽子をかぶっている。


「うふふ。ありがとう。ブーちゃんとお揃いにしちゃった。さぁ、行きましょうか。」


そう言ってニッコリ笑った。


 公爵家の目の前には魔導自動車が停まっている。


 高位貴族や王族しか持っていないという超高級品で、魔導自動車を持つ事が一種のステータスになるらしい。

 

 侯爵家のお抱え運転手のアレックスさんがペコリとお辞儀をした。


「レベッカお嬢様、ブー様。今日は宜しくお願いします。」


 この自動車はガソリンの代わりにこの世界の大気中に存在する『魔素』を抽出し、エネルギー源にして動いているらしい。これも王弟殿下が開発した、とのことだ。


 昔は馬車だったので凄く移動に時間がかかったようだが魔導自動車だと最大で時速170キロ程度は出るとアレックスさんが嬉しそうに話している。


 車窓からはまるでヨーロッパに来たようは街並みを眺めることが出来た。


(ブー…本当に異世界に来たんだブーな。)


 ふと上空を見上げると、白色の衛星のようなものが飛んでいる。


「レベッカ、あれは何だぶ?」


「あぁ、あれは、魔素を収集している魔道具よ。『アセンブリ』って呼ばれているわ。


 収集された魔素は、工場に送られて、魔道具のエネルギー源や研究に使われているの。」


ここ何十年かの調査の結果、上空に魔素が停滞しやすいことが判明し、10年程前に国家プロジェクトとして『アセンブリ』を設置したらしい。


 以前は、上空に停滞した魔素が、浮島に住む竜人族の体内に蓄積し、『魔瘴結石』という結石を作り、結石患者は意図せずモンスターを生み出してしまっていたとのことだ。


 しかし現在は『アセンブリ』が魔素を収集しているお陰で結石患者も出なくなり、世の中が平和になった。


 その結果、魔物の被害が減り、一気に人口が増え、産業も活性化したらしい。


 現在は魔物は研究施設や動物園、ダンジョンでしか見られない貴重な存在…とのことだ。

 

 やがて、魔導自動車は大きな城のような建物の中に入っていき、係員さんに一旦降りるように促された。


「では、お嬢様。お帰りになる時に連絡を下さい。街で時間を潰していますね。」


そう言って降りた僕達を見送り、アレックスさんは魔導エレベーターで上層階まで車を停めに昇っていった。


「ブー。このお城は一体なんだぶ?」


「ああ、これはショッピングモールよ。元々あった貴族の屋敷を増改築して作られているの。


 さあ、行きましょう。」


そして、扉を開けると、広い吹き抜けに出た、


(…すごいブー。)


 石造りの空間の中に大きな窓があり、太陽の光が降り注いでおり、外を行き交う人が見える。


 吹き抜けの端には魔導エレベーターが稼働しており、七階建ての各階にはバルコニーが設置され、吹き抜けから見られるようになっている。


 吹き抜けの中心には大きな木がデーンと佇んでいる。


 見た目はレインツリーに酷似しているが、キラキラと光っているのは恐らく魔素であろう。


 木の下には飲食スペースが設けられており、貴族や裕福な平民だと思われるご婦人達がティータイムを楽しんでいる。


 地階の周りにはアイスクリームパーラーやパン屋、ラーメン屋などが出店していて、さながら日本のフードコートのようだ。


「ここのラーメンがすっごく美味しいって評判なのっ!私、注文してくるから待っててっ!」


レベッカが注文しに行ったので席を確保しつつ魔素を発している木を見上げる。


(魔素って一体何なんだろうブーな…。


 まるで日本でいう電気みたいに動力源として使われているブーけれど。)


この世界の人達が魔法を使う時も、血液に混ざった魔素を身体に循環させて使っているらしい。


 また、微生物と、高濃度の魔素が混ざり合うことでモンスターが生まれるという。


 …ということはエネルギーとして使っていることは共通であるものの、電気とは違い微生物と混ざり合うことで性質が変化するということだ。

 

 レベッカから聞いた話や、ここ数日で読んだ文献から総合的に判断すると、魔素は『有機物』、生命のような性質を持っている。


 地球上の土ですら植物や菌、微生物と共存する為に『知能』を持っている。


 つまり、有機物である限り、魔素も『知能』を持っている可能性が高い。


 魔素と『何か』の組み合わせによっては()()()()()()()()()()()()()にもなりえる…ということだ。


 昔竜人の体内に蓄積した魔素は石となりモンスターを生み出していたと言う。


 それなら、似たような事を『人工的に』行う者が出てきたらどうなるのだろうか。


「…誰かに悪用されなければいいブーな。」


 気づいている人はこの世界に一体何人いるのだろうか。


 僕の発した小さな声は、フードコートの喧騒の中に溶けて消えた。



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